アプリ限定 2025/08/10 (日) 18:00 12
今回のGIオールスター特別企画は、5月に電撃引退した平原康多氏が、ドリームレース出場選手を独自の視点で解説します。戦った者同士だからこそ分かる選手の人柄や特徴を、エピソードをまじえてド直球で語ってもらいます!【インタビュー・編集=松井律(日刊スポーツ)】
ーーいよいよGI戦線も佳境に入ってきました。ダービー(日本選手権)に次いでGIの中でも賞金が高額なオールスターは、ファンが出場選手を選べるというのが他の大会との大きな違いです。平原さんは優勝こそ叶いませんでしたが、ファン投票1位でのドリームレース選出はありましたね。
平原 ありがたいし、名誉なことですよね。
ーー今年のドリームメンバーでは、サマーナイトフェスティバルで落車をしてしまった古性優作選手と松浦悠士選手の状態が気がかりでした。ちょっと待って下さい。平原さんは11位でしたよね。もし、2人とも欠場していたら…
平原 ははは、ドリームを走れていましたね。
ーーそれでも古性優作選手は、何とか間に合わせたようです。やはりファン投票1位の責任感でしょうか。
平原 ファン投票で選んでもらった以上は、這ってでも出たいと思うのが選手の心情です。何があるか分からないのが競輪だし、出れば何かがあるかもしれない。でもその反面、選んでもらっておいて変な走りも出来ない。両方の感情が交錯すると思います。
ーー9位の松浦悠士選手は、肋骨骨折、肺挫傷という重傷でした。けがに強い選手ではありますが、さすがに欠場を余儀なくされました。
平原 松浦だって1日でも早く治して出ようとしていたはずだけど、直前の判断で無理と判断するしかなかった。無念だったでしょうね。
ーーメンバーが確定したということで出場選手の分析をお願いいたします。まずは古性選手の1位選出はいかがですか?
平原 お客さんのことを大事に考えられる選手なので、まったく文句なしです。レースセンスと勝利への嗅覚に長けている上に、ラインも大切にしている。競輪界の顔だし、1位は当然の結果です。
ーー対戦で何度も手痛い思いをしたんじゃないですか?
平原 ですね。古性はBMXが原型にあって、誰にも真似の出来ないハンドルさばきをする。常に僕の常識の上を行っていました。頭がいいし、人との付き合い方もうまい。どの角度から見ても強い選手だと思います。
ーー2位は平原さんがかわいがってきた眞杉匠選手です。
平原 先日、京王閣GIIIのイベントに行ったら、待ち伏せされていましたよ、ははは。いつも僕の話をよく聞いてくれる。だから、こちらもついついストレートに言いたいことを言ってしまいます。眞杉は先行でもまくりでも自在にも戦える万能型ですが、何が一番長けているかと言えば、負けん気の強さです。
ーーそれはレースにも表れていますよね。
平原 気持ちの強さが前面に出ていますよね。でも、僕は眞杉には先行選手としての期待が大きいんです。まだ脚力を上積みできる年齢だし、今後の彼の走りで関東のタイトルも増えるでしょう。もちろん眞杉自身もまだたくさん勝てると思いますよ。
ーー3位が新山響平選手でした。平原さんは過去のインタビューでも新山選手をたびたび絶賛していましたね。
平原 あんなにさらけ出して、誰よりも長くもがいて、あの正々堂々とした走りは、誰もが憧れますよ。その上、顔も性格もいい。非の打ちどころがないから、逆に腹が立ちますね、ははは。
ーー新山選手とは連係もありましたし、差してもいますよね。
平原 やっとの思いで抜いた感じですよ。とんでもないところからとんでもないペースで踏んでいく。あのエアロフォームは、後ろがすごく風を受けるんです。(佐藤)慎太郎さんがたまに付きバテしていますけど、こういうことかと気持ちがよく分かりました。
ーー4位が郡司浩平選手です。平原さんはこれまで意外と郡司選手の話題が少なかったかもしれません。
平原 一言で言えば、究極のオールラウンダーですね。レースの立ち回りが上手だし、スキがない。深谷(知広)が静岡に来て南関のレベルが上がりましたけど、郡司もそこで一段階上がったと思うし、深谷と相乗効果を生める選手ですね。性格もすごくいいヤツです。
ーー5位は親交の深い脇本雄太選手です。
平原 スピードと、そのスピードを持続する持久力が彼の武器ですけど、今でも頭1つ抜けていると思います。それがあるから器用な立ち回りが必要ありません。先行だって、まくりと同じようなタイムで駆けてしまうんだから、調子のいい時は、本当に手が付けられませんよ。
ーー脇本選手とは一緒に練習したり、情報交換なども活発でしたよね?
平原 僕が一方的に聞いていた感じです。ナショナルチームのトレーニング方法なんかも隠さずにいろいろと教えてくれたのは、自信の表れだったかもしれませんね。
ーー脇本選手も腰に爆弾を抱えていますが、自分の出力に体が耐えられないのですか?
平原 レースで100%の力を出すには、120%のトレーニングをしなければいけない。彼ぐらいになると、そのダメージの蓄積がかなりあると思います。
ーー続いて6位が犬伏湧也選手です。
平原 犬伏はインパクトのある走りをしますよね。非常にパンチ力のある選手です。ボクシングに例えたら、器用には立ち回れないけど、ワンパンで相手を倒してしまう、そんな選手ですね。
ーー7位は、連係実績もある深谷知広選手でした。
平原 ナショナルチームでの経験もあるのに、“漢字の競輪”をするから人気が高い。ラインを大切にするし、空気作りがうまい選手です。南関に移籍してからも、走りで見せながら周りも成長させました。郡司の成長や、岩本(俊介)のブレークなんかも、深谷の存在が大きかったと思います。
ーー深谷選手は他地区との連係も多いですよね。
平原 他地区であっても、連係するとなれば気持ちの入ったレースをしてくれる。だから、僕が付いた時も作戦会議では「やりたいようにやってくれればいい」で済んでしまいました。深谷は本当に思いやりのある人間ですね。
ーー8位は清水裕友選手です。かなり若い段階からグランプリにも出場していましたし、対戦も多かったのではないですか?
平原 そうですね。ヒロトは感情で走るタイプで、少し自分と似たものも感じます。気分屋で人間臭いから、イヤなものはイヤだし、好きなものは好き。裏表のない人間ですね。それがレースにも出ていて、出し惜しみをしないのが強みだと思います。
ーーボヤキにも人間味があって放っておけない選手ですよね。
平原 周りからかわいがられるし、彼の勝利を願ってくれる人間は多い。そう思われるのはすごいことだと思います。
ーー松浦選手の欠場で10位からドリームレースに繰り上がったのは、太田海也選手でした。
平原 世界と渡り合えるダッシュ力があるし、彼は身体能力のバケモノですよ。自転車の扱いに関してはまだまだ伸びしろがあるし、年齢的にもまだまだ強くなれると思います。
ーー今年グランプリに乗っても不思議ではないと?
平原 不思議どころか、乗ってもらいたい選手ですね。
ーー11位が平原さんで、12位には佐藤慎太郎選手がいました。
平原 慎太郎さんはおじさんだけど、競輪界のアイドルです、ははは。お客さんからの人気もすごいし、この業界の宣伝部長ですよね。何度も連係しましたし、慎太郎さんに付いてもらえると、いい競輪が出来ました。慎太郎さんにはいい印象しかありません。
ーーでは、ドリームレースの展開を予想してもらえますか?
平原 並びはワッキーに古性、深谷と郡司が連係。眞杉と新山は単騎で走ると思います。あとは中四国が並ぶかどうかですね。地区の関係が濃い太田とヒロトが並ぶとして、犬伏がどうするか。
ーー確かに太田選手と犬伏選手が前を走らないと持ち味が出せないので、犬伏選手は単騎でやるかもしれませんね。となると、レースを動かすのは?
平原 太田か深谷になりますよね。この2人が主導権を争って、ワッキーと単騎の3人がどの位置にいるかがカギになります。
ーー駆けそうな2人の後ろにいる清水選手と郡司選手のチャンスが大きいですか?
平原 南関が駆けた時は、その後ろに眞杉がいると思うので、堅いとは思わないですね。太田がドカンと行ってくれればヒロトはチャンスあります。ただ…
ーーただ、何でしょう?
平原 2年前の夏に函館でサマーナイトがあったじゃないですか。
ーー松浦悠士選手が脇本雄太選手の番手から優勝した大会でしたね。
平原 あの時のワッキーの強さが尋常じゃなかったんですよ。初日からインパクトのある勝ち方で、その残像がはっきりと残っているんです。
ーー脇本選手は腰に不安があると言っていますが…
平原 他の選手なら展開や位置も重要なんですけど、ワッキーに関しては、コンディションさえ合えば、前にいなくても勝てますからね。展開不問で怖いのがワッキーです。現時点で僕が狙うなら近畿からになりますね。
netkeirin取材スタッフ
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