199

奥平充男の引退

2023/01/19 (木) 10:37

奥平充男の引退

京都の奥平充男が、昨年12月28日の名古屋競輪を最後に、バンクを去った。51歳での引退ではあるが、競走得点不足による代謝制度に引っかかったとのこと。

奥平は日本競輪学校(現、日本競輪選手養成所)の93期生。同期には、長野冬季五輪ショートトラックで金メダルを獲得した西谷岳文や、スピードスケートの今井裕介、羽石国臣のオリンピアンなど話題に事欠かないメンバーだった。その中で、奥平にも注目が集まったのは年齢制限撤廃による初めての期だったからだ。ちなみに、在本直樹(岡山93期)も過去、何度も挑戦しながら合格できず、一度は選手になるのを諦めたが、奥平同様に、年齢制限撤廃されたことで、再び受験し、見事に合格した。(※現在の養成所は、2019年度の受験から5回、受験可能年数は初回から8年の制限あり)

奥平が合格した時の年齢は、34歳。そして、2008年のデビュー時は、36歳。選手になる前は、工場でニッパなどを作る旋盤工として働いていた。すでに結婚もしていたと記憶している。どこのスポーツ新聞か忘れてしまったが、卒業記念レースが終わった時に、夫婦で写真に納まっていたとも記憶の中にある。スポーツ選手としては、峠を越えている年齢でのデビューは不安視されたが、努力して、2012年にはS級まで上り詰めた。京都の選手は「奥平さんは真面目」と口を揃えたという。村上兄弟も年上の後輩に対し、最初はどう接していいか戸惑ったらしい。それでも向上心が凄くあった奥平は、強くなるために、誰彼構わずアドバイスを求め、志願して一緒に練習をしたそうだ。
努力して掴んだS級だったが、好事魔多しというべきか、腎臓病に苦しんだ。成績は下降線をたどるが、奥平は決して諦めなかった。競輪が好きだったからこそ、36歳という年齢でプロへの道をこじ開けた。そう簡単に辞めるわけにはいかなかったのだろう。デビュー当時こそ、マスコミに騒がれたが、オールドルーキーという点だけであった。成績がついてこなければ、注目度も下がる。成績自体は際立ったものはないが、それでもS級で戦い、15年間を走り抜いた。
記録には残らないかもしれないが、競輪ファンは奥平の走りを、しっかり頭の中にインプットできていると考える。当初はどのくらい現役でいられるのかという懐疑的な人間もいたが、15年の歳月を頑張ったことに対し、心からお疲れ様と、一ファンとして言いたい。
今後、第三の人生をどう送っていくのかは定かではないが、奥平なら、きっとどんな世界であろうとも、成功できるのではないかと思う。こういった個性ある選手が、また一人いなくなることは寂しい。

Text/Norikazu Iwai

Photo/Perfecta navi編集部

***************
【岩井範一の過去コラムはこちら】
グランプリを振り返って
グランプリまであとわずか
スーパールーキーとは
グランプリは東北勢が4名
新規ファンを獲得するために
高木真備さんの名輪会入り
新田祐大のグランドスラム
寛仁親王牌の注目選手
引退を発表した村上義弘
共同通信社杯を振り返って

競輪関連コラム

岩井範一

Perfecta Naviの競輪ライター

閉じる

岩井範一コラム一覧

新着コラム一覧