アプリ限定 2022/12/25 (日) 18:00 9
平塚競輪場で29日に行われる「ガールズグランプリ2022」。今年の見どころや出場選手の近況をデイリースポーツの松本直記者に解説いただきます。
今年で11回目のガールズグランプリ。前年優勝者の高木真備は3月に突然の引退。賞金女王不在のガールズケイリンを1年間盛り上げてきたのは児玉碧衣だ。
2018年から3年連続グランプリ優勝。『賞金女王』は児玉碧衣の代名詞だったが、昨年のグランプリは3着で終了。対戦相手に流れを委ねた組み立てを悔やんだ。
年明け以降は普通開催ではきっちり結果を出してきたが“ビッグレース”では優勝から遠ざかった。3月コレクション7着、5月コレクション2着、7月フェスティバル4着、(ゴール後落車)、8月コレクション2着、9月ティアラカップ5着とすっきりしない結果が続いたが、11月グランプリトライアルで3連勝の完全優勝。ようやく児玉碧衣らしさを取り戻した。4回目のグランプリ優勝へ視界は良好だ。
平塚バンクは今年3回目の登場。6月の10周年記念開催は完全優勝。10月開催は予選2走を1、1着でクリア。決勝は最終ホームからロングスパートを敢行。児玉後位へスイッチした尾崎睦に差されて準優勝に終わったがレース内容は抜群だった。
当面のライバルは佐藤水菜。佐藤とは今年4回目の対戦。6月の10周年記念開催では同着優勝だったが、あとの2回は敗れているだけにこのグランプリは負けられない。追われる立場から追いかける立場へ変わっただけに、攻撃的なレースが可能。佐藤より先に仕掛けて女王奪還を目指す。
佐藤水菜はグランプリ初優勝へ視界良好。元々高いポテンシャルを持っていたが、2020年夏から参加したナショナルチームの練習が合っていて、メキメキと力を付けてきた。自転車競技では2年連続世界選手権のケイリンで銀メダル獲得。ガールズケイリンでは7月フェスティバル、8月コレクションで優勝。11月のグランプリトライアルもきっちり3連勝達成。自分の力でグランプリ出場権をつかみとった。
グランプリは3回目の挑戦。1回目の2019年は最終1角で児玉碧衣に掬われて4着。2回目の2020年は最終ホームからカマシ先行を敢行するも、まくられて6着といい思い出がまだない。しかし過去2回は本格化する前の話。今年は26走して25勝と圧倒的な力を見せつけてきた。ナショナルチームの活動で鍛えた力をきっちりと出し切ることさえできれば、勝利は揺るがない。
平塚市の隣、茅ケ崎市出身で地の利は7人中一番。平塚は3開催連続完全優勝中と相性抜群。地元代表としてグランプリの栄冠は誰にも渡さない。
石井寛子は当地で行われた2017年グランプリの覇者。デビューから10年連続のグランプリ出場はガールズケイリンの歴史に刻まれる大記録。今年は3月コレクションの尾方真生マークから抜け出して優勝。佐藤水菜に唯一黒星を付けた1戦はインパクトが強かった。6月の小田原2日目の予選2の1着でデビュー通算500勝を達成。最終日の決勝もきっちり優勝。ガールズケイリン開催場、全場優勝の記録も作った。
後半戦も普通開催では白星を積み重ねて、グランプリ出場を手にした。今年は積極タイプが多くいるだけに、自在に動ける強みが生かせるメンバー構成。テクニックを発揮して2回目のグランプリ優勝を目指す。
児玉碧衣、佐藤水菜の2強対決に「待った」をかけるのはグランプリ初登場の柳原真緒だろう。今年5月のコレクションは高木真備の引退により補欠から繰り上がりで出場。車番が悪かったこともあるが、道中は7番手。中団からまくり上げた児玉碧衣を追いかける展開になると、外を踏んで児玉を差し切る強さを見せた。
コレクション優勝以降も、決勝を外したのは7月フェスティバルのみと1年間を通して安定した強さを身に付けた。まくり、差しの自在性を持っているだけに、動く選手の後ろをキープできる展開になれば、優勝のチャンスは十分秘めている。
奥井迪が3年ぶり、山原さくらは6年ぶりにグランプリへ帰ってきた。
奥井は年頭から休まず走り続けて、デビュー以来最多の97走を消化。優勝は10回。賞金ランキング4位でグランプリ出場を決めた。今年のハイライトは9月名古屋のティアラカップ。台風接近で荒れたバンクコンディションになったが、前受けから強気の突っ張り先行に持ち込むと別線に反撃の余地を与えず逃げ切った。自身初のビッグレース優勝を代名詞『先行逃げ切り』で決めたことも奥井にとってはうれしかったはずだ。
今回のグランプリは5回目の挑戦。16年立川、17年平塚は準優勝。今回も先行勝負に持ち込んで、ガールズグランプリ初の逃げ切り優勝を目指す。
山原も自身最多の94走を完走して賞金ランキング5位で5回目のグランプリ出場を手にした。今年はとにかく積極的なレースが増えている。出し惜しみしない組み立てで1着を量産。優勝13回もキャリアハイの戦歴だ。デビューからスター街道を歩み、4年連続で出場したグランプリの舞台。19年冬の体調不良で戦線離脱。復帰まで半年かかったが徐々に復調。
今年は病気をする前よりも力強くなっている。過去のグランプリでは存在感を示すことはできなかったが、成長した山原ならアッと驚かせる場面もありそうだ。
滑り込み出場を決めたのは尾方真生。2年連続2回目の出場。今年は4月にフレッシュクイーン(平塚)を優勝。3月、5月、8月とコレクションはフル参戦。7月のフェスティバルでも連勝で決勝進出。優勝回数は16回と快進撃を続けた。
初出場だった昨年のグランプリは小林優香のカマシ先行に対応ができず、後手を踏んでしまい持ち味を出せず終了。今年こその思いは強い。尾方のストロングポイントは先行力。奥井との先行争いはグランプリを大いに盛り上げてくれそうだ。
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松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。