2022/03/03 (木) 12:00 4
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は名古屋競輪「金鯱賞争奪戦(GIII)」に出場する渡邉雄太選手を解説する。
⚫︎渡邉雄太
公式プロフィールでは身長178cm、体重は75kg。自力選手としてサイズ感は充分だ。「ザ・競輪選手」と言うゴツゴツした見た目ではなく、今風のスタイリッシュな体型だ。
デビュー後は順調に実績を積み重ね、2016年にはヤンググランプリも制した。アマチュア時代はスプリント競技で全国優勝など、ピュアスプリンタータイプのイメージがあったが、彼のストロングポイントは「しぶとい捲り」だろう。
捲りの踏み出しやキレと言う観点では突出したものを感じないが、とにかく「長く」伸びてくる。イメージとしては「捲りは進んでいるもの流石にここで止まるか………いや、まだまだ伸びている」というしぶといイメージだ。その上トップスピードも高いので、ゴール前一気に前団を飲み込むシーンも多い。
デビュー後は出世も早く、南関東地区期待の若手自力選手として期待されていた渡邉選手。しかし、格上選手との対戦時には、後手(捲り)に回ってしまい不発が続いた。捲りで一撃はあるものの、「渡邉の早い仕掛けは無い」と言うイメージが浸透し、対戦相手に戦略を読まれてしまう部分もあった。
しかし2021年の夏頃から、渡邉の雰囲気やレースっぷりはガラッと変わってきた。一辺倒な組み立てはなりを潜め、ドッシリとした安定感が生まれ、捲りのキレは上位クラスをも脅かすレベルに成長した。こればかりは筆者の主観だが、「強者の雰囲気」が彼に漂い出しているのだ。
元々豊かな才能があり、血統的なバックボーンもある。まだまだ27歳と若く、同期同級生の清水裕友選手と同じクラスで戦う事は可能だろう。2022年は彼にとって、重要な年になる事はほぼ間違いない。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
斡旋されたSS級は、なんと松浦悠士選手、清水裕友選手の2名。松浦選手は追加斡旋とイレギュラーだが、中国ゴールデンコンビが名古屋GIIIで見られるサプライズだ。当然、本開催はこの2人が中心になる事は間違いない。
唯一対抗できる選手がいるとすれば、眞杉匠選手だろうか。今の眞杉選手の先行力は日本屈指。松浦選手、清水選手であろうとも簡単には捲れない。
地元の中部地区は浅井康太選手を中心にして戦っていくことになるが、自力選手は小粒で苦戦必至。若手ニューヒーローの誕生を切に願う。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。