2022/08/21 (日) 06:37
台風接近による悪天候の影響で1日順延し、15日に終わった第65回オールスター競輪G1。優勝は圧倒的な強さを見せた脇本雄太だった。初日のドリームレースから決勝まで、ほぼ完璧なレース運びで完全優勝。唯一、ヒヤッとしたのが決勝だ。同県の後輩である寺崎浩平が決勝に進出。否応なく連係することとなった。果たして、うまく連係できるのかどうかが最大の焦点だった。寺崎にしてみれば、同県の偉大な先輩が後ろに付くだけに、先行意欲は並々ならぬものだったろう。加えて、3番手は古性優作となれば、緊張感も半端なかったに違いない。
レースは近畿勢が前を取り、単騎の松浦悠士、吉澤純平が続き、新山響平、小松崎大地、守澤太志、成田和也の隊列で周回。まず赤板前に新山率いる東北勢が上昇すると、寺崎は予想通り突っ張り、ごちゃついた。この時、脇本は松浦に内からしゃくられ、寺崎後位を奪われてしまう。そして、脇本は7番手まで後退してしまった。松浦に続いたのは東北勢。いくなんでも、この展開で7番手からの巻き返しは苦しいと思っていたが、最後の1周から仕掛けると、寺崎の番手から捲りを打った松浦をかわして1着。オールスター競輪を完全優勝の快挙、さらにこの勝利が17連勝というのだから、もはやモンスターだろう。
オールスター競輪の決勝ゴールシーン
ただ、レース後の脇本に、笑顔はなかったと聞いた。それは2番手の仕事ができなかったことの反省から。自分のために頑張ってくれた寺崎のことを思えば、それも納得できる。ラインの先頭にこだわってキャリアを積み上げてきた脇本だが、今後も、力をつけた寺崎や他の先行選手の後ろを回ることがあるだろう。これは先行選手が通ってきた道である。自分でレースを組み立てること、後輩を育てなければいけないこと。このジレンマに陥った選手は何人もいる。脇本も現在33歳。このようなレースが増えた時、いかに対処できるかが今後の課題になるだろう。
今回のオールスター競輪で、個人的に目を見張ったのは守澤太志だ。ここ数年、どんな展開にも対応できるだけの力をつけたと感じる。そしてもう1人、成田和也だ。度重なるケガで本来のパフォーマンスが見られない時期が長く続いたが、昨年からキレが戻ってきている。決勝は8着だったが、決勝を走ったことで賞金が上積みされ、オールスター競輪の終了時点では賞金ランキング9位までジャンプアップした。苦難を乗り越え、やっとここまで戻ってきただけに、何とかグランプリの出場権を取って欲しいものだ。
成田和也(福島88期)
1日順延した影響があってか、売り上げは、目標の130億円に届かない128億4273万9700円だったが、前年のいわき平より10億円以上を上回ったのだから、成功だと言えよう。
KEIRINグランプリ2022を見据えた戦いも佳境に入ってくる。選手の思惑が交錯するこれからは、いっそう盛り上がりそうだ。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター