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平原康多の勝ちペダル

【#53】未勝利、批判の声…平原康多の胸中は? 競輪界を揺るがす“あの話題”にも言及「真実ならライバルとして見られない」

2025/02/27 (木) 18:00 38

平原康多選手は、2025年になっても苦しみの連鎖が続いています。今年最初の「全日本選抜競輪(GI)」が終わっていまだ未勝利。批判の声は日に日に大きくなっていますが、それでも応援してくれる人たちのために、決して逃げることはしないと言います。かっこ悪くても、レースでは今できる精一杯の姿を見せて、心の内はこのコラムで正直に語ってくれます。復活を信じて待ちましょう。

応援してくれる人たちのために逃げないで走り続ける(撮影:北山宏一)

◆ワッキーは僕の知る競輪史上で一番強い選手

ーー昨日まで全日本選抜の出走お疲れ様でした(取材は25日に行われた)。仲のいい脇本雄太選手がついにグランドスラムを達成しました。

 前にも言ったと思いますけど、ワッキーは僕の知る競輪史上、一番強い選手です。グランプリ付きのグランドスラムという前人未踏の記録であっても、彼ならそれぐらいはやるだろうと思っていました。

ーー大会中の脇本選手は、ベストなコンディションではなかったと思います。

 元々の能力値が高いので、少々調子が悪くても(優勝は)あると思いました。ワッキーの実力からしたら当然でしょう。

◆A級の選手にもラインを大切にする走りが浸透して欲しい

ーー決勝には平原選手と関係が深い眞杉匠選手、吉田拓矢選手も乗っていました。やはり一昨年の西武園オールスターが思い出されます。平原選手もそのシーンを後ろで見ていましたよね。

 今回、眞杉の中に特別な思いがあるというのは、見ていて感じるものがありました。2人のどちらかに勝って欲しかったし、僕は8レースだったけど、胴上げをするために決勝まで残っていましたから。

ーー吉田選手からも取るんだという気迫みたいなものは感じましたか?

 タクヤは2場所連続落車で鎖骨骨折明けだったし、本人も言ってましたけど、まさか決勝に乗れるとは思っていなかった。その分、気負わずにリラックスして臨んでいるように見えましたね。

ーー最近は眞杉選手が関東の若手の中でリーダーシップを発揮し始めています。若い選手には眞杉イズムのようなものが浸透しつつありますね。それは平原選手から継承されてきたものでもあると思います。

 GIを走る選手だけでなく、A級の選手にも同じようにラインを大切にする走りが浸透して欲しい。全体の意識が変われば、関東全体が変わっていくと思います。

意外なことだらけで激戦となった全日本選抜競輪の決勝(写真提供:チャリ・ロト)

ーー決勝は関東の2人には残念な結果になってしまいました。

 スタートから意外なことだらけの決勝でしたね。古性(優作)も後ろ攻めはしたくなかったはずだし、寺崎(浩平)もホームでは仕掛けると思っていたけど、自分が取りにいく距離まで仕掛けを引っ張ったのは意外でした。

ーー自分もその場にいたいという気持ちになりましたか? 平原選手もあとオールスターを勝てば、グランドスラムのリストに名が加わります。

 今の体の状況だと、GIで勝てるイメージが全く沸いて来ないですね。もちろん練習で手を抜くことはないんですけど、腰に爆弾を抱えている以上、以前のように120%の力で追い込むことが出来ない。ここまで体が戻らない経験は初めてだし、歯がゆいです。

◆GIは強い選手の気のぶつかり合い、弱い気持ちでは戦えない

たとえ疲れていても応援してくれるファンは大切にしたい(撮影:北山宏一)

ーー昨日、SNSで平原選手が出待ちのファンにサインをしている動画が上がっていました。苦しい中でもたくさんの人が応援してくれています。

 こういう調子の時でも応援してくれる方は本当にありがたいし、大切にしたい。たとえ疲れていても、時間を割いてファンサービスをするのは当然だと思っています。

ーーSNSや配信番組のコメントで叩かれているのを見るのは心苦しいです。

 結果が出ていればプラスアルファで応援は増えるものですけど、出せなければ叩かれる。それがSSの立場です。第三者の目線で見たって、僕のレースは本来の走りじゃない。お客さんから「休め」とか「赤パン脱げ」なんて言われるけど、僕も非難されることは分かった上でレースに参加しています。賛否はあるでしょうけど。

ーー何度も批判されてきましたからね(笑)

 はははは、赤パンだって昨日今日で履いたわけじゃないですからね。とっくにそういう苦しみは分かっています。でも、苦しい中でも味わえる喜びとか、気付きもあるんです。

ーー今回、GIの舞台で戦ってみて、現状をどのように感じましたか?

 初日特選は、思ったよりもレースに参加出来たなという感覚がありました。ただ、豊橋は突風が吹くので、ごまかしが利かない。最終日は荒井(崇博)さんとからんで遅れてしまった。練習ではそこそこ踏めていたんで、もっと踏めても良かったかなと。まだGIで戦うには力が足りていないですね。

ーーでも、今回は落車がなく、完走できて安心しました。4日制だったのも良かったですね。

 いやぁ、4日間でも疲れましたよ。帰りの運転は、放心状態でしたから。

ーー6日制のように途中に休みがあると違いますか?

 GIというのは、強い選手の“気のぶつかり合い”だから、弱気でいたら押し潰されてしまいます。レースのない日でもピリピリしたムードはあるし、肉体だけでなく精神も戦える状態になっていないと厳しい。レースのない日も休まることはないですね。

ーー体の状態が悪ければ、メンタルの維持も難しいでしょう。

 1つ弱気になれば、ダダッと崩れていってしまう。レースで嫌なことが続いても結局は自分で切り開いていくしかないんですよね。いやぁ、人生にも疲れましたよ、はははは。

清水(左)も慎太郎さんも苦しんでいる(撮影:北山宏一)

ーー笑いながら言っている内は大丈夫でしょう(笑)。他にも苦しんでいるSSの選手はいましたね。

 清水(裕友)も練習ではやれることがレースで出来ないと言っていました。気持ちはよく分かるし、お互いに頑張りたいですね。

ーー今回は欠場しましたが、佐藤慎太郎選手も今は大変なケガで休んでいます。

 骨盤の骨折はきついと思いますし、慎太郎さんの年齢だと。本当に大変な試練だと思います。慎太郎さんは常に頑張っている人なんで、僕なんかがエールを送るのもおこがましい。でも、僕も似たような境遇で頑張っているので、その姿を見せることで少しでも励みになってくれたらうれしいです。

◆SSという立場の重さ「真実ならもうライバルとして見られない」

SSはいい結果を出すことが最低条件(撮影:北山宏一)

ーーこれは触れようか迷ったのですが、全日本選抜の直前に大変なニュースが出ました。

 出ましたね。

ーー過去のドーピングは4ヶ月の出場停止という裁定が多いです。先日、誘導員の早期追い抜きがありましたが、それも4ヶ月。罪の重さと処分の重さも見直す時に来たかもしれませんね。

 そうですね。全日本でも中釜(章成)が暴走で失格してしまいましたけど、選手目線で言えば同じ4ヶ月では可哀想に思います。

ーー同じSSの立場として、どう感じられましたか?

 まだ北井(佑季)には正式な処分が下っていないですし、本人から何も語られていません。だから多くは語れませんけど、もし(ドーピングが)真実だったとしたら、もう彼をライバルとしては見られなくなりますね。

ーーSSという立場は本当に大変ですね。

 いい結果を出すことが最低条件。でも、人間だから毎回いい状態で走れて、いい結果が出せるわけじゃない。今は耐え時。逃げるのは簡単ですけど、僕は苦しんでいる自分もさらけ出しても、納得のいくまでやります。応援してくれる人には、信じてもうちょっと待っていて欲しいです。

信じて待っていて欲しい(撮影:北山宏一)

(※文中敬称略)


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平原康多

Hirahara Kota

埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。

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