2022/09/09 (金) 17:43
小林優香がパリ五輪を断念し、ナショナルチームから抜けると、自身のSNSで9月4日に発表した。個人的には、女子でパリ五輪のメダル獲得の可能性があるのは小林だと思っていたので、この発表は残念でならない。昨年の東京五輪は本番直前に調子が上がり、メダル獲得が現実味を帯びていた。しかし、結果は予選敗退。五輪後は次のパリ五輪を目指すか、相当な葛藤があったらしいが、気持ちを入れ替えてパリに照準を絞っていたと聞いた。それだけに、このタイミングでの発表は、驚きだった。
自転車競技選手としてピリオドを打ったのは、自身のSNSによると、直接の理由はケガ。仙骨骨折、仙骨関節炎等々、満身創痍だったらしい。その結果、五輪を目指す身体を作り上げるための高度なトレーニングができないとのこと。世界との差を感じているなら分かるが、ケガによる競技引退とは本人も悔しくて仕方なかったことだろう。
小林は2014年5月に岸和田競輪場でデビューすると、すぐ女王の座に君臨。そして、競輪だけでなく自転車競技でも日本女子を引っ張ってきた。競技に重きを置けば、競輪選手としての収入は得られない。それでも五輪でメダルを獲るという確固たる信念を貫いてきた。日の丸を背負って走る小林の姿はもう見られないが、逆に、普段のガールズケイリンで彼女の雄姿が見られるというのは、一ファンとしては喜ばしいと考えるべきだ。
日本競輪学校(現在の日本競輪選手養成所)に入るまでは、無名の存在だったが、すぐにゴールデンキャップを獲得するなど、同期生の中でも抜けていた。卒業してからの活躍は、いまさら触れないでもいいだろう。ひと言でいうなら、ガールズケイリンは、小林で回っていたということだ。それだけ存在感もあったし、各メディアにも登場し、業界の認知度アップに貢献してきた。
現在のガールズケイリンは、小林と同門の児玉碧衣が頂点に立っている。若手の台頭はあるが、多くは児玉レベルには達していない。普段の開催で優勝しても、ビッグレースになれば手も足もでないことも多い。小林が戻ってくれば、熾烈な女王争いが繰り広げられることは間違いない。小林ひとりで、ガールズケイリンはさらに盛り上がることだろう。それだけ、小林とは大きな存在なのだ。とは言っても、まずは身体をしっかり治してからだ。中途半端な状態で戻ってくれば、また身体にダメージが残ってしまう。焦らず身体を完全に直してから戻ってきてほしい。28歳という年齢はアスリートして一番いい時期かもしれない。回復を祈りつつ、憎たらしいほど強い小林の姿を、また見てみたい。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター