2022/12/15 (木) 12:00 5
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は広島競輪「ひろしまピースカップ(GIII)」に出場する原田研太朗選手を解説する。
⚫︎原田研太朗
公式プロフィールでは身長165cm、体重は77kg。デビューして12年ほどだが、ここまで積み重ねた勝ち星はなんと474勝(2022年12月時点)。さらにそのほとんどをS級戦であげている。まさに規格外の選手だ。
原田選手の持ち味は、一言で言えば“決め脚”。後方から前団を一気に飲み込んでしまう捲りのスピードは、SS級の自力選手すら凌駕するほどだ。S級自力選手としては最小兵と言えるが、他の追従を許さない捲りは特別なものを感じる。
深堀りすると、異常に伸張反射能力が高いのだ。筋肉の収縮と膨張のスピードが他の選手よりも優れており、ペダルを速く回すことができている。そのうえ力のロスが少ないので、めちゃくちゃ綺麗に自転車が進む。
ここからはかなり専門的な話になるので、技術論はひとまずここまでとするが、とにかく原田選手の力の伝達効率は非常に高い。
一方で弱点もある。爆発的なスピードを持ちながらも、レースの組み立てや位置取りが苦手なのだ。特に人の番手を回るレースになると、自らの力が発揮出来ない事が非常に多くなってしまう。
これらハンドル捌きや横の動きは、後天的(努力で)に伸ばしていくことも出来る能力だが、かえって仇になってしまうことも。例えば無理に伸ばそうとすると、逆にメンタルが追い込まれて、自分の長所が消えてしまうケースも見られるのだ。原田選手のような、身体能力が高い機動力(自力)タイプは、器用さやレースの組み立てを考えるとジレンマで潰れてしまう。
筆者としては、細かいことを考えて自滅してしまうぐらいなら、単純に考えればいいと思う。まさに先日、原田選手が「もう番手は回らない。自分が常に先頭で走る」という宣言をしていたが、非常に建設的だと感じる。一見、単純に思える発言だが、色々悩み葛藤した末に導き出した彼なりのアンサーだろう。
原田選手は勝てる自力を持ち合わせている。戦法に悩んだ期間は苦しんだかもしれないが、その時期を乗り越えた彼は成長しているはずだ。再び1着を量産する事はほぼ間違いない。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
斡旋メンバーには、グランプリを控えた松浦悠士選手の名前がある。地元という事もあるが、間違いなくこの4日間は大きな注目を集めるだろう。
昨年の決勝戦でワンツーを決めた町田太我選手との連携は、今年も強力な武器となる。今年大ブレイクした坂井洋選手も顔を揃えるが、とにかく松浦選手の4日間の立ち回りに注目だ。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。