2022/06/24 (金) 21:46
地元の古性優作が、強さを見せて優勝した第73回高松宮記念杯競輪G1。古性は昨年の「KEIRINグランプリ2021」で、初出場・初制覇を成し遂げた後、今年2月の全日本選抜競輪も優勝。これで、タイトルはG1が3回、グランプリが1回と、今や完全に競輪界をリードしていると言っても過言ではないほどの強さだ。今回も地元開催というプレッシャーを、逆に力に変えた。岸和田のファンは元来、熱狂的であり、その声援が古性の背中を押したのだろう。それと、近畿全体が一つになって、地元地区から優勝者を出そうという気持ちが、初日から伝わってきた。村上兄弟が全盛だった頃の感じに近いものがあると、後日、知人の記者から聞いた。
決勝を振り返ろう。ラインは小松崎大地に佐藤慎太郎、成田和也の福島勢。郡司浩平に諸橋愛の南関・関東即席コンビ。九州は山田庸平に同じ佐賀の荒井崇博で、3番手は福岡の園田匠。そして、古性が単騎になった。
メンバーを見て悩んだのが、徹底先行がいないこと。逃げる可能性が高いのは小松崎と山田だが、佐藤、成田が後ろにいる分、小松崎と考えた。気になるのは郡司の位置だった。レースでは、スタートを決めた郡司。そこを九州勢が抑えにいくと、郡司は突っ張る。後方だった福島勢が打鐘から仕掛け、これに古性が続く。郡司はインで粘り、佐藤と競り合う展開。これだけ前がごちゃつけば、4番手で様子を見ていた古性にとっては「ごっちゃんです」の展開だろう。最終バックから一気に捲って1着を取った。
展開にも恵まれたとはいえ、初手からの位置取りや仕掛けたスピードは、さすがとしか言いようがない。福島勢は頑張ったが、郡司のレースはどうだっただろうか。粘るにしても、あそこまで脚を使っていては、苦しかったはず。一度、山田を前に出させ、後方の8番手になってでもいいから、力勝負も見たかった。または、覚悟を決めての先行か。九州勢も、ライン先頭の山田がもう少し見せ場を作って欲しかった。結局は、捲った古性をマークする形でのゴール勝負。もちろん、勝ちにこだわるのはプロとして当然ではあるが……。
シリーズ全体を見ると、落車が多く、フルの9車立てで行えないレースが多かった。G1での少人数レースは、興ざめだ。売り上げの関係もあるだろうが、せめて8車までとして、足りなければレース数を減らしてもいいのではと考える。制約があるのは承知の上だが、最高峰のG1レースとしては、物足りない感は拭えない。売り上げに関して言えば目標の90億円を少し超えた、90億9932万9800円でクリアできた。前年はコロナ禍(今でもそうではあるが…)で、81億18万700円に比べれば成功と言えるが、少なくとも少人数立てのレースが影響したことは間違いないであろう。
いずれにせよ、古性は今後、さらにタイトル数を増やしていくだろう。今回は不出場だっら脇本雄太が戻ってくれば、なおさらだ。そして、佐藤慎太郎のしぶとさ、成田和也の復調が、筆者的には何より嬉しいものであった。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta Navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター