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不屈の男・金子貴志の奮闘記 〜40代の挑戦〜

【金子貴志の決意】“必ず蘇る”S級復帰へ躊躇なく攻める決意「誰かに勇気与えられるように」

2025/05/28 (水) 18:00 21

 netkeirinをご覧の皆さん、金子貴志です。今年は早くも梅雨入りした地域もあって、夏はすぐそこですね。今回は「日本選手権競輪(ダービー)」で前半の誘導をしたこと、四日市競輪でのこと、弟子の花田雄飛がデビューしたことを書いていきます。

平原康多の電撃引退「同じ時代に戦えて誇りに思う」

 その前に、平原康多君の引退について触れたいと思います。突然のニュースで驚きました。連絡すると平原君はいつものようにすぐに返信をくれました。

引退を発表した平原康多(撮影:北山宏一)

 デビューした時から好青年だった平原君。みなさんご存じのようにラインの信頼も厚く、レースになるとまるで人が変わったような、気持ちの入ったレーススタイルが大好きでした。何度、味方ならよかったと思ったことでしょうか。正直もったいないと思ってしまう部分もありますが、度重なる落車やケガに苦しんでいた姿も見てきたので、まずは心と体を癒してほしいです。

 この先もう一緒に走ることも、平原君が走る姿を見られないというのは寂しいですが、一緒にKEIRINグランプリを走れたり、同じ時代を戦ってこれたことを誇りに思います。

 腰の治療や体幹トレーニングについてアドバイスをくれて、それがきっかけで私は少しずつ良くなってきました。平原君の存在を力に変えて、走っていけたらと思っています。

 感動のダービー制覇からもう1年。「ダービーはどうしても獲りたかった」ということも聞いたので、大願が実ってよかったと心から思います。本当にお疲れさまでした。

間近で見たダービー 競輪らしいドラマに感動

 そして日本選手権競輪は吉田拓矢君が優勝し、2個目のタイトルを獲得しました。初タイトルから苦しい時期を乗り越えての優勝、本当におめでとうございます。

ダービーを制した吉田拓矢(撮影:北山宏一)

 吉田拓矢君は「走植動物部」のメンバー・吉田昌司君のお兄さんで話す機会もあり、応援している選手のひとりです。関東をけん引してきた拓矢君が、眞杉君の気持ちに応えて優勝。競輪らしいドラマに感動しました。

誘導員として参加して感じた熱気

 私はダービーの初日から3日目まで、誘導員として参加してきました。競輪場には1レースから多くのファンの方が集まり、顔見せの時からとても盛り上がっていました。2センターの観客席が取り壊されBMXのコースを建設していて、以前は見えなかった名古屋駅周辺のビルが競輪場から見えるようになり、都会の雰囲気が感じられました。ビルがたくさん見える競輪場は他にないので、ひとつ特徴が増えましたね。

ダービー最終日は名古屋競輪場に多くの観客がつめかけた(撮影:北山宏一)

 ダービー最終日の来場者数は14,000人以上だったそうです。コロナ禍があり競輪場からファンの方が遠ざかっていましたが、最近はまた多くのファンの方が競輪場に足を運んでくれて、熱気がすごかったです。選手もたくさんのファンの前で走ると高揚感に包まれ、気合も入ります。あの雰囲気はなかなか言葉では言い表せません。ファンあっての競輪だと改めて感じました。

 2月の全日本選抜ではキッチンカーを手伝いバンクの外でGIを体感して、今回は誘導員としてバンクの内側からGIを見ることができました。間近で見るGIは想像以上に迫力がありました。そして、誘導員の私にもファンの方は『またS級に上がって頑張ってください』と声をかけてくれて、とても嬉しかったです。

(写真提供:チャリ・ロト)

 忘れかけていた熱いGIの雰囲気。もう一度この舞台で戦い、多くの声援を受けたいと思いました。そのためにも毎日、必死にトレーニングをしています。まだまだ諦めていないので、必ず蘇ってみせます。

豊橋トリオでの連係

 日本選手権の前には四日市を走りました。決勝は中部から5人が進出してそのうち、豊橋をホームバンクにしているのが私を含め3人でした。いつも連係する中部地区ですが、さすがに5人では連係はできないので、割り切っての別線勝負になりました。

 結果は鈴木伸之君がまくり優勝。マークした私が2着で、3番手の渡邊健さんは4着でした。普段一緒に練習している仲間ですから、レース中は不思議な感覚とともに、大きな安心感がありました。何より皆にチャンスがある戦いだったので、いい勝負ができたと思います。

 この時の写真をファンの方が撮っていてくれて、インスタグラムに投稿していました。全日本選抜のときは山田二三補さんのキッチンカー『輪蛸』にも来てくれた方です。とてもいい写真だったので、コラム読者の皆さんにも見てほしいと思い掲載の許可をいただきました。

4月15日四日市ナイターA級決勝(@ri.ri.na.keirin様 Instagramよりご提供)

 最近はカメラを手にしたファンの方も多くなり、それをSNSなどに上げてくれています。旅打ちのような感じで全国の競輪場に赴き、撮影をするのも楽しいでしょうね。全国には43場の競輪場があり、観光に持ってこいの場所もたくさんあります。

 競輪にもいろいろな楽しみ方があっていいと思います。SNSなどで躍動する筋肉や雨の中を切り裂いていく写真を見て、競輪に興味を持ってくれる方が増えたら嬉しいですね。

(@ri.ri.na.keirin様 Instagramよりご提供)

弟子の花田雄飛がデビュー

 最後になりますが、弟子の花田雄飛が熊本のルーキーシリーズでデビューしました。結果はあまり良くなかったですが、課題も見つかり少しずつ結果を出していってもらいたいです。花田はまじめで聡明なので、その頭脳をいい方向に発揮できれば化けるはずです。課題を解決する能力は備えているので、「競輪を分析できる」という長所を活かしてほしいです。

弟子の花田雄飛(左)と内藤久文(本人提供)

 厳しいプロの世界では、自分がどうなりたいのかを明確にして、そこから逆算して何をすべきかを日々考えながら過ごさなければなりません。やるべきことは無数にあるので、デビューしたばかりといっても時間は無駄にできないのです。

 最初は同期に比べて力で勝てなくても、将来どうなるかが大事です。個性を生かしながら自分なりの“プロ意識”を構築して、たまたま勝つのではなく必然的に結果を出すことができるようになってほしいです。

山田二三補さん、島野浩司選手、金子選手の門下で決起集会(本人提供)

S級復帰へ躊躇なく攻める決心

 先日、久しぶりに茨城の浦川尊明君と一緒の開催になりました。浦川君は来期S級昇格が決まっていますが、一時は競走得点が83点くらいまで落ちてしまったそうです。A級ではそこまで点数が落ちてしまうと勝つことが難しくなるので、そこからコツコツと点数を上げてS級点を取ったのはすごいことです。

 その浦川君が私に「まだこれから上がっていけますよ」と言ってくれました。しばらく一緒のあっせんになることがなかったのに、ここで会えて「諦めたらいけない」ということを改めて考える機会になり、運命的なものを感じます。福岡の松尾透君も「また一緒にS級で走りましょうよ」と言ってくれて、戦友たちがそのように思ってくれていることを嬉しく思いました。その思いに応えるには、自分自身が「必ずS級に戻る」と本気で信じなければいけないですね。

(撮影:北山宏一)

 年齢を重ねてくるとだんだん挑戦する気持ちがなくなり、攻める気持ちからも遠ざかってしまいます。もちろんこれまでもS級復帰という目標を掲げてやってきましたが、S級点目前まで点数が上がると落ちてきてしまうという壁にぶつかっていました。

 壁にぶつかると、つい腰の痛みや巡りあわせのことを思い浮かべてしまいます。「どうして…」「もうダメなのかな」と思ってしまうこともありましたが、もう言い訳するのは一切やめようと初心にかえりました。この数年は腰との付き合い方を考え続け、おそるおそるやっていた部分もありましたが、これからは躊躇なく攻めていく決心がつきました。そう思えるようになったのは他でもない戦友たちのおかげで、この数年で一番の収穫です。

必ず蘇り、誰かに勇気与えたい

 弟子の花田がデビューしたことで、まだ弱くなりたくないという気持ちも芽生えました。『必ず蘇る』と自分に言い聞かせて、結果を出しながらこのコラムを書き続けられたら理想です。希望にあふれた新人の花田に刺激を受け、私も新人のつもりで頑張っていきます。ケガをして長いトンネルに迷い込んでも、光が見えてまた勝負できる状態になったことに感謝しています。チャンスが来たときに掴めるように、しっかり準備していきます。

(撮影:北山宏一)

 私自身がいろいろな人から勇気をもらったので、ここからまた誰かに勇気を与えられる存在になれたら嬉しいです。ケガをしている選手には、経験した者にしかわからない苦しみがあります。私が復活した姿を見せることで「まだ頑張れるかもしれない」と思ってもらえるように、また挑戦する姿を見せられるよう、前へ進んでいきます。

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金子貴志

Kaneko Takashi

愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。

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