2022/05/05 (木) 09:35
競輪選手が口を揃えて「日本一を決める大会」という日本選手権競輪(G1)が5月3日から、いわき平競輪場で開催されている。優勝賞金が一番高額なのは、年末に行われる「KEIRINグランプリ」。しかし、それよりも日本選手権競輪、通称「ダービー」に賭ける選手の思いは強い。吉岡稔真(引退)と村上義弘(京都)が、過去に4度の優勝と最多である。
日本一の称号を手に入れるべく、今年も大会が始まったが、ショッキングなニュースが2日の前検日に飛び込んできた。東京五輪自転車競技代表で、地元の新田祐大が指定練習中に浅井康太と接触して落車したというのだ。すぐに救急車で病院に運ばれ、診断は左肩鎖関節脱臼で全治1カ月。新田にとっては、日本一を決める大会が地元開催。言葉では言い表せないほど、気持ちが入っていたに違いない。新田の出身は会津で平とは違うが、同じ福島であることには変わりない。競輪選手の中でも地元愛は一番であろう。
もちろん、仕上がりも順調だったようだ。下馬評でも脇本雄太との2強ムードさえ漂っていた。それが、走ることも叶わず欠場とあっては、新田の心中を察する。五輪が終わり、S級S班からも陥落。近況からも、この大会に期するところはあっただろう。知人から、肩鎖関節は非常に厄介だと聞いたことがある。焦る気持ちもあるだろうが、完治するまで、しっかり養生してもらいたい。
過去にも指定練習中に落車して欠場はあったが、G1では異例あろう。それも、開催前の前検日となれば、聞いたことがない。ただし、過去にもこのような事故があったことは事実であり、今回も防ぐことはできなかったのだろうか。詳しい人数などを知るよしもないのだが、指定練習をもっと人数、時間を区切ってできないものなのだろうか? 以前、朝練習を見たことがあるが、バンクは渋滞だったと記憶している。ウォーミングアップのような走りなら、多少の渋滞も回避できようが、もがく選手もいる。渋滞の中でスピードを出して走る車はない。自転車においても、人数を確認した上で、スピードを出した練習をするなど、対策はできないものだろうか? 実際、今回の事故が起こった時の人数が分からないので、はっきりとしたことは言えないのだが、場合によっては防げた事故とも言えよう。安全で公正をモットーにしているならば、レースだけでなく、このような時から、しっかりした管理体制が求められる。新田とともに落車した浅井康太は軽傷で、初日の特別選抜予選を勝っている。軽傷だとしても、車券を買うファンにとっては気になるところだということを、関係者には理解していただきたい。新田は残念ではあるが、関係者には、事故防止策をしっかりと、内部だけでなく、ファンの前にも示してもらいたいと考える。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta Navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター