2024/07/29 (月) 01:14
2016年4月14日に起こった熊本地震は、甚大な被害をもたらした。熊本競輪場も大きなダメージを受け、再開できるか不安視されていが、関係者の必死の努力で、7月20日にリ・スタートを切った。開催直前には市街地で中川誠一郎などのトップ選手がデモンストレーションを行うなど、機運を高めていた。
生まれ変わった熊本バンクは、滑走路と言われた500から400バンクへと変わった。オールドファンにとって、またひとつ500バンクがなくなるというのは、寂しい限りではあるが、それ以上に、熊本競輪場が存続できた方が明らかに意味があるものだ。
7月20日からの参加メンバーには、中川をはじめ、地元からは嘉永泰斗、中本匠栄など、この日を待ちわびた面々がそろった。8年ぶりの再開を首を長くしたファンも多く、初日には3000人を超えた。
開催にはG1高松宮記念杯競輪を制した北井佑季も参加。北井対熊本勢の構図だった。初日特選は北井が先行し、追走した山崎芳仁が差して1着。熊本勢も頑張ったが、嘉永の3着まで。どうしても勝ちたい1戦だったろうに、詰めかけたファンからため息が漏れた。それにも増して、北井の気持ちが入った走りは、熊本競輪再開に花を添えるように筆者は感じた。
初日特選の最終HS
S級決勝に進んだ熊本勢は、嘉永と緒方将樹の2人だけと寂しさが残った。だが、緒方が北井を相手に魂のこもった走りを披露。番手の嘉永が、北井の追撃を振り切り、捲りV。新生熊本の初代王者に輝いた。嘉永も緒方も、相当なプレッシャーがあっただろうに、それをはねのけての優勝は価値があるし、本人たちもホッとしたことだろう。
嘉永泰斗(熊本113期)
熊本勢の頑張りもあったが、北井も素晴らしいレースを連日見せてくれた。この時期は地元開催のG1オールスター競輪を見据えて、一番疲れが溜まっている。ここから一度、落としてまた上げる。そんな状態でも、北井は北井だった。8年ぶりの再開と感傷に浸る選手もいただろうに、北井は自分のスタイルを崩さなかった。熊本勢と真っ向勝負。結果は2着に終わったが、感動する走りであった。
3日間、多くのファンが本場に足を運んだ。最近はネットを中心に、売り上げは伸びている反面、入場者数は寂しい限りである。その中で3日間の入場者数は、競輪本来の魅力を改めて感じさせてくれた。やはり生で見ないと、競輪の素晴らしさは伝わらないだろう。筆者的には、いまだに500バンクのイメージが強すぎて、車券は惨敗だった。ついつい500だと思って3、4番手から買ってしまって失敗した。それでも、400は400なりの見所がある。熊本競輪場が昔のような活気ある競輪場に戻ったことはうれしいが、再開しただけで喜ぶのではなく、もっともっとファンであふれかえってほしい。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター