2024/08/21 (水) 18:00 33
netkeirinをご覧の皆さんこんにちは。金子貴志です。例年にも増して厳しい暑さが続いています。暑さ対策をしっかりして、夏を楽しんでくださいね。今回はA級戦を走って感じたことを書いていきます。
18日まで平塚競輪場で行われていたGIオールスター競輪では、古性優作君がファン投票1位に応えて優勝しました。決勝では窓場千加頼君がとても強い走りをして、それを差した古性君。進化し続ける古性君の走りにしびれました。
平塚競輪場には大勢のお客さんが来場していて、ナイターを彩る光の演出が素晴らしく、あの舞台で走る選手たちをうらやましく思いました。連日繰り広げられた熱いレースに私も気持ちが奮い立ちました。これを自分の力に変えていきたいです。古性君、本当に優勝おめでとうございます。
私は7月にS級からA級に降級しました。5月のコラムに書きましたが、甘くないことは重々承知で、最初は不安と楽しみが入り交じっていました。
不安だったのはS級では大敗が多く、勝ちパターンが掴めないまま降級してしまったこと。一方で楽しみに思っていたのは、A級になり今までとレース展開が変わることで、それがきっかけとなりいい方向に向かってくれたら… という期待からです。
A級初戦はホームバンクの豊橋ということもあり、いい形で入れたと思います。ここでは123期の棚瀬義大君と初めて連係しました。初連係の選手が増えることも楽しみのひとつで、これから活躍していく若手との連係は新鮮でした。
都度、前を走る選手が強気の作戦を立ててくれたり「ラインで勝ちたい」と言って頑張ってくれ、その気持ちが嬉しく心強いです。実際に前の選手の頑張りのおかげで、最初の3場所はすべて決勝に乗ることができました。私も迷惑をかけないようしっかり準備して、いい緊張感の中で走ることができています。連係する選手たちに感謝して、自分もまた上がっていけるよう頑張ります。
ほかにも新鮮な体験がありました。先日は初めてのモーニング競輪で、再開した熊本競輪場に行きました。熊本地震の後8年ぶりの再開ということでしたが、管理棟は以前の面影が残っていて、懐かしい気持ちになりました。熊本競輪場は相性が良くとても好きだったので、また走ることができて感慨深かったです。
モーニングについては、朝が苦手なので心配していました。ですが走ってみると、無駄のないスケジュールでレース後もケアがたっぷりでき、私にとってはとてもプラスに感じました。今回走った「モーニング7」は普段の開催と比べて人数が半分以下なので、宿舎も通常4人部屋のところが1人か2人部屋でゆったりしていました。洗濯もお風呂もゆっくりと過ごせたので快適でした。
A級になる直前、フレームを新しくしました。以前まで乗っていたビッグフレームは腰への負担が大きく、乗りこなすことが難しくなってきていました。腰への負担を考え、グランプリの時に乗っていたものと、最近まで乗っていたビッグフレームの“いいとこ取り"のフレームに変えました。S級の最後2場所から乗り始めて、腰の負担が軽減されレースにも余裕が出た感覚があったのでA級戦が楽しみでした。
降格前最後のS級戦だった6月末の久留米記念で、松浦悠士君が自転車を2台持ってきていました。松浦君は人一倍こだわりを持っている選手で、ぜひ感覚を教えてほしいと思い私の新車に乗ってもらいました。
松浦君は「サドルの高さに対してハンドルが低く感じるので、ハンドルをもう少し高くした方がいいフォームが作りやすくなると思います」とアドバイスをもらいました。その後はレースを見てくれていて「楽そうに乗っていましたね」と声をかけてくれました。客観的な意見はとても大事です。こんなふうに、開催中は他地区の選手とも意見交換をします。
実はすでに次のフレームも作っています。今の自分の状態のなかでロスなく100%の力を自転車に伝えられるように、改良を重ねているのです。以前、フレームを変えて「こんなに違うのか」と驚いたことがありました。しっかりハマればトレーニングの質も上がり、必ずプラスに働きます。
腰のケガで長く苦しい時期が続きましたが、今は練習での感覚もよくなっています。日々トレーニングを重ねるのは当然として、なにか少しでも自分の中でプラスの要素を作れるよう試行錯誤しています。いくつになっても進化を止めず、またS級に上がれるように頑張っていきたいです。
さて、私がA級降格することを受けて、応援コメントを寄せてくれた読者の方がいました。ありがとうございます。
そのなかに、『車券で迷ってても買いたいときは、グランプリホルダーであるのをやや重視してます』というメッセージがありました。
「グランプリホルダー」や「タイトルホルダー」という称号は、選手になれば誰もが憧れるものだと思います。当時のような走りができなくなっても、見ていてくれて、車券を買ってくださる方がいるのはとても嬉しいことです。私自身、そう呼ばれるとその名に恥じないようにと気が引き締まります。自分のやれることをやってなんとか1着を獲れるように頑張っていきます。
それから『新田康仁選手など、S級に復帰した選手もたくさんいます。諦めないで』というメッセージ。新田康仁さんも大きいケガをしたと知っているので、私もケガを言い訳にしたくないと励みになります。ケガとうまく付き合いながら、最近は手ごたえが見えてくる部分もあったので、もう一度S級で戦うために、いろんなことを試しながら頑張っています。もちろんS級復帰は諦めていないですよ!
A級戦はS級戦に比べて周回が1周少ないので、私にとってプラスになっています。S級は残り1周のスピードが上がっていくのでそれまでに足を削られてしまいましたが、A級は周回中のスピードが上がらず、そのぶん余裕が生まれました。今後も一戦一戦頑張っていきます。これからも応援していただけたら嬉しいです。
パリ五輪では、日本代表選手が活躍しました。自転車トラック競技は残念ながらメダル獲得はなりませんでしたが、日本新記録を何度も更新しレベルが格段に上がっていました。
ですが世界はさらにレベルが上がっていました。特にオランダは考えられないようなタイムをたたき出していて、非常に驚きました。その中でも、本当に紙一重の戦いだったと思います。次のロス五輪、必ずメダルが獲れると期待しています。
私は以前、“8年計画”で目標を立ててトレーニングに取り組んでいました。ナショナルチームは4年後のロス五輪へ向けて、さらなるレベルアップを目指すでしょう。私も初心に帰り、まずは4年後に今より成長した姿で走れるよう地道に励んでいきたいと思います。
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Kaneko Takashi
愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。