2022/06/03 (金) 12:00 15
6月4日に取手競輪の開設72周年記念「水戸黄門賞(GIII)」が開幕する。ひたすら注目を集めるのは、吉田拓矢(27歳・茨城=107期)と吉田有希(20歳・茨城=119期)の2人だ。
吉田哲也さん(引退=51期)の息子さんで、拓矢が次男、有希が四男。三男の吉田昌司(24歳・茨城=111期)もS級で活躍中だ。
今回は拓矢と有希の2人があっせんされており、“兄弟連係叶うのか…”が最大のポイントだ。S班としての戦いに挑んでいる拓矢は決勝進出はもちろん、優勝がノルマといっていい。松浦悠士(31歳・広島=98期)や佐藤慎太郎(45歳・福島=78期)がいる中、優勝は簡単ではないが、求められている。
そして、その上…が競輪選手、また人間としての吉田拓矢に迫ってくる。
「感動を与えてくれよ」。果てしないドラマを切望する競輪ファンに、優勝、かつそれ以上のインパクトを残せるか、がこのシリーズには加わっている。
拓矢はデビューからド迫力の先行力を武器に、一気に上位へと駆け上がってきた。壁に当たりながらも、昨年11月小倉競輪の「競輪祭」でGI初制覇。平原康多(39歳・埼玉=87期)の後を継ぐ者として、看板を背負った。
期待はされていたが、真にその立場になったことの意味がある。またここからがスタート地点。S班の選手は、強いことは無論…。競輪界を引っ張る、という立場を考えると、拓矢はこれから作り上げないといけないものがある。
愚直に強くなってきたドラマは素晴らしいものでも、競輪ファンは目も心も肥えている。「もっと、あるだろ、拓矢」と思っている。そこに有希という爆裂のニューフェイスが登場したことで、物語は深みを増す。
拓矢の愚直さと有希のぶっとんだ明るさがかみ合った時、何が生まれるだろう。連係するには決勝しかない。そこを待つ3日間があり、今年の取手記念(水戸黄門賞)の意味がある。勝ち上がりで必死になる2人の姿を、ファンは追う。
拓矢が輪界の頂点に立つためには、強さに加えての物語が必要だ。まだS班としては苦しんでいると、書いていいだろう。もう一つ扉を開けて、「拓矢はやってくれる。魅せてくれる」というステージに上がってほしい。
平原しかり、今節のシンタロウ(佐藤)、松浦もそうなのだ。結果だけじゃないものを、ファンに届けてくれる。宿口陽一(38歳・埼玉=91期)にも、その輪に加わって、後半戦の活力にしてもらいたいと思う。
ファンはそれぞれのシリーズを前にして、「誰が勝つ? 」「優勝するのは? 」を考えつつ、その節を通してのストーリーを待っている。有希の明るさが、シリーズのスポットライトをより強力にするだろう。
そこで、輝け!! タクヤ!!
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。