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平原康多の勝ちペダル

【#29】切磋琢磨しながら関東みんなで強くなる!ライバル脇本雄太との「ガチ練」も敢行

2022/10/28 (金) 18:00 72

今回のコラムはGI寬仁親王牌を振り返ります(撮影:島尻譲)

今月の平原康多選手の出走は寛仁親王牌のみ。ファンをざわつかせた初日のレースについても赤裸々に語ってくれました。弟分の宿口陽一選手に対して厳しい言葉がありました。しかし、その言葉の裏には、ライオンが我が子を崖から突き落とすように「ここから這い上がって来い!」の強くて深い愛情が感じられました。

「現状に満足しているのではないか?」宿口に対して思っていること

ーーGI寛仁親王牌お疲れ様でした。10月は競走が1本だけでしたが、濃密な4日間に感じました

 寛仁親王牌まで前走から1か月空いたんですけど、追加が来れば走るぞという気持ちでいたので、気持ちを切らすことなく練習できました。いい状態で臨めたと思います。

ーー大会を振り返る上で、まず初日の理事長杯について聞かないといけません。最近は宿口陽一選手のことを聞くのが心苦しい部分もあるんですが…

 ははは。フォローする必要はありませんよ。それがSSの責任ですから。あのレース後にネットが炎上したことも知っていますし、ファンの方が感じた思いは、自分も同じでした。

SSメンバー9人が揃った初日の理事長杯。関東ラインは吉田6着、平原8着、宿口9着に終わった(撮影:島尻譲)

ーーその思いについて教えて下さい

 陽一に前を回らせてきたのは、自分と彼の関係性や情の部分がありました。そこには成長して欲しいという思いがあったんです。でも、飛び付かれたとかならまだしも、1歩目でいないのは、レース以前の問題。追走技術も全然だし、タクヤ(吉田拓矢)に迷惑がかかってしまいました。SSで1年やってきて、成長するどころか弱くなった。結局、自分が任せてきたことが逆効果になってしまったんだと思います。

ーー宿口選手が弱くなったと言いましたが、練習などで昨年から変わったところはあるのですか?

 同じ練習をしていてこうも違うのは、気持ちの問題でしょう。僕はSSになれたことはスタートラインだと思っています。自分よりも強い選手はいるし、上を目指さないといけない。でも、陽一は現状に満足してしまっているのかな。そのモチベーションの違いが、今の結果だと思います。

ーー今後、連係する時はどのようになっていきますか?

 今回、初日のレース後にはっきり言いました。もう前は回せません。

ーー2人だけで連係する時も同様ですか?

 2人だからとか、3人だからとかではなく、前を回すのは、そういう走りが出来ているかが重要です。もちろん彼の責任だけど、甘やかしてしまった自分も責任を感じる部分はありましたから。

ーー2日目の2次予選は、吉田有希選手、諸橋愛選手との完璧な連係が決まりました。特に番手・平原の真骨頂のような動きが見られました。

 冷静に走れたと思います。踏み出しで半車空いてしまって、このまま追うと失格になると判断して、外から迂回しました。最後もユウキを残しつつ、諸橋さんのコースも空けられた。なかなか出来るものではないけど、ラインの3人がきっちり役割を果たせましたね。

2日目の二次予選では吉田有(5番)、諸橋(2番)とラインで走り、確定板を独占した(撮影:島尻譲)

ーー準決は、坂井洋選手が素晴らしかったですね

 山崎賢人が駆けたら掛かってしまうし、それを前橋のバンクで外から叩くんだから、付いていて凄みを感じました。

ーー坂井選手はデビュー前から能力についてはものすごい高評価でしたよね

 練習なら関東で一番強いですよ。僕よりも全然強い。もともとのポテンシャルをレースで発揮出来るようになったので、今後が楽しみです。

3日目準決勝で連係した坂井洋(6番)は今後が楽しみ(撮影:島尻譲)

ーー決勝は吉田拓矢選手との連係になりました。平原選手は一歩引いて、吉田選手に勝てる走りをさせていたように感じました。

 勝てるように好きに走っていいと伝えましたが、その気持ちが裏目に出た部分もあると思います。スピードを殺さずに古性(優作)を叩き切っていれば、ワンツーの可能性もあったかな。でも、これは“たられば”になってしまうし、同じ状況なら自分が前でも3番手に入っていたと思います。

ーー結果は新田祐大選手のグランドスラムに終わりました。

 新田とは若い時から戦ってきましたが、改めてすごい選手とやってきたんだなという思いです。彼の優勝とグランドスラムに対しては、賞賛の気持ちしかありません。

ーーGIの勢力図において、今回は関東勢の勢いを感じました。勝ち上がりの段階では、関東から優勝が出るだろうと感じました。

 若い世代が多くなったので、自分もいつもその輪にいるわけではありませんけど、和気あいあいとしつつも、レースになるとライバル心を持っていい方向で戦っていると思います。今年の近畿のように関東で順番にタイトルが取れるようになればいいし、今はそこを目指してやっています。

メリハリのある関係が関東全体のレベルアップにつながる感じている(撮影:島尻譲)

ーー近畿のお話が出ましたが、村上義弘選手の引退でムードは変わりましたか?

 う〜ん、どうかな。近畿はもともとすごく気合を入れて走っているので、それは今回も同じでしたね。

ーー寛仁親王牌には近畿のエース・脇本雄太選手が不在でした。脇本選手がいるGIと、いないGIでは心境に変化はありますか?

 今はワッキーの1強ですが、いたらどう戦うか? いなかったらどう戦うか?というだけで、いたら嫌とか、いなかったらいいとかは全く思いません。

グランプリの事は考えていない 競輪祭に勝つことだけに集中したい

ーーその脇本選手が、数日前に埼玉を訪れていたそうですね。

 以前からアドバイスももらっていたし、一緒に練習しようという約束もしていたのが実現しました。ワッキーも地元福井のFIが控えているし、調整というよりは「ガチ練」でしたよ。あとは、埼玉の若手達も参加して、練習方法などトータル的に色々と教えてもらいました。

伊藤慶太郎(左)と宿口陽一にアドバイスを送る脇本雄太(平原選手提供)

ーートップ同士の素敵な関係ですね

 西武園オールスターで、これだけやってここまでかという限界を自分に感じていたので、ワッキーのアドバイスのおかげで乗り方を変えることが出来ました。それ以降は同じ乗り方を続けています。ありがたいですね。

ーーその効果か、レースを見ていて落ち着きがあるし、また2段階ぐらい平原選手の脚力が上がっている感じがします。

 はははは、2段階は大げさですけど、0.5段階ぐらいは上げることが出来たかな。

ーー寛仁親王牌から中4日で京王閣G3です。タイトな日程で、その間に脇本選手との練習もあったら、疲れはありませんか?

 日程は分かっていたことなので、その辺は大丈夫です。若手達はワッキーと2日間やりましたが、僕は1日だけにしておきました(笑)。

ーー京王閣も準地元地区です。やはり気持ちの入れようは違いますか?

 周りが思うほど、地元だからと意気込む感じは僕にはないんです。モチベーションを下げずに、どこでも同じテンションで走れるように心がけていますね。

ーー寛仁親王牌を終えて、グランプリの出場もほぼ当確と思いますが、安心感はありますか?

 今はまだ寛仁親王牌で優勝出来なくて、次の競輪祭をどう勝つかを考えています。その間にGIIIも2本あるし、グランプリはその先のこと。まだ考えていないですね。

ーー今回は真面目な話題のボリュームが増えてしまったので、お口直しに癒し系のあの方の話題を最後にしましょう

 そう言えば寛仁親王牌で(中川)誠一郎さんはすぐ帰っちゃいましたね。お話するタイミングがありませんでした。

ーー中川選手は荒井崇博選手とどちらが先に500勝するか話題になっていましたが、荒井選手が先着しました。平原選手も470勝で今度は勝負に加われるんじゃないですか?

 はははは。直接対決みたいなのは止めておきます。誠一郎さんとは、コラムを通して間接的に関わるぐらいがちょうどいいんですよ(笑)。

ーーそこまでは踏み込みたくないと?(笑)

 僕から見た誠一郎さんは、すごい選手ですし、未だに本人を前にすると緊張するんです。誠一郎さんも人見知りですしね。コラムで中身が分かって、今はホッコリしてますけど、はははは。

ーーでは、療養中の中川選手にメッセージをお願いします

 また、あの爆発的なスピードが見たいので頑張って下さい。ふふふ。

(文中敬称略)

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平原康多の勝ちペダル

平原康多

Hirahara Kota

埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。

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