2022/08/17 (水) 16:05
自転車競技の国際大会である「ジャパントラックカップ」が約3年ぶりに、7月28日から静岡県伊豆市の伊豆ベロドロームで開催された。新型コロナウイルスの影響で、2年続けて開催中止に追い込まれていたが、やっと、それも有観客での開催となった。
思い起こせば、昨年夏の東京五輪。競輪界のスーパースターである新田祐大と脇本雄太が参加。ケイリンでのメダルが有力視されていた。女子も小林優香がメダル圏内だと大いに盛り上がったものだ。しかし、結果的にはメダルに届かず。期待が大きかっただけに、国民が受けたショックも大きかったはず。考えようによっては、まだまだ日本と世界のレベル差があると言うことかもしれない。東京五輪を最後に、新田と脇本はナショナルチームから離れ、本業である競輪に専念し、結果を残している。
2024年のパリ五輪まで、あと2年。新田と脇本が去ったナショナルチームは果たしてどうなのか? 気になっていた時に行われたのが、今回のジャパントラックカップだった。
どんなニューフェイスが出てくるのかと楽しみに思っていた。ジャパントラックカップIIのケイリンで優勝した中野慎詞やスプリントで優勝した太田海也らが目立って、今後が楽しみになってきた反面、ジャパントラックカップIのケイリンでは競技から離れていた脇本雄太が優勝。力の違いをまざまざと見せつけた格好になった。ケイリン決勝メンバーは、松井宏佑、山崎賢人、小原佑太、寺崎浩平、そしてカン・シンフェン。誰が脇本を倒して優勝してくれるか興味津々だった。だが、結果は脇本の独壇場。残り1周の時点で2番手から一気に仕掛け、後続を振り払った。脇本の後ろにいた松井が2着、3着はカン・シンフェンだった。
手も足もでないというのは、こういうことを言うのだろう。競技のケイリンは、位置取りがより重要なポイントになってくる。後方に置かれていては、まず勝機はない。どのタイミングで、前に出るのか。松井は脇本より前に位置して、仕掛けるべきだと感じたが、もちろんレースは生ものだから、実際に走っている選手にも言い分はあろう。ただ、見ていて、最も強い脇本にあのポジションを与えては厳しくなろう。しかも、脇本は競技を離れ、さらに腸骨を疲労骨折するなどのアクシデントがあったのにも関わらずだ。現時点で脇本に勝てないなら、パリ五輪も苦戦するのではないだろうかと不安になってしまう。もちろん、ピークの持って行き方はあるだろうが、それにしても他の選手にもっと抵抗してほしかったと感じてしまった。
東京五輪後、ナショナルチームの動向がメディアを賑わすことは少なくなった。それを悔しいと思える若手の台頭を望みたい。もう2年しかないパリ五輪へ向けて、若手は気持ちを入れ直して欲しいものだ。
Text/Norikazu Iwai
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター