2025/07/13 (日) 12:00 5
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は弥彦競輪場で開催されている「ふるさとカップ」の決勝レース展望です。
【ふるさとカップ】が行われている弥彦競輪場は、霊験あらたかな弥彦神社にほど近いだけでなく、周りを山に囲まれた、自然溢れるのどかな競輪場です。
宿舎も競輪場から少し離れた高台にあるのですが、米どころとあって、食堂で出されるご飯も美味しかったです。
また、宿舎のお風呂場の向こうには田んぼが広がっていて、日本ならではの原風景だなと思いました。
この時期は日中は蝉、夜になると蛙の大合唱が始まり、それもまた気持ちをリラックスさせてくれました。
関東の選手たちの中では、新潟の選手は勿論のこと、県内に競輪場の無い山梨や長野の選手にとっても、弥彦競輪場が地元バンクとなっています。
今大会は初日から地元選手の活躍が目立っていたのですが、さすがに準決勝はSS班との力の差を感じさせる結果となりました。それでも山梨の末木選手が決勝に進出しています。
末木選手は今年の【高松宮記念杯競輪】で、初となるGIの決勝に進出しました。
学生時代は自転車競技で実績を残した選手であるように、持ち合わせていた高いポテンシャルをようやく、競輪でも発揮できるようになった印象があります。
その【高松宮記念杯競輪】に続く決勝進出となった【ふるさとカップ】では、関東ラインが3車となりましたが、その並びは④坂井選手-⑥末木選手-①武藤選手となります。
競走得点では武藤選手の方が上なのですが、地元ということで末木選手に番手を回したのでしょう。この辺は関東結束を優先した、武藤選手の人柄の良さも感じられます。
他の決勝の並びですが、②脇本選手-⑧三谷選手-⑨浅井選手の中近ライン。⑤石原選手-③松浦選手の中四国ラインとなり、⑦新山選手は単騎となっています。
準決勝はSS班の3名が揃って勝ち上がってきましたが、その中でもスピードの違いを見せつけたのが、【高松宮記念杯競輪】で完全優勝を果たした脇本選手です。スタートは取ったものの、他のラインに抑えられると後方までポジションを下げていきます。
ジャンが鳴った時には道中8番手ながらも、最終バックから捲っていくと、上がりタイムは10秒8を記録。脇本選手は二次予選でも同じような展開から10秒8の上がりを記録しています。
決勝に向けてのコメントでは、腰の状態が思わしく無いと話していましたが、それでも自分の型にはまる展開となれば、ここでも主力となるのは間違いないでしょう。
ただ、初日の特選では後方から捲れずに6着に敗退しています。この時、思い切った先行を見せていたのが、決勝にも名を連ねた石原選手です。
石原選手は特選の後も連日に渡ってバックを取り続けており、二次予選、準決勝共に2着に残しています。弥彦競輪場はみなし直線が長く、先行選手は苦戦を強いられるバンクなのですが、そこでも安定したレースを続けている石原選手は調子もいいのでしょう。
ここでも先行してくるのは石原選手だと思います。武藤選手が1番車に入っていますが、ここは脇本選手にスタートを取らせて、関東ラインは4番手からレースを進めていくのではないかと見ています。
この展開となれば、後方から石原選手が抑えにかかった時に、脇本選手は7番手までポジションを下げるので、石原選手が抑え先行に入った時に、関東ラインはその後ろに入ることができるからです。
ただ、気になるのは単騎の新山選手の存在です。道中は2車となった中四国ラインの後ろを回っているはずであり、石原選手が抑えにかかった時にも、その位置を渡すことは無いでしょう。
坂井選手は番手に末木選手を付けているだけに、石原選手を強引に叩きに行く手もあります。ただ、ここで両者がもがき合ってしまうと、捲りを狙っている脇本選手には願っても無い展開となります。
それだけに坂井選手は4番手から早めの捲りを狙ってきますが、その前に動き出しているのが松浦選手、そして新山選手でしょう。
SS班2人の抜け出しを交わしに行くのが坂井選手となり、それも全て脇本選手が捲り切れるのかが決勝の見どころとなりそうです。
印としては◎②脇本選手、◯⑧三谷選手、△③松浦選手、×⑦新山選手に打ちます。最近の新山選手は先行だけでなく、捲りでも強いレースを見せており、それは準決勝の走りにも表れていました。
石原選手のかかり具合にもよりますが、早めに松浦選手が番手捲りを出していった時には、ゴール前で交わせるチャンスも出てくるはずです。そこに捲ってきた脇本選手が飛び込んできて、結果的にはSS班の上位独占との結果も充分に考えられます。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。