2025/09/07 (日) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は岐阜競輪場で開催されている長良川鵜飼カップの決勝レース展望です。
佐藤(慎)選手は【ゴールド・ウイング賞】から、中2日での参戦となっています。傍目には慌ただしくも見えますが、欠場選手が出た時点でJKAの斡旋課を通して連絡が来る流れとなっていたはずであり、それなりの準備はできていたはずです。
今回は脇本選手の代わりに犬伏選手、岩本選手の代わりに佐藤(慎)選手となりました。これは、欠場したSS班の2人に準じた能力を持っている選手の中から、選抜されたのが犬伏選手や佐藤(慎)選手だったと言えます。
選手としては前場所の開催中に、斡旋の連絡が来てくれるのが有難いです。急な斡旋における一番の問題は、前の大会で乗っていた自転車を、斡旋が来る前に他の場所に送ってしまっていた場合です。
勿論、その場合は、改めて斡旋を受けた競輪場に自転車を送り直すことになるのですが、さすがに手間と時間がかかってしまいます。
今回、佐藤(慎)選手が斡旋を受けたのも、こうした事情がクリアになっていただけでなく、ファンのためにレースをしたい、そして、出場するからには賞金を稼ぎたいとの思いもあったからでしょう。
追加斡旋を受けたほとんどの選手が、その大会に参戦してくるのは、移動の手間などはかかるとしても、レースでいい結果をのこしたいとの気持ちがあるからだと思います。
佐藤(慎)選手は中2日での疲れなど感じさせない走りを見せているものの、残念ながら決勝に進むことはできませんでした。
ただ、東北3車で並んだ10レースのS級特秀は、かなり有利なメンバー構成となっています。ここで今大会での初勝利をあげて、佐藤(慎)選手の走りを見に来た、ファンの声援に応えてくれるのではないかと思っています。
今大会は初日の特選、二次予選と連勝した、嘉永選手の走りが目立っています。準決勝は先行してかかり切っていた松井選手を、長めから交わしに行った分、ゴール前で園田選手に交わされてしまいました。
それでも思い切ったレースができるほどに、今大会は調子もいいのでしょう。決勝に勝ち上がってきたメンバーの中では、準決勝で2着以下の選手を引き離した、犬伏選手もコンディションの良さが走りに現れています。
その⑨犬伏選手は①清水選手と中四国ラインで並びました。②嘉永選手は⑥中村選手-⑤園田選手と九州の3車でラインを形成。中部ラインは④纐纈選手-⑧志智選手の並びとなり、③菅田選手、⑦村田選手は単騎となります。
細切れ戦かつ、先行するのも犬伏選手1車だけの展開と見ています。しかも、1番車に清水選手が入っただけに、スタートを取りやすくなりました。
単騎勢の位置取りも気になるところですが、九州の3車は中団から。その後ろとなった中部の2人が犬伏選手を抑えに行きます。
その上を嘉永選手が切っていきながら、先行体勢に入りますが、最終的に主導権を握っていくのは、後ろまで下げた犬伏選手となるでしょう。
犬伏選手はSS班となってから、早駆けしないようになったというのか、相手関係を見ながら、仕掛けていくタイミングを遅らせるようにもなっています。
準決勝がまさに、進化した犬伏選手を証明したかのような走りとなりましたが、それでも、番手に入っている清水選手なら、犬伏選手のダッシュにも付いて行けるだけに、その場合はゴール前で交わし切れるはずです。
ただ、中四国ラインは2車だけに、その3番手に入った選手にも勝機が出てきます。それは飛びついていく嘉永選手なのか、もしくはレースのスタートから後ろを固めている菅田選手、もしくは村田選手となるでしょう。
また、今大会では充実した走りを見せている嘉永選手が、後方となった犬伏選手が仕掛けてくる前に、そのまま先行体勢へと入っていく展開もあります。その場合は九州ラインの後ろに入っている単騎の選手が、展開的に有利となります。
犬伏選手と嘉永選手のどちらが先行する形となっても、車番的には菅田選手の方がいいポジションを取れそうです。菅田選手はタテ脚もあるだけに、上位に絡んできた場合には高配当も期待できます。
印としては◎①清水選手、◯⑨犬伏選手、△②嘉永選手、×③菅田選手に打ちます。地元の志知選手がいる中部ラインは、捲りに構えた纐纈選手の仕掛け次第となるでしょう。
地元の記念競輪だけに、今大会にも出場していた志田選手や栗山選手が決勝に進んできて、SS班の選手たちを向こうに回して、果敢に先行していく姿を期待していたファンも多かったはずです。
志田選手も栗山選手も決勝に出られなかった悔しさがあるはずです。最終日には両者ともに積極的なレースで、鬱憤を晴らしてもらいたいところです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。