2022/05/30 (月) 12:00 8
5月29日は佐世保競輪場で全プロ記念(全日本プロ選手権記念競輪)の最終日が開催され、守澤太志(36歳・秋田=96期)が「スーパープロピストレーサー賞」を制し、静かな雄叫びを上げた。そして中央競馬では日本ダービーが行われ、武豊騎手がドウデュースで6回目のダービー制覇を成し遂げた。50代で初のダービー制覇。20代、30代、40代、そして50代での優勝。前人未到の衝撃の記録だ。
競輪のダービーの前にいわき平競輪場が制作した番組で武は内田博幸騎手とともに、佐藤慎太郎(45歳・福島=78期)とのリモート対談を行っていた。“それぞれがダービーについて語る”珠玉の番組だった。過去の記録を聞くだけでもすごかったのに、今回それを上回る勝利…。
その勝利の瞬間を見た時に、「うらやましい」と正直思った。競輪界でも…と思ったのだ。
また、この日はボートレースのオールスターが宮島ボートレース場で開かれていた。平高奈菜(35歳・香川)が決勝に勝ち上がっていた。今年は3月のクラシック(大村)で遠藤エミ(34歳・滋賀)が女子レーサーとして初のSG制覇を飾った。
各種スポーツを見て、心を動かされることはある。公営競技ではお金を賭けて、一心不乱に応援し、その戦いをともにする。コロナ禍にあっての巣ごもり需要、ネット投票の拡大が各競技の売り上げの増加につながったと言われている。
ただ、その上でそれぞれの競技の良さ、選手たちのすごさに多くの人が新しく気づいたことも事実だろう。オートレースでは川口記念で23歳の若武者・黒川京介(23歳・川口)がGII初優勝を遂げた。地元での大歓声は、中継でもよくわかった。
佐賀競馬場で行われた「九州ダービー栄城賞」ではイカニカンという、お笑いコンビ・千鳥のネタをモチーフにした珍名馬が優勝していた。私は千鳥のネタを知らなかったため、とんでもないネーミングをする馬主がいるものだと思っていたが、元ネタがあってホッとした。
これがストレートに名付けられていたとしたら…。そのセンスの高さに嫉妬し、そして恐れをなし、私は二度と原稿を書けなくなっていただろう。イカニカン…。
何度か取り上げてきたが、神山雄一郎(54歳・栃木=61期)が記念100Ⅴを達成してくれたら…と願っている。果てしない奇跡を、競輪でも見たい。
もちろん、何度も見せてもらってきたわけだが、他の競技ですごいことが起こると、渇望してしまう。競輪はほかのどの競技にも負けていない、という信念があるので、張り合うことでもないかもしれないが、望んでしまう。
私が見た競輪の奇跡、はやはり2012年京王閣のKEIRINグランプリの村上義弘(47歳・京都=73期)の優勝だ。肋骨骨折から約2週間、治らないまま走り、豪雨の中の2角まくり。思い出すだけで、またジーンとしてくるものがある。最近では佐藤慎太郎と清水裕友(27歳・山口=105期)の連係も、奇跡のひとつだった。
気は早いが、9月末の向日町の平安賞(GIII)で“村上義弘復活V”を期待しよう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。