2024/05/10 (金) 18:04
感動のダービー決勝だった。18回目の挑戦で平原康多(埼玉)が、悲願のダービー王に輝いた。
選手なら誰もが一度は口にするG1最高峰のレースで頂点に立った。表彰式では感涙にむせんでいた。勝ち上がりの段階、そして決勝も関東の若手が平原のために走ったと言っても過言ではないだろう。それだけ平原という選手は、後輩に慕われているということだ。これは今回に限ったことではない。特に埼玉県内の記念競走や関東圏では顕著になる。若手に対し競輪道を説き、セッティングに関しても親切丁寧にアドバイスを送ると聞いた。結局のところ、個人の力だけでは勝てないということだ。
ダービー前まで、平原に関しては一部で限界説が出ていた。そんな話を聞いた時、一体、誰がそのようなことを話しているのだろうと思った。そういうことを言うファンは、平原の苦しみを分かっていないのだろう。ここ数年は度重なる落車、良くなるとまた落車。体のバランスは相当に崩れていたのは分かる。最近では股関節を痛めた。それに加えて腰痛である。腰痛は競輪選手にとっての職業病ではあるが、手術するか、しないかの問題も出てくる。仮に手術をしても、完治はないというのが定説になっている。
苦境の中、平原はコメントで弱気な発言はしなかったと記憶している。もちろん、腰痛や股関節の話は表に出ているが、決してそれを言い訳にはしなかったよう思う。何度も何度も挑み跳ね返されてきたダービー王の壁。これでG1グランドスラムには、残りオールスター競輪だけとなった。8月のオーススター競輪で、グランドスラマーの仲間入りを果たせるのか。注目したいし、平原ならやってくれる気がする。
大会の売り上げ目標は、低く設定したと思われる143億円。しかし売り上げは152億5791万4200円と大幅に目標額を上回った。喜ばしいことではあるが、筆者は売り上げよりも入場者数に目がいった。6日間で3万5000人以上が生で観戦した。1日平均で約6000人。もちろん、その日によって違うが、画面越しにみていると、多くのファンの姿があった。いわき平は売り上げだけではなく、入場者数でも勝ち組になったと確信した。競輪界全体が売り上げ増に沸き返っている中、やはり強い競輪場というのは、ファンが本場に足を運ぶ競輪である。今年のグランプリを開催する静岡競輪が、まさに当てはまる。ファンが足を運ぶのには、それなりの理由があるからだ。ただ、タレントを呼んでショーをやるだけではなく、競輪場に行って、1日を過ごせる何かが、いわき平競輪場にはあったのだろう。盛況に終わったダービー。しかし、満足しては進歩はない。これを続けていくための努力をさらにしてほしい。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター