2023/04/21 (金) 12:00 27
武雄競輪場の開設73周年記念「大楠杯争奪戦(GIII)」が4月22日から始まる。脇本雄太(34歳・福井=94期)が無事に出場できるようで、まずは一安心だ。治療を続けながらとのことなので、完全制圧、というよりはやはり“今できる走りを”になるか。
北日本の新山響平(29歳・青森=107期)、佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)、平原康多(40歳・埼玉=87期)、そして松浦悠士(32歳・広島=98期)がいてもちろん九州勢も燃える。北日本は小松崎大地(40歳・福島=99期)、関東は吉田拓矢(27歳・茨城=107期)もいるので、楽しみを超えて怖いくらいのメンバーだ。
ワッキー(脇本)の番手は初日特選は近畿同士の東口善朋(43歳・和歌山=85期)になるだろう。ただし、今節は近畿の選手が少なく、2日目以降は大いに気になるところだ。二次予選は7個で、まずS班5人を別のレースにする習いがあるので、例えば脇本にシンタロウという番組は組めない。でも、九州の常に意欲的な番組は、またファンを驚かせるかもしれない。
競輪は番組編成を担う役職の人が、日々の番組を考え、提出する。もはや“演出家”といってもいいだろう。『競う』ということだけを考えれば、初日からすべてランダムに編成されるべきだが、70年を超える歴史を持つ競輪なので、それが有効でないことは明らか。
見る人、車券投票する人、を意識しないで番組を提出することはあり得ない。共同通信社杯(GII)で行われている自動番組が目新しく、一見は面白く見えるのは、日々の競輪の番組の重みが反映されているからこそでもある。
そして、選手にとっては、どんな番組かが直球でその選手の価値を示すことになる。「あなたはこうこう、こういった価値の選手です」と言われるに等しいくらい、番組は重い意味を持つ。自分の地区に有力な自力選手がいない時に、他地区でも力のある選手の番手が回れる番組だった場合、その追い込み選手は価値と責任を負う。
シビアだが、競輪は“格”という見えないものを全体が共有していた、さまざまなところで影響力を発揮するのだ。
地元のビッグネームやシリーズで期待される選手が、他地区の強い自力選手の後ろを回る構成の番組がある。前を回る選手の心理はどうなのか…。直截的な形で書くが、表向きは「地元の選手に任される形なので」と光栄に思い、責任を果たす、とコメントが出ることが多い。ただし、「やっぱり同じ地区の選手が良かったな」「近畿で戦いたかったな…」「南関、いたのに〜」は、存在する。
今回は脇本という、あまりにも、の主役がいるので番組を作る時にすごくいろんな考えが生まれると思う。3月別府競輪「ウィナーズカップ(GII)」の初日特選は脇本に同期の山田庸平(35歳・佐賀=94期)が回れるような構成になっていた。
その続編かもしれないし、また趣の違うものが出てくるかもしれない。おそらく初日の車券を楽しんだ後、すぐに「2日目の番組はどう?」と。そして「準決はどんなのが出てくるんだ?」とゾワゾワすると思う。
レースが楽しみなのは当然で、さらに「おっ、この番組なのか」を楽しむことも競輪の醍醐味だ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。