アプリ限定 2024/05/18 (土) 12:00 31
競輪のメモリアルとしてよく取り沙汰されるのが通算500勝達成で、JKA表彰を受け、退職金の割り増しという特典が付く。直近では5月12日に富永益生(53歳・愛知=66期)が富山の初日に勝利して、「昭和58年4月以降の競走における」通算500勝達成は、55人目(男子では51人目)となった。
よほど力のある選手か、長く自力を出し続けている選手がたどり着く数字というイメージだったが、世の中も変わってきた。とにかく際立つのが、神山雄一郎(56歳・栃木=61期)の906勝という現役最多の数字。GI16回の勝利を含む、ほとんどが最上位の戦いで残されたものだ。記念、現在ではGIIIと統一されているが、神山は3日制のころが多いわけだが、それでもGIII99勝。GIIIで99回決勝に進出するのも…頭がくらくらするレベルだ。
それだけ車券に貢献してきた、ということでファンへの、また競輪界への貢献度は計り知れないものがある。現役2位の小嶋敬二(54歳・石川=74期)が828勝で、小嶋もまた最上位での戦いが長い。最盛期のころは、小嶋が走るレースがドーンと売り上げが伸びる(勝負できる)という現象もあり、貢献の規模が分かる。
現在は7車立てが主流になったこともあり、単純計算で1レースにおける1着を取れる確率は高くなっている。9車立ての方が当然難しい。1着の価値って何?
神山と小嶋の数字が際立つことは無論。最上位戦で並べた白星の価値は高い。これは間違いない。ただし、クラスが違うとはいえ、ファンが投じる100円の重みは、どのレースでも同じだ。下位レースで勝っているから、といって評価が下がることはない。ただただ神山と小嶋がすごすぎる、ということだ。
ガールズケイリンはもともと力の差のある番組構成が多く、男子の勝利数との比較にはならない。しかし、現在ですでに500勝を超えているレーサーたちがいて、彼女たちは過酷な人気との戦いにも耐え、1回でも負けると叩かれる恐怖感とも戦ってきた。こちらもまた、すごすぎる、といっていい。
面白かったのが武雄記念(大楠賞争奪戦)の準決の後のことだ。二次予選で1着を取っていた浅井康太(39歳・三重=90期)がこの時点で499勝と500勝達成にリーチとなった。報道陣としては準決か決勝で華やかに、と期待したものだが、準決の浅井は志田龍星(26歳・岐阜=119期)をがっちり援護して3着で志田と2人決勝の切符を手にした。
「この3着は、1着と同じ価値があるでしょう!」
勝ち上がりが重要な競輪のトーナメント戦である。志田と一緒に3着までに入ることが、競輪の戦いそのもの。浅井は別線を分解させ、志田に好位置を確保させ、という好プレーで道を作った。好プレーのコーナーで取り上げようと思ったが、ここに書くため、今回は取り上げておりません。
2日目、499勝後の浅井と1着の価値について、を報道陣で囲んで話していたすぐに、こうした現象を見せてくれるあたりが役者。1着は取れずとも、その価値を超えるような着が存在するのが競輪であり、日々、その着は刻まれている。
とりあえず、浅井の500勝達成時は次走予定が高知競輪「全プロ(FII)」なので、そこで達成した時には現地記者に頼んでバルーン写真撮影をお願いしよう。
(数字は5月18日現在)
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。