2022/01/14 (金) 12:00 12
大宮競輪の「東日本発祥倉茂記念杯(GIII)」が15日から18日の4日間で開催される。昨年の「KEIRINグランプリ2021」で並んだ関東の吉田拓矢(26歳・茨城=107期)ー宿口陽一(37歳・埼玉=91期)ー平原康多(39歳・埼玉=87期)の3人がそろい踏みだ。
宿口はS班としての新年一発目の競走になる。宿口のKEIRINグランプリはどうだったか。
「さすがに練習の時から緊張してましたよ。時々、ほぐれるように声をかけたんですけどね」と平原は振り返っている。宿口も「平原さんがタイミングを見て自分に声をかけてくれるんでありがたいです」と静岡競輪場に入ってからも、平原がいることで大きな安心があった。
だが、それを上回るKEIRINグランプリの舞台だった。強敵だらけだった。優勝した古性優作(30歳・大阪=100期)が何より強かった。それでも、宿口はもうひとつ上の形にはもっていきたかった…。
涙をこらえる姿は、自分を責めていた。
“競輪選手というのは”と、ある選手は言った。「努力をすればS級には上がれる。でも…」。脚光を浴びる上位の選手たちではなく、S級に上がれず、とにかく今の位置で必死に戦い続ける選手も多い。彼らが努力していないわけではない。しかし、基本的にS級に上がれる選手たちは、日本の中でも有数の身体能力を持つのだ。
そこから抜きんでる。タイム競技ではない。縮めれば有利にはなるが、それだけでは武器のひとつでしかない。ラインがあり、敵がいて、また開催を過ごす時間もある。“おカネ”がかかっているというプレッシャーもある。練習やプライベートでも、何かが求められている。
かつてライバルと呼ばれた男たちは、「自分が休んでいる時に、アイツは練習している」の思いに駆り立てられひたすら練習に打ち込んだ。人並外れる道を行ってこそだった。それはまさに鬼、だった。
S級でも上位、そしてGI、KEIRINグランプリで活躍するとなれば、鬼としか思えない。
しかしまあ、取材しているこの10数年だがこの鬼たちはよく笑う。検車場で、こんな笑顔を見せるのかというほど相好を崩すこともある。競輪を愛し、そんな話に没頭し、楽しんでいる。
実際はつらいばかりで楽しくはないと思うが、肉体は楽しんでいる。ある意味、イカれている(ごめんなさい)。宿口は性格的に穏やか。イカれていく感じはないが、平原の背中を追い続けるだけでもいいと思う。この一年の歩みが“宿口陽一”という選手を平原から遠ざけ、独立したものとして成長させるのか、平原に近づくものとしての成長があるのか、見ていきたい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。