2021/12/09 (木) 13:11
つい先日、神奈川県小田原競輪場の存続が決まったという報道が、地元紙に掲載された。小田原競輪と言えば、立地は最高なのに、全国にある競輪場の中でも施設は老朽化。小田原競輪が廃止になるという話は過去にもあったが、2018年に市議会で議論され、廃止の方向も検討されていると報道されたことを記憶している。
同競輪場は1949年に開設された。立地の良さと国内でも有数の温泉場である箱根、湯河原がすぐ近くにあり、静岡県の熱海温泉もJR東海道線に乗れば約20分という距離だ。昼は小田原競輪で遊び、夜は温泉三昧というスタイルで、最盛期には年間で551億円の売り上げがあった。
しかし、施設は条例などの規制が厳しく、大幅な改修できていなかった。特別観覧席を新しくしたことが、大きな施設改修であっただろう。何年か前には外部委託するなど民間を活用してきたが、それでも売り上げ増加には繋がっていなかった。桜の季節になると、小田原城の桜を見ながら、ゆっくりと競輪場に向かったものだ。名城と言われる小田原城の天守閣を眺めつつ、今日こそ儲けて帰ろうと__。
2018年に議論された廃止問題は、2017年度の売り上げに起因している。2017年度は約8,000万円の赤字を計上した。公営競技である以上、赤字は許されないものだ。補填するには市民の血税が充てられる。競輪ファンにとって廃止は悲しいことだろうが、大多数の市民は税金を投入するくらいなら、廃止に傾いていたのではないだろうか。その後、存続を願う署名活動が行われたが、署名した人間の多くが1日1,000円でも車券を購入すれば、廃止の議論など起こらなかったはずである。雇用などの問題もあり、元々保守的であったため、存続か廃止かは玉虫色にされてきた。
ところが、経済は不思議なものだ。新型コロナウイルスが蔓延した昨今、家の外には出ない、俗に言う「巣ごもり」で、インターネット投票が爆発的に伸びた。2021年度は5億円の黒字が見込まれるというから、驚き以外のなにものでもない。報道によると、今後5年間は存続らしいが、果たしてうまくいくのだろうか。今はネットで売れているからいいが、今後は予断を許さないし、ボートレースのミッドナイトも始まっている。競輪界全体がもっと危機感を持つ必要もあるだろう。
もちろん、競輪場が存続することは、ありがたいことではある。しかし、昔と違いレジャーは多様化している。特に競輪はファン層の年齢も高い。今後もネット投票に頼る姿勢だけでは、見通しが甘いような気がするし、また廃止が議論されかねないと思うのは筆者だけであろうか。いかに本場へ足を運んでもらい、生の迫力を新しいファンに見せつけるか。それこそが、一番大事なことだと考えている。
Text/Norikazu Iwai
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター