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前田睦生の感情移入

【桜花賞・海老澤清杯】ないようであるのが同着 しかし、ありえないレベル…

2022/04/18 (月) 12:00 12

ザッツ・同着

壮絶に全身で争った川崎記念決勝

 4月17日に最終日を行った川崎競輪の「開設73周年記念桜花賞・海老澤清杯(GIII)」はなんと2人の優勝者が出現した。郡司浩平(31歳・神奈川=99期)と松浦悠士(31歳・広島=98期)。近年のGIIIでは2020年3月の玉野記念(瀬戸の王子杯争奪戦)、そして2011年8月の富山記念で同着優勝がある。

 それにしても郡司は玉野で新山響平(28歳・青森=107期)と同着優勝して、それに続くという珍しい事態となった。2001年11月には別府記念、まだ記念が3日制のころだが、小野俊之(45歳・大分=77期)と岡本新吾さん(引退=42期)が、長い写真判定の末に同着優勝だったこともある。

 競輪は70km近いスピードで競われ、最後のゴール線まであらゆる複雑な動きを秘める。ゴールした時に差がわずか、というのは普通に思えるわけだが、同着となると“本当に起こるの? ”とすら思いたくなるものだ。

 ひしめく力の競い合い。意識を失うほどの状態で、最後の最後…。それは起こる。

競輪選手の人智

賞金は1、2着の分を足して山分け

 ただし、みんなプロ。大体の差はわかるという。

 郡司は川崎の決勝は「届いていると思った。そうでなくても同着はある」。後ろから迫っているので、より確かな感覚だろう。昨年の京王閣ダービーは微差の2着だったが「あれは、届いていないと思った。そしたら、やっぱり届いてなかった」と振り返る。

 背後から迫られた松浦は「2着だと思った」が実感。迫る側と迫られる側ではスピード差もあるわけで、そう感じやすいのだろう。精密な写真判定の結果、同着となり、そこにまた“価値”が生まれた。

 厳しく、激しいレースの末に郡司と松浦の2人が同着だったという意味が満ちた。競輪界の頂点を競い合う英雄の同着。美しく並ぶ1と7の数字があった。この瞬間を見ることができたファンは、大きな感動を得たことだと思う。

時折ある、“ミス”ガッツポーズ

小嶋敬二は川崎記念最終日に793勝目を挙げた

 こうした美しい結末もあれば、興奮状態のため、全く届いていないのに、2着のはずなのにガッツポーズを繰り出してしまうこともある。加藤慎平さん(引退=81期)が勝った平塚グランプリがよく語られるもので、直線で外を伸びた後閑信一(引退=65期)さんがガッツポーズをしてしまった…。

 最終日に白星を挙げた小嶋敬二(52歳・石川=74期)にもそんな過去がある。ただ、それもまたスターの一面かと思う。

 こうした話はトークショーなどでの絶好のネタにもなるので、あってもいいのかもしれない…。川崎記念の3日目の佐々木眞也(27歳・神奈川=117期)は、発走直後にひっくり返ってしまうという事故を起こした。

 決していいことではないものだが、そんなアクシデントもあったなと振り返る時が来る。最終日に来場していた父の佐々木龍也さん(引退=57期)が、会う人、会う人に「真也がご迷惑をかけてすみません」と謝っているのも、なんだかいとおしかった。



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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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