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不屈の男・金子貴志の奮闘記 〜40代の挑戦〜

【金子貴志の心境吐露】来期はA級降格…「やめないよな?」他地区の先輩からの問いと私の美学

2024/05/21 (火) 12:00 43

 netkeirinをご覧の皆さんこんにちは、金子貴志です。初夏の陽気になり、外に出るのが楽しくなる季節になりました。

 今回は日本選手権で優勝した平原康多君について、日本競輪選手養成所127回生として入学した弟子の花田雄飛君と125期としてデビューしたばかりの高野信元君の激励会、そして来期に向けてのことを書きます。

先日デビューした高野信元君(左)と養成所に入所した花田雄飛君(本人提供)

勇気をもらった平原康多の復活V

 まずは平原君、念願のダービー優勝本当におめでとうございます。18回目の挑戦でつかんだ日本一。表彰式では涙が浮かんでいるように見えました。

 祝福のメールを送ったら「諦めずにやってきて本当に良かったです」と返事がありました。度重なる落車で最近は、満足いくパフォーマンスができず苦しかったと思います。しかし、それを乗り越えての復活V、その言葉から重みを感じました。

表彰式ではこみあげるものが見えた(撮影:北山宏一)

 私自身も腰の不調でこの1年は一度も勝てず、苦しい思いをしていました。ですが平原君が“諦めなければ叶う”ということを証明してくれて、勇気をもらいました。きっと多くの競輪ファンの方も平原君の姿に励まされたのではないでしょうか。グランドスラムがかかるオールスターも楽しみです。

未来の豊橋を背負う若手の門出

 さて、先日私の弟子の花田雄飛君の養成所入所祝いと、高野信元君のデビュー祝いを兼ねた食事会をしました。もちろん、焼き肉です(笑)。二人の門出を祝う会に、山田二三補さんや島野浩司さんなど、多くの仲間が参加してくれました。

(本人提供)

 以前コラムに書きましたが、花田君は一度受験に失敗してその悔しさをバネに合格しました。リベンジにかけた1年、本当によく頑張ったと思います。挨拶に来てくれたご両親の喜ぶ顔を見て、私もホッとしました。彼はすっかり凛々しい表情で、1年前の涙が懐かしく感じました。「強くなって帰ってきます」と頼もしい言葉を残し養成所に向かいました。

 先日豊橋からデビューした高野君は野球エリートで、プロ入りも期待されていました。しかしドラフト会議で指名漏れの屈辱を味わい、競輪界に飛び込んできました。野球仕込みの身体能力の高さは言うまでもありません。気持ちも強く、競輪に取り組む姿勢も素晴らしい、大型新人です。

若い二人からパワーをもらった(本人提供)

 先にデビューした高野君、1年遅れを取ったけれどこれから追いかける花田君。これから二人で豊橋を盛り上げていってもらいたいです。私も若い二人からパワーをもらいました。私もまだまだ諦めずに頑張ります。

後期はA級生活、甘くないことは重々承知

 さて、7月から私はA級に降級します。今はA級のレースを見て分析し、色々と準備をしています。

 その中で今まで使っていたフレームではなく、サイズも変えたフレームを作っています。練習の内容も今の自分の体と相談しながら、新しいトレーニングが確立されてきました。すぐには結果には結びつかないかもしれませんが、一つずつ積み上げていきたいと思います。

塗装前の新しいフレーム(本人提供)

 途中で休止していたデッドリフトのセット数も重量は変わりましたが、9,000セットを超えました。目標である1万セットを達成する頃には、結果に繋がることを信じて続けています。

 もちろんA級戦が甘くないことは重々承知していて、不安もあります。ですが今の状況が続いてもなかなか勝てないことはわかっている中で、この降級はひとつの“新しいスタート”になると、前向きに受け止めています。

“新しいスタート”へ準備重ねる日々(撮影:北山宏一)

「やめないよな?」他地区の先輩からの問いに…

 先日、レースで加倉正義さんに会いました。レースを終えて野次を浴びながら検車場に戻ってきた私に、いつも優しい加倉さんは「(選手を)やめないよな?」と聞いてきました。私のA級降級を知って、声をかけてくれたのだと思います。

 私は「やめません」と答えました。車券を買ってくれたお客さんに応えられないことはもちろん悔しいですが、今の私の気持ちは野次を浴びてなお燃えています。まだ諦めたくない、そういう気持ちを加倉さんに伝えました。

 加倉さんは「それならよかった」と言ってくれました。小野俊之君が膝のケガで苦しんでいたときも、同じことを聞いたのだそうです。やはりケガを経験した人にしかわからない苦しみはあると思います。ですが、それを言い訳にしても状況は変わりません。

“不屈の男”の闘志は今も燃えている(撮影:北山宏一)

 いつかすべての選手に訪れる“辞めどき”。良いうちに身を引く美学もあります。でもボロボロになりながら頑張るのもまた、美学だと思っています。今は、状態が良くても悪くても自分と向き合ってやることをやるだけ。必ず勝ちパターンを掴んで結果を出し、支えてくれた人に恩返ししたいです。

武雄神社の大楠からパワー授かる

 レースで佐賀県の武雄競輪場を走った後、近くの武雄神社へお参りに行きました。御神木である推定樹齢3000年の大楠が有名で、高さは27メートル、根回りは26メートルもあるのだそうです。

武雄神社(本人提供)

 パワースポットとして知られているこの大楠を、植物を愛する“走植動物部”のメンバーとしても、どうしても一目見てみたかったのです。

 いざ訪れると、その場に立った瞬間、心が清らかになるような不思議な感覚になりました。植物の生命力を強く感じ、多くの人が訪れる理由がよくわかりました。

御神木の大楠(本人提供)

 この巨木の驚くほど大きな根回りを見れば、3000年ものあいだ雨にも風にも耐えてこられた理由がわかります。自分もどっしりと根を張り、長く現役生活を続けられるようにお参りしました。

 ものすごいパワースポットですので、皆さんも武雄に行く機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。

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金子貴志

Kaneko Takashi

愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。

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