2025/07/21 (月) 15:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は玉野競輪場で開催されている「サマーナイトフェスティバル」の決勝レース展望です。
サマーナイトフェスティバルは、2005年の開催から2014年までは2日間の日程で行われ、2015年から2024年までは3日間、そして今年からは4日間での開催となりました。
自分が現役時代だった頃、サマーナイトフェスティバルと言えば2日間の日程でした。その時は自動番組編成方式かつ、決勝への勝ち上がりも1着権利だったので、通常の大会とは違った気分で大会へと臨んでいました。
それが3日間開催となって、勝ち上がりが楽になると思いきや、GII開催だけに好メンバーが集まり、4日間開催となった今年は、賞金がアップされたことも手伝ってか、例年以上に激しい戦いが繰り広げられています。
サマーナイトフェスティバルの選考条件はS級の成績上位者となるのですが、そこにF1開催での成績も加わってきます。それもあって、若手の先行選手が多くなり、追い込み選手もそのスピードについて行けるような、自力を出せないと厳しい大会となっています。
今大会は開催初日で松浦選手、二次予選で新山選手、そして準決勝でも古性選手とSS班の選手たちが落車に見舞われました。
他にも今大会は落車が相次いでいましたが、これは7車の競輪が主体となっている、若手選手たちにとっては、9車での動きが違っている影響もあるかと思います。ただ、今大会のレースを見ていると、若手選手だけが原因となっているわけではないのも事実です。
ファンとしてはSS班のような強い選手たちが決勝に勝ち上がり、レベルの高い争いを見たいとも思っているはずです。各々の選手たちが勝つためのレースをするのは勿論ですが、その中で事故の無い走りをしていく努力もしていくべきだと思います。
準決勝は落車のあった12レースこそ大荒れとなりましたが、他の2つのレースは実力者たちが順当に勝ち上がってきた印象を受けます。
決勝の並びですが、関東の4人は⑨佐々木選手-①眞杉選手-⑤吉田選手-⑦坂井選手でまとまりました。中国ラインが④太田選手-②清水選手となり、神奈川の③郡司選手-⑧松谷選手の後ろには宮城の⑥和田選手が付けて、ここは東日本ラインとなります。
栃木の2人(眞杉選手、坂井選手)と、佐々木選手-吉田選手で別線もありえるのではと思っていた関東の4車ですが、最近のレースでは果敢に主導権を奪いに行く佐々木選手が、自力を出すことでまとまりました。
1番車に眞杉選手が入ったこともあり、スタートをとった関東ラインの前受け、そして、突っ張り先行が濃厚な展開となりました。
車番的にはその後に中国ライン、そして7番車となった東日本ラインの先頭を任された郡司選手が、佐々木選手を抑えにかかりますが、当然のように突っ張って、一気に先行態勢へと入るはずです。
このまま、関東ラインが突っ張り切れたのならば、早めの番手捲りをしてくる眞杉選手、そして後ろにいる吉田選手が優勝に近づきます。
ただ、連日に渡って積極的なレースを見せている太田選手が、それを良しとするとは思えません。
佐々木選手が郡司選手を突っ張り切った時に、脚を休める必要があるので、いったん、ペースは緩みます。その間隙を縫って太田選手が一気に先行。そのダッシュには佐々木選手も踏み出しが遅れてしまうはずです。
かかりきった太田選手の持続力は脅威です。その先行について行った清水選手が、ゴール前で交わしての優勝。こちらを予想の本線とします。
展開的には有利になりそうな眞杉選手ですが、今大会は上がりタイムが出ていないのが気になります。佐々木選手に前を任せたからには、自分からは動けないだけに、太田選手の先行を交わし切るのは難しいと言えそうです。
車番の悪い南関東ラインは、郡司選手が抑えにかかった後に何をしてくるかが鍵となります。ただ、ここで佐々木選手と牽制しあったとしても、その後ろから太田選手が一気に発進していくので、難しい展開であるのは変わりません。
印としては◎②清水選手、〇④太田選手、△①眞杉選手、×⑤吉田選手に打ちます。初日の一次予選は5着となり、一度は勝ち上がりの権利を失った太田選手ですが、特選での落車と失格もあって、繰り上がりで二次予選に進出。その後は吹っ切れたような走りで決勝進出となりました。
自分も現役には、勝ち上がり権利を失ったはずの選手が繰り上がり、その勢いのままに決勝へと進出したのを何度か見てきました。
太田選手にとっては、まさに『運も味方する』ような大会となっていますが、そこに実力が伴っているのは間違いなく、展開次第では初めての特別競輪制覇の可能性もあると見ています。
若手選手が台頭するサマーナイトフェスティバルですが、その優勝者として、太田選手の名前を刻みこむようなレースを期待したいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。