2025/06/21 (土) 14:20 11
高松宮記念杯の4日目の夕方。取材ゾーンから記者席に戻ると、一枚のリリース文が、机の上に置かれていた。"電撃引退"の内容に、記者達は衝撃で色めき立ち、ネットニュースの対応に追われた。僕も現実を受け止めるのに時間がかかり、最初に会った、10数年前の事を思い出していた。
当時、僕がやっていたYouTubeのイー新聞チャンネルにゲスト出演してくれたのか、あるいは、チャリチャンの放送だったと思う。最初の印象は、失礼かもしれないが「単なる、ギャンブル好きの、売れないグラビアアイドル」。あの時代、人気絶頂の橋本マナミ達との、仕事での関わりに比べれば興味も薄かった。継続は力なり! 今のネット放送の反映があるのはA主さん、木三原さくら、中原未来(日野未来)が地道にチャリチャンをやってきたからだと思っている。放送席も競輪場の倉庫みたいなところから始まり、関係者からの視線も厳しかった。ギャラも安く、タクシー代も出せないから、大雪の中、さくらと2人で競輪場まで歩いたとか、苦労話はいっぱい聞いてきた。
まさか、中原未来が、アスリートとして、ここまで成功するとは想像も出来なかった。今でも「あの、みくが…」の気持ちは強い。
全日本女子プロレスには3禁(お酒、タバコ、交際)と言うのがあったが、当時の中原未来が、これを守っていたかは、僕も分からない(笑)。ただ、仕事で絡む頻度が増え「地頭が良いな」と思うようになってきた。性格的に、真っ直ぐで、相手を不快にさせない。自然と人を引きつけ、自己プロデュースも上手い。これも、作ったモノでなく、人間・日野未来として"素の姿だ"。平原康多と同じで、ファンが思い描いている人間性のままである。
ただ、僕自身に対しては、いじってくる。もう10年ぐらい前だが、ロケで山梨の忍野村に行った。宿泊先の別荘の廊下に、僕がパンツを落とすと、汚い物をつまんで拾ったと、今でもネタとして笑ってくる。
ゴールデンキャップを獲り、話題のルーキーとしてデビューしたが、運動未経験の選手に対して、プロの世界は甘くなかった。代謝寸前のピンチもあったし、最初は色物扱いされていた。それが、常にガールズの選手の輪の中心にいて、美の巨匠としても、選手としても憧れの対象になってきた。今は惜しまれつつ引退するが、本人にしか分からない苦しみや葛藤があったと思う。
メディアに引っ張りだこで、大好きなギャンブル場巡りをやっても、常に自転車を携帯して、練習は怠っていなかった。あの、ふくらはぎの太さを見れば、豊富な練習量が分かる。プロ意識が高く、メディア出演に積極的なのも、ガールズケイリンの魅力を広めたいと言う純粋な気持ちから。間近で、僕も日野未来さんのサクセスストーリーを見る事が出来て幸せだったと思う。
今後、競輪界で、彼女にしか出来ない事は、たくさんある。僕らが想像も出来ない仰天行動で、あっと驚かせてくれる事もあるだろう。凱旋門賞のオーナー馬主なんて言う事があるかもしれないし、活躍に期待したい。
長らく、お疲れ様でした。気が張っていた部分もあるだろうし、まずは、ゆっくり休んで下さい。みー、毒舌コラムになりましたが、お許しを!
町田洋一
Machida Yoichi
基本は闘うフリーの記者。イー新聞総合プロデューサー、アオケイ・企画開発パブリストの肩書きも持つ。自称グルメでお酒をこよなく愛す。毒のある呟きをモットーにして、深夜の戯言も好評を得ている。50代独身で80代の母親と二人暮らし。実態はギャンブルにやられ、心がすさみ、やさぐれている哀しき中年男である。