2022/01/17 (月) 12:00 12
岸和田競輪で1月14〜16日の3日間で開催される予定だったシリーズは、関係者に新型コロナウイルスの感染者が発生したため、14日のみの開催で中止打ち切りとなった。この開催には5月いわき平のダービー開催中に行われる「ガールズコレクション2022いわき平ステージ」のトライアル戦が組み込まれていた。
初日の予選1の2つのレースでは尾方真生(22歳・福岡=118期)と石井寛子(36歳・東京=104期)が1着だった。規定により、初日だけのポイントを上位者とし2人が出場権を得る形となり、決勝が行われなかったため3位(3場所の3位選手から一人が出場権を得る)は該当者なしという扱いになる。残るは宇都宮と四日市の2シリーズ。
コロナの影響はいつまでも甚大…と思わせられる事態だった。
3日間走り抜くことでチャンスが生まれた選手もいただろうし、本当に恨めしいコロナだ。しかし、初日を人気に応えて勝ち切っていた2人の素晴らしさもまた際立つ形となった。諸規定は準備されていたもので、異を唱える人はいない。
ただ、水面下に残るのは、ガールズグランプリへの道とは…だ。
一つ、走った選手たちの感想から、“これだけは”というものを再度書く。夏に開かれるガールズケイリンフェスティバル。優勝回数を選考基準とした上位21人による3日制の戦い。これは、レベルが高い。2021年の函館大会ではあの児玉碧衣(26歳・福岡=108期)ですら3日間、苦しんだ。
一発勝負のコレクションもレベルは高いが、このシリーズを制することの重さを選手たちは口にする。現状のビッグレースの形を続けるならば、フェスティバル優勝者へのガールズグランプリ出場権は与えられていい。
その意味で。戦っている選手たちが感じているからこそ、の重みを尊重すれば…だ。競輪祭開催時の2つのシリーズに分けられたトライアルは、ちょっと甘い。今、ガールズケイリンの選手たちは、イレギュラーな、変則的な選出によってガールズグランプリが決まる扱いは受けなくていい。この数年で体系化されていく流れにおいて、尊重してほしい価値を再認識する必要がある。
競輪の存在価値、は原点をたどれば戦後復興の財源確保からの地域財政への寄与。人間がなぜ生きるのか、は哲学者によって語られてきたが“意志”というキーワードがある。ニーチェの「力への意志」といったパワフルな概念もあれば、正しさや宗教的規律を根拠にする意志もある。そしてまた、それは絶対的なものではなく相対的なもので、変化するものでもある、などとも。
長く語られてきた。永遠に語られるものかとも思うし、競輪の存在意義についても永遠に追求したい。財政面の話は今や建前。根拠でもあるが、そこから派生した、70年を越える歴史で生まれてきたファンとの意志がある。100円が1000円になってうれしい、競輪最高、という人もいれば、100円は失ったけど…感じたことがある、という人もいるだろう。
それを支えているのはすべて選手たちの戦い。懸命に争う競輪選手の姿が、ファンを生んできた。そのファンの声で、選手たちは育ってきた。それを紡いできたスポーツ紙を中心とした媒体の仕事も重要だった。ファンを直撃する争いこそが、競輪の意志。男子のシリーズの4着勝ち上がり、5着でも…といったものはやはり緩く、その戦いがファンの心に届くかどうか。
年間の売り上げが1兆円をまた越えようとしている今だからこそ、大切なものは何かを訴えたい。競輪が見せる意志、に期待したい。
Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。