2022/06/08 (水) 12:00 19
松戸競輪の「燦燦ムーンナイトカップ(GIII)」が6月9〜12日の日程で開催される。岸和田競輪の「高松宮記念杯(GI)」の直前とはいえ、脇本雄太(33歳・福井=94期)を筆頭に山口拳矢(26歳・岐阜=117期)に犬伏湧也(26歳・徳島=119期)とゾクゾクするような名前がある。
ケガによる長期欠場で選考期間中の出走本数が足りずにGIに出られないケースとなる事情があるとはいえ、この大会を楽しむ以外にない。宮記念杯につなげる盛り上がりを、創出してくれるだろう。
ワッキー(脇本雄太)がダービーを完全Vで制したのが、2019年5月のこと。あのインパクトは歴史を貫いた。平原康多(39歳・埼玉=87期)が時折、口にするように「輪史最強」の選手に到達した。誰よりも早く、誰よりも強い。競輪への洞察は異常と言えるほどで、他の追随を許さない。
あのシリーズで衝撃だったのは、完全優勝だけではない。ゴールデンレーサー賞を単騎で勝った時。単騎戦のワッキーは終始、9番手にいた。清水裕友(27歳・山口=105期)が先行して、吉澤純平(37歳・茨城=101期)が襲い掛かり、不発になると平原が自力に転じていく。
清水をマークしていた中川誠一郎(43歳・熊本=85期)もたまらず最終BS過ぎから番手まくり。平原が迫る。その大外を単騎でひんまくった。上がりタイムは9秒1。その走りはまさにバケモノだった…。スイスイスイと駆け抜いた…。
驚かされたのは、その後ーー。
新車を試したレースで、その勝ちっぷりは抜群。もちろん、準決も…と思ったが、即「戻します」と決断した。一瞬でその判断に至れるほど、研ぎ澄まされていた。肉体も感覚も頭脳も…。しかもそのフレームはすぐに他の選手に譲渡してしまった。胆力も、といっていいだろう。
今シリーズはガールズケイリンもあって児玉碧衣(27歳・福岡=108期)も出場する。燦燦と輝く松戸の都会的なバンクは、美しさに染まるだろう。ワッキーにアオイ、ケンヤとイヌブシがいて、タケト(菊池岳仁)もスエキ(末木浩二)もいる。追加された奥井さん(奥井迪)もいます。
その中でも注目してほしいのは加瀬加奈子(42歳・新潟=102期)。新潟の新人男子3人を弟子に迎え、指導する立場としても活動の枠を広げている。ガールズ選手同士でなく、ガールズの選手が男子選手を弟子にする時代だ。
ガールズ1期生として道を切り開き、またこうして新たな扉を開けている。選手生命の危機すら乗り越え、出産も経て、人間として強くなるばかりの“加瀬ちゃん”。同い年の人間として、ひそかに尊敬してる人物だ。
プロ野球の松坂大輔や大相撲の朝青龍といったスポーツ選手の世代なのだが、負けていない偉人がガールズケイリン界にいることは、書き記さねばならない。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。