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前田睦生の感情移入

【競輪の番組】ドラマを生み出す番組編成の思い、そして意味を持つ重要な車番

アプリ限定 2023/04/24 (月) 12:00 42

番組の深みを知る佐藤慎太郎

番組編成委員

 競輪の番組は「番組編成の要領」というものに基づいて作られる。公益財団法人JKAの番組編成委員がその任務を負い、各競輪場で日々、様々な思考を巡らせている。業務は多々あるが、番組編成などについて「常に研究的、創造的態度で取り組まなければならない」という文言もあり、番組作りには熱心な方ばかりだ。

 大まかに番組がどうできるか、選手がそれを見てどういう反応をするか、を簡単に書いていきたい。基礎的なものとしては、初日でいえば特選や予選で分け、車番を決める。特選が1つなら、車番を決めるのみ。予選が多くある時は、予選の最初のレースは誰がいいだろう、予選のトリはこの選手がふさわしいだろう、そしてそれぞれのレースの構成を考える。

 グレードレースではオープニングレースの1番車に、その時期に期待されている若手選手が選ばれることも多く“期待枠”と呼ばれている。地区の構成や、戦法の種別を見極め、ファンが楽しめる番組作りが全国で行われている。

 競輪場のある地域にちなんだ数字で1着、2着に入るとキャンペーンを行うといったことも行われており、例えば広島の「鯉」にまつわる「5151、コイコイキャンペーン」で有力ラインが1番車と5番車に入ったりするなど、趣向を凝らすこともある。

S班を分けたり、特選シード組を分けたり…

抽選の管理も番組の仕事

 例えば開催にS班の選手が3人いた場合、準決3個レースに3人が出場する時、3つのレースに割り振る。また初日特選を走っていた選手の数を気にするケースもある。

 格の同じレースにおいて、バランスが悪くならないように面白い番組を作る。レースの9選手の競走得点を足した時に、同じ準決格の10Rと11Rでは大きく差がある…といったものも避ける考えもある。

 地区は違うが有力選手が並べる構成だったり、他地区でもアドバイスをもらった、練習を一緒にした、などのストーリーがある選手が並んでも面白いように組んだりすることもある。

 師弟で一緒の開催の時に「初日はもったいない。準決で一緒に」とタイミングを計ることも…。様々、ドラマを生むようにするのが番組の腕になる。

選手は一瞬でわかる

抽選機は静かに回しましょう

 選手は番組を見ると「ああ、こういう狙いだな」をすぐに感じる。そしてレースに向けてのコメント、並びや意気込みを話す。競輪が面白いのは、ただ数字が結果として出るのではなく、選手の思い、走りがレースとして成立し、ファンの胸に届くからである。番組はそれを支えている。

 厳しい番組に入り、顔をしかめることもある。地元の有力選手が最終のメイン扱いでない時に怒ることもある。選手は番組に対して、プライドを感じている。

 それはその日限りではないことも影響している。これまでやってきたこと、今頑張っていること、この先に期待されること…。いろんなものが織り交ざって、連綿として物語を形成するので、選手とファンが共有しながら競輪の歴史を作ることになる。

車番について

取材では番組を見ている時の表情も大事

 男子もガールズケイリンも車番による有利不利は、競技の特性上ある。理想はオール抽選だが、現在は「ファンが推理しやすい」ことを大事にしているので、番組編成委員が車番を決めることは必要だ。

 ただし、ガールズケイリンのミッドナイトの車番順は代謝制度に関わり過ぎているので、今は解除してもいいのかと思う。男子はラインがあるので、多少、やれることはある。どうしても、ない時もあるが…。

 大外枠を「ビューティー枠」といって、レース的には不利でも前向きにとらえたり、選手たちは総じて明るい。こうした態度は好きだ。とはいえ、前日のレースで失敗してしまい、次のレースの車番が大外枠だった時に「これはきつい」と肩を落とす姿も…。番組や車番を選手たちが意気に感じたり、また悔しいと思ったり、ともすれば立ち直る一戦になることもある。

 選手は常に大変だが、ファンサイドからすれば、楽しむことが競輪だ。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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