2025/10/05 (日) 12:00 5
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は京王閣競輪場で開催されている「ゴールドカップレース」の決勝レース展望です。
京王閣競輪場で開催されている【ゴールドカップレース】は、場内で様々なイベントが行われています。
その中でも一際人気を集めているのが、ガールズの増茂るるこ選手と、小林莉子選手が出展しているキッチンカーです。
ベビーカステラが大好きだという増茂るるこ選手は、その名の通りに「ベビーカステラる」を出店しました。
一方、小林莉子選手は車の改造に興味があって、なおかつ将来は飲食店を経営したいとのことで、「マルスキッチン」という名前で、フランクフルトやドリンクを提供しています。
自分も解説の仕事で京王閣には来ており、2人の仕事ぶりを見に行ったのですが、常に物凄い行列ができていました。
ただ、2人とも競輪選手としての仕事もおろそかにすることなく、レースでも優秀な成績を残しています。
競輪選手とキッチンカー経営の「二刀流」は大変かと思いますが、実益を兼ねるだけでなく、ファンサービスにも繋がっていくはずです。
開催最終日には増茂選手の「ベビーカステラる」が出店されています。売り切れ必至の人気店だけに、どうしても食べたいという方は、早い時間から京王閣競輪場へ来場したほうが良さそうです。
今大会はキッチンカーの他にも様々なイベントが開催されていますが、やはり好メンバーが揃ったことが、大会の盛り上がりに繋がっている印象を受けます。
初日の特選にもSS班の5名(岩本、清水、眞杉、松浦、脇本)と、今年の【日本選手権競輪】を優勝した吉田選手が名を連ねました。
ただ、吉田選手は二次予選を落車棄権。清水選手も7着に敗れて、準決勝進出とはなりませんでした。
準決勝へと進んだSS班ですが、決勝へ勝ち上がってきたのは、眞杉選手と脇本選手の2名となります。この両者ですが、眞杉選手は今大会でまだ勝利をあげていないだけでなく、上がりタイムを見ても、そこまで調子が上がっていないように見えます。
一方、脇本選手は7番手からの捲りを決めた二次予選に続き、雨がバンクに残っていた準決勝でも2日連続で、上がり10秒台を記録しています。
調子の良さは脇本選手に軍配が上がりますが、準決勝では共に同じ地区の選手が勝ち上がっていないだけに、決勝での並びがどうなるかを注目していました。
一方、準決勝で「サプライズライン」が成立したのが新田選手と小倉選手です。普段は先行選手と番手選手としてしのぎを削ってきた関係であり、勿論、これが初連係となります。
レースは新田選手が早めに先行態勢へと入りますが、番手でにらみを利かせる小倉選手が防波堤ともなったのでしょう。結果は逃げ粘る新田選手を、小倉選手が自慢のハンドル投げで交わして勝利をあげています。
ゴール後のインタビューでは、両者がお互いを称え合っていましたが、これも実力を認め合っているだけでなく、初連係と言えども、共にラインとしての仕事ができたという充実感もあったのでしょう。
決勝は互いの地区から選手が勝ち上がってきただけに、別線でのレースとなりましたが、またどこかで両者がラインを組んだとしても、いい結果を出してくれそうです。
決勝の並びは①眞杉選手の後ろを⑤和田(真)選手-⑨和田(健)選手と、南関東の2人が付けました。和田(真)選手は昨年の【オールスター競輪】でも、脇本選手との連係実績があり、その時は先行した眞杉選手を差し切って勝利を上げています。
北日本は⑦菅田選手-⑧新田選手-②守澤選手で、ここも3車となりました。③脇本選手との連係実績がある、⑥大川選手でしたが、④小倉選手を3番手にはできないとのコメントの通りに、中四国は2車で連係。結果的に脇本選手は単騎戦となりました。
単騎の脇本選手以外の先行選手の3名ですが、これまでのレースを見ても、大川選手の先行は無いと見ています。
一方、北日本もラインの先頭が新田選手ならば、準決勝のように果敢に先行してきたかもしれません。それが菅田選手に任せたということは、捲りに構えてくると見ていいでしょう。
必然的に先行は眞杉選手だけとなります。1番車に入っている眞杉選手が、スタートを取る形でレースは進んでいきそうです。
車番的にはその後に北日本の3人が付けて、単騎の脇本選手を挟んで、8番手となった大川選手が前を抑えに行きます。
眞杉選手はここで引くと思いますが、そこをすかさず叩いていくのが菅田選手ですが、すかさず眞杉選手が主導権を握り返していくと見ています。
その時、4番手に入っていそうなのが菅田選手です。捲りを狙う菅田選手ですが、タイミングが遅くなると、その後ろにいる脇本選手が一気に捲ってくるだけに、多少タイミングが早くても出ていくはずです。
この展開となれば、菅田選手の番手に付けている新田選手が有利となります。新田選手は全盛期のスピードこそありませんが、準決勝では早めの先行をしながら2着に残したように、長い距離を踏めるようになっています。
決勝でも新田選手がロングスパートをするような展開となれば、久しぶりの記念優勝も見えてきます。
ただ、単騎の脇本選手は車列が短くなるのを虎視眈々と狙っているはずです。どの位置を回っているかにもよりますが、ゴール前では、先に抜け出した新田選手を捕らえている可能性も充分にあります。
印としては◎⑧新田選手、◯⑦菅田選手、△③脇本選手、×⑤和田(真)選手に打ちます。以前はナショナルチームで一緒だった、新田選手と脇本選手のワンツーも充分に考えられそうです。
先ほど書いた「サプライズライン」ですが、自分も2002年の玉藻杯争奪戦で、村上義弘さんの番手を回ったことがあります。その時は村上さんが先行して優勝。自分は交わせずに2着でした。
村上さんは自分が付いていながらも、いつもと変わらないレースをしてくれただけでなく、番手にいた自分は直線で交わせなかったのですから、改めて強い選手だなあと再確認しました。
逆に自分も若手選手として先行していた頃には、番手に中野番手、井上選手、佐々木選手と九州の大御所が付いてことがありました。
この時は緊張もしましたが、それだけ評価してもらったのだなと開き直り、より積極的なレースをしました。サプライズラインの結果が出やすいのは、結びつきはそれほど無くとも、互いが先行、番手といった、選手としてやるべき走りを専念するからでしょう。
今後も「サプライズライン」を目にすることはあるかと思いますが、地区の壁など気にせずに、率先して車券で狙ってみるべきだと思います。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。