雑草の中の雑草

　平原康多(41歳・埼玉＝87期)の復活Vがいわき平競輪場の「第78回日本選手権競輪(GI)」で成し遂げられたわけだが、41歳の年齢にしての戦いは、すさまじい。今また、ベテラン選手の頑張りが目立ち、平原と同い年の山田英明(41歳・佐賀＝89期)にももう一度、輝いてほしい。

　平原は超エリートに見えるが、基本的には叩き上げ。不屈の闘志は雑草といっていい。英明は叩き上げ中の叩き上げ。S級に上がるのも一歩一歩。S級に上がってからも一歩一歩。GIに出場できるようになるまで、また一歩一歩。そして、そこで活躍するようになるまでも…。

　抜きんでたスピードや技術があるわけではない。本人がよく話すように「泥臭く」というあきらめない戦いぶりだけで階段を上っていった。GI決勝の表彰台に上がり、もう少しでグランプリ、S班というところまでいって、跳ね返された。

あきらめない意外に道はない

　英明は2月岐阜競輪の「第39回全日本選抜競輪(GI)」で久しぶりにGI決勝の舞台に帰ってきた。準決で見せた執念の追い込みに、かける思いが込められていた。

　現在の課題は、ダービーの戦いを終えた後に「後ろを回った時に、自力の感覚で、どうすればいいか、とか考えて車間を空けてしまったりする。(嘉永)泰斗とか、そういう必要のない選手の後ろの時にしっかりついていかないと」と話していた。

　まだ動けるだけに、余裕があって考えてしまうケースがあるようだが、ここから先へ進むには後ろを回る選手としての確立が重要になる。現在の脚力がある内に、追い込みとして勝負していくしかGI制覇の道はない。

　はい上がってきた選手だけに、怖いものはない。“直線こそが自分の生きる道”と、そこにかけてほしい。今シリーズはよほどその戦いが求められる。もちろん、番手の仕事をすることも含めてだ。「ヒデちゃん」と呼ばれる愛されキャラだが、怖いくらいの戦いを見たい。

山田庸平の戦いは

　S班が深谷知広(35歳・静岡＝96期)と清水裕友(29歳・山口＝105期)の2人いて、山田兄弟も厳しい戦いに挑むことになる。庸平としては、3月GIIIは優勝がノルマだったが、この時は今回より薄いメンバー構成。しかし、見据えるのはやはり優勝だけだろう。

　こっちを勝って本物。大楠賞を勝ち切ることこそが、KEIRINグランプリへの道になる。痛いほど分かっているだろうが、このプレッシャーに勝つほかはない。

　山田兄弟を軸として九州勢が盛り上がれるか、も大事だ。全日本選抜競輪、ダービー(日本選手権競輪)と九州勢は苦戦続き。嘉永泰斗(26歳・熊本＝113期)も深谷や清水を相手に、常に同等の戦いをできるようにならないといけない。北津留翼(39歳・福岡＝90期)と伊藤颯馬(25歳・沖縄＝115期)は、体調を崩した影響でダービーは元気がなかったものの、今回はビンビン元気な姿を見せてくれるはずだ。

頑張ってきてよかった

　ダービーでは岩本俊介(40歳・千葉＝94期)が初めてGIの決勝に勝ち上がり、準優勝という結果を残した。長く南関ラインをけん引し、ようやくの舞台。準決のレースを終え「頑張ってきてよかったな、って思います」としみじみ話した姿が印象的だった。

　同期で同じように、いや岩本以上に南関に対して貢献してきたといえる根田空史(35歳・千葉＝94期)も前進を図る。岩本が準決で深谷と走れたことが大きかったように、今回は根田と深谷が連係できるかがカギになる。

　ダービーが終わってすぐの武雄の激闘。競輪という過酷な戦いに休息の2文字はない。そびえたつ御船山のように、屹立し続けるしかない。

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