2025/10/09 (木) 12:00 16
松阪競輪場で「開設75周年記念 蒲生氏郷杯王座競輪(GIII)」が10月10〜13日に行われる。S班は古性優作(34歳・大阪=100期)、郡司浩平(35歳・神奈川=99期)、新山響平(31歳・青森=107期)、犬伏湧也(30歳・徳島=119期)の4人。浅井康太(41歳・三重=90期)、皿屋豊(42歳・三重=111期)、西村光太(39歳・三重=96期)の地元勢が迎え撃つ。
松阪といえば、やはり郡司だ。1月に同大会を4連勝の完全Vで優勝したばかり。年度が違うので、2025年では2回目の記念になるのだが、今回も楽しみしかない。2023年もこの大会を優勝しているし、なんといっても2019年共同通信社杯競輪(GII)を制している。文字通り“松阪の鬼”だ。
松阪といえば牛なわけだが、郡司はその牛たちを追い立てる少年ならぬ鬼。生きっぷりで勝負するカウボーイのようなもので、今回も制すとなればもはや「カウデビル」と呼んでいいだろう。今回の豪華メンバーで優勝できれば、松阪競輪場からテンガロンハットがプレゼントされることになるだろう。
南関地区プロでもスピード感を披露しており、全プロ、寬仁親王牌に向けての意志を示す走りを見せていた。今年も終盤。南関の平塚グランプリに対する意志を改めて示していく。
古性は9月福井の共同通信社杯競輪(GII)の決勝で失格となった後の戦いとなる。太田海也(26歳・岡山=121期)が落車してしまい、失格となったことはよくなかったことはあっても、あのまくりを止められるのは古性だけだと思う。それくらい、古性の走りはすごかったと思っている。
とにかく同じように。古性には変わらない戦いをと思うわけだが、いや、古性は「もっと上へ」としか考えていないはずだ。誰もたどり着けなかった場所へ、他の追随を許さない競輪選手になることを自分に求めている。
すでに別格の位置にいても、古性自身が感じている世界があるだろう。そこに向かう戦い、そこでの戦い、そしてもっと上へ、を続けてほしい。競輪は外から見ていると「自転車に乗ってるだけ」と表現されることがある。違う。自転車の究極の世界を生身の人間が行っているという驚愕の技術と精神を、古性の戦いから感じてほしい。
こうしてコラムを書いている内に日付が変わっていく。真夜中だ。ああ、そういえば「真夜中のカーボーイ」(1969・米)という映画があったことを思い出す。ジョン・ボイトとダスティン・ホフマンがアメリカの夢と希望、現実と挫折、失望を全身で見せつけていた。
思い出すだけで、口の端が震えてくるような映画だ。とにかく、全力だった。毎日を、つまり競輪選手にとっては目の前のレースを、全力で。そこには勝利という喜びだけがあるのではない。逆だろう。多くの選手には、挫折や苦境、失望の毎レースだ。映画もハッピーエンドだけではない。
9人(7車立ては7人)の内、勝者は1人。しかも競輪は複雑な側面を持つ。勝者が失望を感じ、敗者が栄誉を得ることもある。何が起こっているのか…。競輪の中で起きる失敗や敗北や挫折、もちろん称賛のシーンについても、奥深いものがある。パッと感じたことと、何が起きていたの?をすり合わせることが、競輪の醍醐味だと知ってほしい。
競輪ライフを厚く、熱いものにしてほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。