2023/04/26 (水) 12:00 25
久留米競輪場で「大阪・関西万博協賛競輪(GIII)」が26〜29日の日程で開催される。今節一番の注目は優勝…ではなく、神山雄一郎(54歳・栃木=61期)の900勝達成なるか、かもしれない。
2月27日、向日町競輪の初日に899勝目を挙げ、すぐにでも、と期待されたが達成はいまだならず。達成できない時は「走るたびに悪者になっちゃうよ〜」と嘆くものだった。玉野では落車したこともあり、取手を欠場しての今回。
期待しかない。
かつては1日2走もあったため、1000勝を超えている選手は実は多く6人いる。最多は松本勝明(期前)の1341勝だ。近代競輪において、しかもずっと上位レース、ビッグレースを主戦にしてきた神山の900勝の価値はあまりにも重い。おそらく、もう出てこない…。
GI16勝は史上最多。そしてグランプリは4年連続2着もあって優勝なし。まさに神様が与えたような実績と物語を持っている。
【KEIRINグランプリ】GP初制覇を目指す“競輪国宝”神山雄一郎
https://www.youtube.com/watch?v=QWV-oiq--M8
「KEIRINグランプリ2015」に挑む神山を取材したときのことだ。取材時間は5分までだったか、とにかく時間のない中でのインタビュー。必ず聞こうと思ったのが「夢に見たことはありますか?」だった。
この時の返答を受けて、東スポの一大企画である「日本一早いグランプリ予想」では浅井康太(38歳・三重=90期)を予想していたのだが、直前で神山に変更した。記者になる前、金網に張り付いていたころ、新聞で“全天候型爆撃機”と書かれ、どんな状況でも神山が勝つ、という記事を読んでいた。
2015年、その時が来るのかと懐かしい思い出だ。結果はみなさん、検索してみてください。
愛されキャラとして定着した中川誠一郎(43歳・熊本=85期)だが、500勝を目前にするGⅠを3勝の偉大なレーサーだ。メモリアルの時に聞く定番の質問が、「思い出の1勝はどれですか」だ。おそらく本人もと思うが、2016年5月の静岡ダービー決勝だろう。
私自身の人生で一番心が震えた瞬間だった。4月の熊本大地震の後だ。
この時の準決で中川は内を踏み込んで決勝進出を果たしている。いつもの“誠ちゃん”なら踏みやめているところ。2センターでブロックした後の神山が下りてきた。「こんな状況じゃなかったらあきらめてましたね」。頑張る姿を熊本に届けないといけない。
練習もままならぬ状態で挑んだ静岡ダービー。奇跡の優勝だった。熊本競輪場は廃止、との声すら上がっていた。この優勝がなければ踏ん張れなかった。
2人のメモリアル達成を期待し、また神山のGIII100勝達成も願おう。
ぜひ、久留米競輪場に行き、目の前でその瞬間を見てほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。