アプリ限定 2025/09/09 (火) 18:00 17
12日から開幕する共同通信社杯競輪。同開催は予選が自動番組で行われることに特徴だが、今回は直近5年間の中で自動番組によって生まれた激闘・ドラマをいくつかピックアップして振り返っていく。(構成:netkeirin編集部)
初日番組の中で間違いなく最も注目が集まったのは7Rだろう。SS新山響平、日本代表の太田海也に松井宏佑・山田諒の同期連係と豪華メンバーが集結し「この中の誰かが初日で姿を消すのか…」と多くのファンは思ったはずだ。
注目の機動型対決は太田海也が500バンクでも果敢に先行。松井が中団に追い上げ岡崎智哉とバッティングして縺れたタイミングで新山が捲り迫るが、すでに太田は遥か前方。後続を誰も寄せ付けないまま太田が長走路宇都宮で圧巻の逃げ切り勝ちを収めた。
太田はレース後「500バンクも久々だったのもあって、ペースが少しギクシャクしましたね」と強敵を撃破した直後でも冷静にレースを振り返る姿が印象的だった。
まさかの初日敗退となった新山も負け戦では3戦連対としっかりとS班としての意地は見せた。
「これ、予選Bの方が楽なんじゃない?」ファンにそう思わせたであろう番組がこのレースだ。眞杉匠、深谷知広、脇本雄太、清水裕友のSS4人に加えて北井佑季、寺崎浩平、吉田拓矢まで揃いまさに"死のカード"といえるメンバー構成となった。
5枚の勝ち上がり切符を懸けた一戦、打鐘で北井佑季がカマシ先行を敢行すると脇本、眞杉、清水の3車が南関の後ろ3番手を取り合う展開となり、南関勢にとっては絶好の展開かと思われた。しかし4コーナーで外を回す眞杉に付いていかずにスルスルとインコースを通った吉田が北井の番手から抜け出す深谷を捉えてこの大激戦を制した。
そして注目の勝ち上がり争いは1着の吉田、主導権握った南関の深谷・北井に加えて外を回されても直線でしぶとく伸びた眞杉、実績下位でも地元・関東の意地で5着に滑り込んだ恩田淳平が紙一重の勝負を制して準決勝への切符を掴んだ。
敗れた清水、脇本も当然他の番組に入っていれば勝ち上がりは有力だっただろう。この巡り合わせこそが自動番組の面白さであり、怖さでもある。
清水裕友・犬伏湧也が結束し人気決着濃厚な番組構成となったが、それを許してたまるかと立ち上がったのが近畿の必殺仕事人・南修二だ。近畿中部の目標がいない南のコメントはなんと「犬伏君ジカ」、しかし清水も「一度、決めたし、誰かが競りに来てもコメントは変えません!」とキッパリ宣言し2人の競り勝負が決定。
オールラウンダーなS班清水と輪界屈指のヨコ強さを誇る南のマッチアップがどのような結末を迎えるのか、ファンのみならず関係者からも注目が集まった。
レースが始まり単騎の山賀雅仁が前を取り、犬伏は2番手の位置からレースを進めるが早速その後ろでは2人が激しくぶつかり合う。そして誰も前を切りに行かずスローペースのままレースは打鐘を迎えるが、ここで犬伏が一気のスパートをかける。
前で犬伏を待ち構えていた山賀も含めて3人が犬伏を追っていくが、誰一人としてピタリと追走できず、犬伏との距離はみるみるうちに広がりこのまま全員共倒れかと思われた。だがしかし抜け出した犬伏に清水が最終バック手前で追いつき、南もその後ろに続いて最終的には2人とも確定板入りを果たし勝ち上がりを決めた。
レース後発表された犬伏の上がりタイムはなんと10.9。競りで脚を使っても、この超快速カマシに追いつく2人の実力・執念は末恐ろしい…。ファンにそんな感想を抱かせるようなレースだった。
歴代の中でも自動番組が生み出した最大のサプライズ番組はこれと言っていいのではないだろうか。
兄弟連携の実現に感極まり前日から涙を流していた弟・辰弘は「こんな機会は最初で最後かもしれない。もう自力ではないけど、総力戦でアニキと決めたい。今の僕があるのは兄の背中を見てきたから」と言葉にし、兄・大輔は「うちは3人兄弟で姉がいる。みんな6歳ずつ離れているけど凄く仲が良い。辰弘に望む事? とにかく後悔しない走りをやって欲しい」と語った。
そしてレースでは辰弘が打鐘から果敢に先行勝負に打って出ると、最終バック手前で大輔は躊躇することなく番手捲りを敢行。山口拳矢・筒井敦史に捲られはしたが桑原大志との3着争いを制し見事勝ち上がりを決めた。
辰弘は「20代のどこかで兄と連係できていたとしても、こんなレースはできなかった」と振り返り、大輔は「2人でつかみ取った3着」と弟の頑張りを称えた。
今年の共同通信社杯ではいったいどんなドラマが生まれるのだろうか。
netkeirin取材スタッフ
Interview staff
netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。