2022/05/12 (木) 15:36
8日に終わった「日本選手権競輪」(通称ダービー)は、脇本雄太が捲りを決めて優勝を飾った。ダービーの優勝は3年ぶり2回目。東京五輪後は、大けがに悩まされ続けてきたが、日本一の称号をまた手に入れ、その苦労も報われたに違いない。
筆者は友人と場外車券売り場で参加した。2段駆けの態勢が望める平原康多、好調な脇本。そして間隙を突く清水裕友かと悩んだが、やはり脇本を軸に車券を買った。聞いたところによると、脇本は次のG1である高松宮記念杯競輪には出場できないという。そういったことも考えて、脇本から狙った。
展開は予想通りだった。眞杉匠が逃げ、平原が続き、さらに佐藤慎太郎と守澤太志が3、4番手。守澤は単騎でコメントを濁していたが、優勝するための位置を考えれば、やはりここだった。中団は清水、荒井崇博で、脇本は7番手。最終ホーム過ぎから仕掛けた時は、あまりスピードを感じなかった。いつもの脇本ならドカンと一気に出ているはずだ。しかし、それは杞憂だった。徐々にギアを上げると、合わせて捲りを放った清水の上を行き、ゴール。スピードだけでなく、今回はものすごい力強さが感じられた。車券は脇本の1着、古性の2着を固定で買っていたためハズレ。だが、負けた悔しさより、脇本の完全復活を祝う気持ちが勝っていた。
そして2、3着争いである。これがまた激闘と言えた。佐藤と、その内を突いた守澤が、ゴール前まで激しくぶつかり合っていた。普段はラインを組む仲間であっても、日本一の称号を手にいれるための激しい戦いは、見ているだけで身震いしたものだ。結局、佐藤が先輩の意地を見せて、2着を確保。3着の守澤も十分に見せ場は作ってくれた。ダービーは賞金も高く、佐藤はグランプリ出場が、ほぼ当確。守澤も出場が見えてきたといってもいいだろう。
残念だったのが平原である。眞杉が思い切り先行し、展開は圧倒的に有利だった。ただ、早めに番手から出ていくと、3番手の佐藤に抜かれるのではないかとの思いもあったのかもしれない。平原自身が自分のタイミングで出ていったようには見えなかったように感じた。番手捲りの難しさは、そこにある。先行した選手のスピードが落ちてきても、まだいけると判断するか、スピードが落ちる前から出ていくか。意見が分かれるところでもある。どちらがいいとか悪いとかではなく、本当に難しい判断を迫られる。結果は4着の平原だったが、開催を通して十分貫禄を見せつけてくれたことは間違いない。
次のG1は6月の高松宮記念杯競輪。脇本の不出場を先に書いたが、やはり納得できるのもではない。脇本や新田祐大は、どんなことがあっても、今年一年は全てのG1に出場する権利を与えてもいいと考える。そうすることに、文句をつける人間はいないだろう。口を酸っぱくして言ってきたが、もっと柔軟性がほしいところだ。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta Navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター