2021/12/17 (金) 12:00 11
「KEIRINグランプリ2021」が12月30日に静岡競輪場で開催される。そこで、激闘の歴史を近くで見守ってきた競輪記者の皆様に集まってもらい、「KEIRINグランプリ2021」を徹底討論してもらいました。前編は「平原康多は悲願を達成する?」、後編は「並びはどうなる?」です。どうぞご覧ください。(取材日:12月3日)
デイリースポーツ 松本直記者(以下松本) 競輪祭が終わってからグランプリまでの間、この並びを想像して語り合うのが競輪ファンも我々も楽しい時間ですよね。
東京スポーツ 前田睦生記者(以下前田) 松本記者は清水と松浦の前後についてどう思います?
松本 うーん……。
前田 考えてきてないでしょ(笑)。松井記者は?
日刊スポーツ 松井律記者(以下松井) 僕は松浦が後ろで、清水が前だと思う。去年はお互いの状態のこともあったし、清水は去年色気を持っていたよね。グランプリ獲りたいって。結局最後は平原がヨコに動いて終わっちゃったけど、誰もが清水が獲った! って思ったよね。でも、今回は松浦が年間最高獲得賞金額っていうものを意識して狙っていて、それを清水も知ってるはずなので、今年は清水が前で、松浦後ろが自然だと思っています。
前田 僕は松浦が前だと思うんですよ。理由は、松浦は自分が前でも勝負になると思っているから。広島記念がしっかり終わって、良い形でグランプリに臨んでいくはずです。そういうマインドで入ってきた松浦と清水が、お互いの雰囲気を感じたときに清水が“じゃあ後ろで”って(笑)。そしてなによりも松浦の状態がすごい上がりそうな気がするんですよね。競輪祭も決勝では何手も何手も打って、動きがすごかったんですよ。そこで広島記念でスイッチ入れば松浦が前になるんじゃないか、と考えています。
松井 すごかったよね、松浦普通の選手より二手ぐらい多いもんね。作戦の幅がすごい。
松本 清水は競輪祭で落車してますし、状態も気になりますよね。
松井 まあ、あの後はグランプリまで走らないし、休養して身体のケアをしっかりすれば仕上げてくるでしょう。去年なんてすごく仕上がってたよね。
前田 “超抜”の仕上がりでしたね。
松井 清水はグランプリ4回目。松浦は3回目。もう、調整の仕方とかわかりきってるから。初出場の人たちとは違いますよ。
松本 (満を持して)松浦が前だと思います。松浦自身が“前で結果を出したい”という気持ちも強いんじゃないかな。去年のグランプリは、まくりに行ってふわっとしたところで終わっちゃったけど、グランプリという大舞台で、松浦がどんなレースをできるか! というところを出してくると思います。前田記者の言うように、松浦は久々に地元記念を走るんで、上昇気流に乗って、その勢いで前を主張してくるかもしれないですね。
松井 でもさ、グランプリは一発勝負だから。4日間走って、っていういつものGIとは違うからね。やっぱり後ろまわってる方が勝率がいいわけじゃない、この二人の場合。それが明確なので、獲りたければ後ろでしょう。自分を“魅せたい”のか、それとも“勝ちたい”のか。松浦の選択がキモになると思いますよ。
前田 (スタッフに向かって)これ掲載いつですか? 前夜祭の前でお願いします。並びだけでもこれだけ盛り上がっちゃったので(笑)。では、南関・郡司の後ろはどうでしょう?
松本 郡司の後ろは慎太郎さんだと思います。慎太郎さんの選択肢は2つ。郡司の後ろに行くか、守澤に任せるか。でも守澤はやっぱり追い込み選手なので、ここは慎太郎さんが郡司の後ろを回るのがベターかなと思います。連係実績もありますしね。問題は守澤くんですよね。
松井 守澤がキモだよね。郡司がね、競輪祭終わった後にラブコール送ってたんですよ。東北についてほしいって。吉田拓矢がグランプリに乗って関東が3車になったので危機感を覚えたんだと思うけど、ただ、郡司と東北の二人が連係したら、関東と3対3の勝負ができる。慎太郎はかなりの確率で郡司につくと思うな。
松本 ですね、いろいろな選択肢を持っているのが守澤ですね。僕はどっちでもいいと思うんですよね、3番手を固めてもいいですし、自分で単騎で走るのもいいですし、思い切って古性の後ろに行くなんていうのも面白いですし。
松井 古性の後ろは俺はないと思うんだよな〜。先行する可能性のある選手だったら行くけど、守澤は自在でやってるし、自在(古性)の後ろはまわらないんじゃないかな〜って思うんだよね。守澤は単騎か慎太郎の後ろだと思う。
松本 守澤-慎太郎っていう可能性…ないですよね(笑)。
一同 ない!
前田 守澤は“佐藤慎太郎を超えられていない”という現実に対してなにか悲壮感みたいなものがあって。“佐藤慎太郎超え”という一大テーマが今年は達成できなかった。
松本 自信を持って前を回るというのができなかったですね。
前田 守澤の今年最大のテーマだったんだけど、逆にいえば、そこが慎太郎さんのすごさというか。
松本 そうなると、郡司-慎太郎-守澤で並ぶのが自然かな。
松井 たださ、守澤は今回グランプリに乗るかどうかはヒヤヒヤだったじゃない? そんな毎年毎年グランプリに乗れるっていう保証はどこにもないわけだし、山口拳矢とか若いスターがどんどん出てくるし。守澤にとって“今年がラストチャンス”ぐらいの腹づもりだったとしたら、単騎はあるかもしれないね。郡司-慎太郎の3番手は優勝が獲りにくそうだもんね(笑)。
松本 慎太郎さんは郡司を評価していて、守澤も郡司を評価していて。慎太郎さんも守澤も“ラインの競輪”をやってくる選手なんですよ。ましてやこのグランプリという晴れ舞台では、守澤が単騎で“攻める”競輪をするんじゃなくて、しっかりと3番手を固めて来るような気がするんですよね。
前田 そこが守澤の(立ち位置の)難しいところだよね。本当にここで行儀良く3番手を回ることが、それが本当に守澤にとっていいのかどうかと思うファンもいるだろうし、単騎で好き勝手暴れてみろよと思うファンもいるだろうし。古性の後ろみたいなちょっと違う形で行ってもいいんじゃないかと思うファンもいるだろうし。だから、今回のグランプリの並びが決まる時に“守澤太志”という人間の腹の中というものが見えるのかもしれないから、みなさん注目してくださいね。
松井 守澤が慎太郎以外の選択肢をとったら、ザワつくだろうね(笑)。今回の並びは守澤がカギを握ってますよ。
松本 古性はどうでしょう? 単騎でしょうけど、きっと。
前田 古性という男はブレないし、変なことも言わないから(笑)。
松本 ですね。関東は吉田拓矢の先頭が決まっていると思います。で…。
松井 どっちが番手を回るのか、平原-宿口なのか、宿口-平原なのか。
前田 私は一択で宿口-平原です。
松井 ただね、宿口が番手を回ることで、そこを古性、松浦、清水、郡司、もう全員が捌きに行く可能性が出てきてしまうからね(笑)。吉田拓矢の番手に勝機があるのかわからないんですけど(笑)。
松本 僕も宿口が番手で、平原が3番手だと思います。理由は、平原がそういう競輪をしてきているからです。平原が番手で、宿口が後ろっていうのが、平原の中にないのかなって気がしますね。
松井 そうだね。宿口は高松宮記念杯競輪獲ったあと、前を走るレースを意識しているからね。
前田 松井記者が平原に“勝つなら吉田拓矢の番手しかないよ”って耳元ですりこまない限り、その並びになるでしょうね(笑)。結局、宿口の平原への思いは、後ろにいたのでは果たせないですから。吉田拓矢と力を合わせながら、平原をアシストしたいんじゃないかな、宿口は。
松本 うん。関東はそうなりそうですね。だから、並びの注目は中国勢の前後と、守澤の選択、この二点が焦点ですね。
松本 ここ2年荒れてますけど、荒れるケースといったら、やっぱり吉田拓矢の後ろが狙われたときですかね。
松井 うん、別線の清水、松浦にしても、郡司にしても、徹底先行っていうタイプじゃないから、変な挑み方はしてこないと思うんだけど、吉田拓矢がちょっとでもペースを緩めちゃうと、そこに隙が生まれる怖さがありますね。
前田 波乱になる・ならないじゃなくて“古性がいるから”メチャクチャになる可能性はありますね。緩んでたら一気に仕掛ける可能性もあるし、古性は何をやってくるかわからないところがありますから。こんなに面白い選手はいないですよ。◎とか◯とかじゃなくて、“爆発”の“爆”の印をつけたいですよね(笑)。
松井 一番のスパイスだよね。
松本 あ、胡椒だけに?
松井 ペッパー優作? 砂糖(慎太郎)もいるぞ。
松本 一番のスパイスと一番のスイートですね(笑)。
松井 ここ絶対使ってくださいね(笑)。でも古性からすると今回のグランプリは誤算だよね。「ワッキーと乗りたい」「ワッキーを抜きたい」って、古性の中にはいつもワッキーという存在がいたから。グランプリに乗ったはいいけど、今度はワッキーがいないという。ワッキーがいないから、古性らしいレースになるかしれないね。
前田 我々の見たい古性が見られると思いますよ。だから波乱になるんですよ。
松井 だけど一方でさ、平原はGIのタイトルを獲るまで何回も決勝に乗ってから獲ったのに、宿口って一発でツモってるでしょ? そういうスター性みたいなものを宿口には感じるよね。だからグランプリも平原が11回挑んで獲れてないのに、宿口が一発で獲っちゃうみたいな結果はあるかもしれないよ(笑)。皮肉だけどね(笑)。
前田 人気は、平原-宿口、平原-古性、平原-松浦とかなんでしょうけど。
松本 吉田拓矢-宿口-平原で並ぶのならば、2車単の一番人気は平原-宿口なんでしょうかね。まとめて買いやすいでしょうし。
前田 でも、それで決まるような、そんな気はしないというね(笑)。
松井 そんな簡単じゃないよね(笑)。
松本 では、注目選手を挙げていきたいと思いますが、松井記者は…。
松井 もちろん平原康多。もう散々語りつくしてきました(笑)。
松本 ですよね(笑)。僕は、佐藤慎太郎選手に注目しています。今年優勝はゼロなんですけど、なのにこの位置にいるというところですね。安定感ですよね。
松井 慎太郎は流れに逆らわないところが長所だよね。郡司だったり、平原だったりについたり、その時その時でうまく乗っていて、“東北の慎太郎”というよりも“日本の慎太郎”みたいなね(笑)。トークも走りもいわゆる“千両役者”だからさ、いないと寂しい。
前田 新聞記者からしたら、必ずいて欲しい人ですよ。
松本 記者からしたら、困ったら佐藤慎太郎のところに行け、って(笑)。面白いこと言ってくれるし、ネタになることを言ってくれるし、“ガハハ”も流行らせましたし。
前田 私の“ビンビンだ”はいっさい流行らなかったです。
松本 慎太郎さんに使ってもらえば(笑)? でもほんと、郡司のうしろ回って、内を突くのもアリだと思うし、去年もなんだかんだで3着まで来てますし。
松井 外に行く選手多いから、内を突けるという武器はワンチャンあるよね。
松本 ここで優勝すればグランプリ最年長記録がかかってます。前回43歳で優勝した慎太郎さんは日数が足りなくて記録更新とならなかったのですけど(山口幸二さんの43歳5ヶ月に4ヶ月足りなかった)、デイリーでお付き合いもありますし(笑)。グランプリって勝ってほしい選手を買うって決めているので(笑)。
前田 私は守澤です。歴史上に残る追い込み選手になるべきだと思うんですよ。かつての井上茂徳さんのようにね。どっからでも飛んでくるような。井上さんはその鬼脚で結果を手にしてきた方なんですが、守澤ってその脚にふさわしい結果がどうにもついてきてないんですよ。失格・落車が多かったりもするんですけど、もっといい成績を残せる選手。慎太郎さんが行った後のタイミングでも、冬の静岡(長く重たい直線)なら間に合うと思うんですよ。その脚を魅せる瞬間、歴史上に残る追い込み選手になる瞬間を私は見たいんですよ。
松本 ほんとにね、“え? そっからくるの?”って、たまに魅せる鬼脚があるのが守澤太志なんですよね。
前田 グランプリを優勝したら守澤太志の名前が変わりますから。“攻澤”になります。
松井 守らないんだ(笑)。
松本 清水裕友はどうですか?
松井 清水は人間くさいんだよね。悔しきゃボヤくし、嬉しきゃ「どうでした? どうでした?」って聞いてくるし(笑)。
前田 心配性だし(笑)。
松井 コロナが流行しだした時も真っ先に寄付したりだとか行動力もあるよね。今年は吉田拓矢がグランプリに乗ったけど、それまでは清水ひとりだったんですよね、20代でグランプリ走っていたのは。30代、40代の猛者を相手に、3年経験してきているっていうのは、ほんとにすごいこと。“競輪選手”ですね。自分がどう動けばいいかを瞬時に体現できる。いい選手ですよね。
前田 令和が似合わない男ですね。戦後の男ですよ(笑)。
松本 郡司はどうですか?
松井 完成度が高い選手で、二世選手で血筋もよくて。深谷が南関に来たことによって、深谷知広-郡司浩平っていう目玉ができたしね。競輪祭の決勝なんて単騎でめちゃくちゃレース動かしてて、本人も悔いの無い走りをしたって言ってたし、あのレースのメンバーのなかで一番仕事をしたよね。
前田 人間としても面白いし、もちろん応援もしている。ただ郡司のために考案したGLAYのポーズが全く流行らなかった(笑)。
松井 ただ郡司がすべっただけで終わった(笑)。
松本 プレッシャーがかかるなかで地元のGIを勝つってすごいことなんですけど、ただやっぱり最初に勝っちゃうとどんどん印象が薄くなっちゃうんですかね…。郡司からしてみたら深谷と乗りたかったのかな〜というのはあったのかな。
松井 南関は郡司ひとりだけだし。一時期の平原状態になっちゃったのかもしれないね。古性がレースを良い意味でぐちゃぐちゃにしたときに、一発あるかどうかだけど。
松本 その展開ですと慎太郎、守澤かもしれないですしね。
松井 静岡競輪場って直線が長いし、冬だとバンクが重くて、風も強いから、追い込みがききやすいんですよ。
前田 (スタッフに向かって)静岡で30年記者やってる松井記者の言うとおりって、書いといてくださいね(笑)。
松井 グランプリはずっと平原を買ってるから11年はずしてきてるんだけどね(笑)。
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