2025/10/26 (日) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は前橋競輪場で開催されている「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」の決勝レース展望です。
【寛仁親王牌】が行われている前橋競輪場の周辺には、様々なグルメスポットがあります。
大会初日には場内でレース展望をさせてもらったのですが、その時に出てきたお弁当が、前橋名物の「鳥めし」でした。
他にも前橋市はパスタのお店なども有名ですが、意外と知られていないのが、群馬県の名物でもあるソースカツ丼です。
ソースカツ丼は選手宿舎でも提供されています。昼食時となると自分だけでなく、ほとんどの選手が、ソースカツ丼を注文していました。
ふと気になって調べたところ、ソースカツ丼は場内の食堂でも提供されています。自分も味の良さはさることながら、カツを食べて「勝つ」とげんを担いでいました。
明日、競輪場に来られる方も、車券で「勝つ」べく、ランチにソースカツ丼を食べて、高配当を取った暁には、お土産に「鳥めし」はいかがでしょうか。
ただ、なかなか車券で「勝つ」のが難しくなっているのが、周長335mという前橋バンクの短走路であり、そして、路面傾斜が最大で36°というカントのきつさです。
そして、屋内バンクならではの高速決着と、様々な要素が入り組んだことによる、予想の難しさにあります。
選手の個々の実力だけで勝ちあがるのは難しく、その一方で先手を取ったラインが有利に運ぶ傾向が見られます。
しかしながら、今大会では伊藤選手が一次予選、二次予選と連勝を果たしました。山口選手もローズカップを優勝と、単騎戦で臨んだ選手が活躍しています。
河端選手も二次予選では松浦選手の欠場により、単騎戦となりましたが、鮮やかな捲りを決めて勝利をあげています。準決勝でも番手の久米選手が付いて行けずに、単騎捲りのようなレースで2着に残しましたが、そのスピードは際立っていました。
伊藤選手、山口選手、河端選手に共通しているのは、ダッシュ力に秀でていることです。それは捲っていった際における、上がりの優秀な時計にも表れています。
今大会でその3人を上回ったどころか、初日の日競杯は、この日、唯一の8秒台(8秒9)を叩き出したのが脇本選手です。
脇本選手だけでなく、河端選手もそうですが、屋内の短走路はナショナルチームに在籍していた選手たちにとっては、うってつけのバンクとも言えます。
脇本選手は9着となったローズカップの鬱憤を晴らすべく、臨むはずだった3日目の準決勝でしたが、ウォーミングアップ中の落車により、左肘関節脱臼骨折でレース前に負傷欠場となってしまいました。
近畿地区の大黒柱が不在となったこともあってか、決勝に勝ち上がってきたのは①古性選手だけとなります。また、好調の伊藤選手も準決勝では車体故障もあって、決勝には進めず、九州地区の勝ちあがりも⑤嘉永選手だけとなりました。
その一方で快進撃を見せていたのが、中四国地区の選手たちであり、決勝にはSS班の清水選手、犬伏選手を含めた5名が勝ちあがってきました。
その並びですが、中国地区の③清水選手-⑧河端選手、四国地区は⑨犬伏選手-⑦松本選手-④小倉選手と2対3で分かれました。
中国地区は初日の特選と同じ並びとなり、四国地区は犬伏選手と小倉選手の師弟関係の間に、松本選手が入りました。これは競走得点だけでなく、準決勝で小倉選手が松本選手に前を任せていたからこそ、決勝もこの並びとなったのでしょう。
バック回数では犬伏選手の20本に対して、河端選手も18本と引けを取ってはいないものの、中国ラインは清水選手が前となったので、ここは犬伏選手の先行一車と言えます。
スタートですが、1番車の古性選手は単騎だけに、ラインができている他の地区に前受けをさせたいところですが、ここで前受けを主張してくるのは、唯一の3車となった中国ラインと見ています。
松本選手はスタートが速いだけに、犬伏選手が前受けをできるようだと、突っ張り先行も辞さないといったプレッシャーも与えられますし、勿論、引いてからのカマシといった、レースの選択肢が広がってきます。
犬伏選手がカマシて行った時には、準決勝の再現も充分にあり得ます。吉田選手、清水選手は抵抗したいところですが、犬伏選手のダッシュ力に置いていかれるようだと、巻き返しは難しくなります。
むしろ古性選手、嘉永選手と単騎の2人の方が、犬伏選手が引いてからカマシに行った際には、そこに飛びついていけるだけに、犬伏選手の番手を奪った際には波乱の目ともなります。
そうはさせじと松本選手は番手を死守に入ります。松本選手は横の動きもできるだけでなく、ダッシュ力も持ち合わせているので、犬伏選手のカマシにもついて行けるはずです。その時に小倉選手も内をしっかりと閉めていれば、更に強固なラインとなります。
そのまま3車で出切ってしまったのならば、四国3車での上位独占も充分にあり得ます。印としては◎⑨犬伏選手、〇⑦松本選手、△①古性選手、×②吉田選手に打ちます。
犬伏選手は、現在の賞金ランキングでは11位となっています。ここでは優勝は勿論のこと、1つでも上の順位に入って、賞金を加算していきたいところです。
現在17位の松本選手も、優勝してのグランプリ出場、そして、来期からのSS班に向けて、絶好のチャンスが巡ってきました。3番手となった小倉選手も一発を狙っているはずであり、決勝も個々の能力の高さと、結束力の強さを誇る四国地区に凱歌が上がりそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。