2024/08/03 (土) 10:00
猛暑が列島を襲っている中、それ以上に暑く、熱くなっているのがパリだろう。この原稿を書いている時点で、日本は柔道、男子体操など多くのメダルを獲得している。筆者が感動したのは、やはり男子体操の団体だ。最終種目を残してトップの中国とは確か、3点以上の差があった。勝負は下駄を履くまでわからないというが、まさに奇跡が起こった。
自転車競技トラックは5日のチームスプリントを皮切りにスタートする。東京五輪は脇本雄太、新田祐大の競輪界のスーパースターが参戦。下馬評も高く、少なくともどちらかがメダルを獲れるだろうと言われていた。しかし、蓋(ふた)を開けてみれば、だ。競輪界最強の2人をもってしてもメダルは遠かった。当時筆者は、この2人で勝てないのだから冬の時代が続くと本当に思っていた。
あれから3年。正直なところ、前回より期待値は大きくなっている。特に太田海也、中野慎詞、佐藤水菜は本当にメダルに近いと思っている。種目はケイリンだ。一番注目しているのは太田で、自転車に乗り始めて、まだ数年というから、その身体能力には驚くばかりだ。高校時代はボート競技でインターハイを制するなどして活躍。ボートからの転向で思い浮かべるのはガールズケイリンの林真奈美。太田はそのレベルには達してはいなかったが、インターハイ王者という肩書きは素晴らしい。ネイションズカップやアジア大会で結果を残しているし、期待は高まるばかりである。
中野は昨年の世界選手権ケイリンで3位。高校時代からその能力は高く評価されていた逸材だ。ここぞの集中力は高く、勝負強さを感じる。太田の中野も25歳とアスリートとしてのピークを迎えていると言っていいだろう。
佐藤も有力だ。2021、2022年の世界選手権ケイリンで連続2位。あと一歩のところで金には届かなかったが、世界に佐藤の名を知らしめたことは紛れもない事実だ。高校時代から五輪という目標を掲げてトレーニングに励んできた努力家でもある。ケイリン決勝は8日(9日午前2時01分予定)。ここで佐藤が結果を残せば、11日(午後8時23分予定)の男子ケイリンにも弾みがつくだろう。
過去の五輪で日本人選手がメダルを獲得したのは4回。1984年のロスでは坂本勉がスプリントで銅。1996年アトランタの1kmT・Tは十文字貴信が銅。過去最高となった銀は2004年アテネのチームスプリント(長塚智広、伏見俊昭、井上昌己)。2008年の北京では永井清史がケイリンで銅。日本発祥のケイリンで初のメダルであった。ケイリンで金メダルは日本の悲願でもある。佐藤も25歳、若い力は日に日に成長していくものだ。もちろん3人だけでなく、他のメンバーの活躍にも注目したい。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター