2022/01/06 (木) 12:01 16
いつからか、1着を取っては行けない風潮になってきた。自力、自力で並んでも、番手の選手は前に踏まず、ヨコに振る。これが平原康多クラスの選手なら良いが、今は誰かれ構わず、この走りが多い。そして失敗する。1着を取るより、ヨコに振って2人で4、5着の方が美徳になっている。
「少しでも前を残したかった」、「番手で仕事をするのも勉強になるので」、「技量不足」、「自分が逃げた時に、番手から出られるのは嫌なので」。
レースが終わると、たいがいこんな理由が聞かれる。世の中の風潮と一緒で“潔さ”がなくなってきた。人に嫌われても良いから、1着に拘る選手が少ない。全盛時の岡部芳幸や伏見俊昭は、常に勝ちに拘っていた。岡部選手はA級に落ちるが、うるさ型と言うか、後輩を叱れる大人のままでいて欲しい。そうでないと、益々、競輪界の秩序がなくなるからだ。
伏見選手も、老け込む年ではないし、記念の優勝やG1の決勝に乗って欲しい。あくまでも、僕の中では、競輪界のプリンスは伏見俊昭だからだ。後輩記者が言っていたが、選手の鑑だし、養成所では彼らのレースを教材にすべき。そして、彼らに講義をさせるべきだと。
昔のマーク屋の格言で「捲りは抜いても良いけど、先行は抜いてはいけない」というのがあった。今は結果より過程で見栄えを気にする。
これも何度も書いてきたが、2段駆けの1段ロケットは飯野祐太が日本で一番上手い。自己犠牲精神というか、自分を殺すのは簡単な事ではない。どこかに欲が出ると、必ず失敗する。普段のレースはお世辞にも上手いと言えない飯野だが、2段駆けの成功率は90%以上。早い段階で弟子の高橋晋也を使い、記念の二個や三個、取って欲しい。
新山響平は、今年は単なる引っ張り役では終わらない。人間的にもG1を獲って欲しい選手のひとり。もちろん本人は、新田のS班返り咲きが前提で、その後で良いと思っているだろうが。吉田拓矢みたいな上手さはないが、長い距離をもがけるのは絶対的な武器。
一昨年、伊東の共同通信社杯で中本匠栄が山田英明のおかげでGIIを優勝した。嘉永泰斗も北津留翼のおかげで地元熊本記念を優勝。ヤンググランプリで高橋晋也に乗って小原佑太が優勝したが必ず「今度はラインに貢献したい」と言う。ただ、そんなに簡単な事ではない。これは歴史を見ていれば明らか。若手先行選手が、口だけでなく、新田祐大や新山響平に、どれだけ貢献出来るかで、今後の北日本の動静が決まる。
町田洋一
Machida Yoichi
基本は闘うフリーの記者。イー新聞総合プロデューサー、アオケイ・企画開発パブリストの肩書きも持つ。自称グルメでお酒をこよなく愛す。毒のある呟きをモットーにして、深夜の戯言も好評を得ている。50代独身で80代の母親と二人暮らし。実態はギャンブルにやられ、心がすさみ、やさぐれている哀しき中年男である。