2021/08/19 (木) 18:40
8日に閉幕した東京五輪。その最終日は北海道の札幌で男子マラソンが行われた。マラソンが終わり、次の注目は自転車競技。新田祐大(福島)と脇本雄太(福井)が予選を順当に勝ち上がり、決勝への期待が高まっていた。しかし、新田はまさかの準々決勝で敗退。脇本は準決勝で絶好の位置を回りながら、内からしゃくられ(対象選手は失格)万事休す。筆者を含め、決勝に1人も勝ち上がれないとは思っていなかった方も多いだろう。特に脇本の場合は、ネット中継を見ていて楽勝のパターンだと思っていただけに残念だった。レースは生き物と言うが、まさにその通りの結末となった。新田もチャンスを逃してしまったと言ってもいいだろう。レース後のコメントでは「前の動きをみてしまった。アテにしていた部分もある」という内容だったが、メダル候補であるし、自分でレースを作ってもらいたかった。新田、脇本は競技における第一線から退くことを表明した。最強の布陣で臨んだ今回でメダル獲得ゼロ。老婆心ながら、3年後のパリ五輪が心配になった。
新田と脇本の2人は、休む間もなくオールスター競輪に向かった。前回のコラムでは、中0日の強行軍について書いた。筆者的には休ませるべきだと思っていた。それは今も変わらない。本人達の意思が固く、参加したわけではあるが……。初日のドリームレースの走りを見ると、やはり出場しなかった方が良かったのではないかと思われた。しかし、休養を挟み、新田、脇本は何とか決勝までたどりついた。正直、勝ち上がれるとは思っていなかった。2人を褒めるのと同時に、他の選手は何をやっていたのかとも思ってしまう。これほどまでに五輪組と競輪組との差があるのかと驚いた。決勝は脇本が古性優作を連れて先行。ここが脇本のいいところだろう。近畿の仲間を背負う意義を分かっている。何よりこの状況で、2着に逃げ粘るのだから、言葉が見つからない。安易に強いでは済まされないほどであろう。新田も頑張ったと思う。
優勝した古性は元BMXの日本チャンピオン。最近の大阪勢のビッグレース優勝では、2014年高松宮記念杯を制した稲川翔がいる。稲川もまたBMX出身だと聞いたことがある。今回優勝した古性は、昭和の匂いがする選手だと思っている。口数は少ないが、内に秘めた闘志とでもいうのか、勝負に対するいい意味でのガツガツ感がある。若い頃の村上義弘とかぶるところがあると、勝手に思い込んでいた。器用貧乏的なところもあったが、これでひと皮もふた皮もむけるだろう。
売り上げは目標の110億円を優に超える117億8,382万5,600円。昨年の名古屋大会の117億7,481万6,400円を上回った。新田、脇本に加え、小林優香の久しぶりの競走も好影響を与えたのだろう。無観客で、この数字は立派であるし、競輪界にも明るい兆しが見えてきたかもしれない。ただ、コロナ禍は相変わらずである。緊急事態宣言が再び延長され、さらに対象地域も増えた。甲子園では2校が辞退となった。JKAをはじめとする関係者は、オールスター競輪の成功を喜ぶだけでなく、より一層のコロナ対策を徹底してもらいたい。
Text/Norikazu Iwai
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター