2021/12/02 (木) 12:00 6
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は松山競輪「金亀杯争覇戦(GIII)」に出場する大森慶一選手を解説する。
⚫︎大森慶一
身長170cm、体重は70kg、そして40歳。データだけ聞くと一般人の平均並みな体格だ。しかしレーサー(自転車)に跨れば、北日本勢随一の直線の伸び、切れ味を持った追い込み選手に変貌する。とにかく見た目とのギャップが凄い。
大森選手の直線の伸びの秘密はどこにあるのか。追い込み選手なので、自力選手と比べると骨格的なハンデは少ないとはいえ、筋量的なアドバンテージもない。
筆者が推測するに、大森選手は神経の伝達能力がとにかく高く、全ての力がペダルにロス無く流れている。とにかく踵(かかと)の角度が良い。細かい技術的な事はまたの機会に話そうと思うが、僕の中での「ベストオブカカト」だ。
北日本勢と言えば佐藤慎太郎選手、守澤太志選手など、主役タイプの追い込み選手にフォーカスがあたりがちだ。ただ、佐々木雄一選手や大森慶一選手など、実に玄人好みの追い込み選手達に支えられている事も忘れてはならない。
余談だが、北海道在住の大森選手は、冬場になると癖の強い練習方法をする事でも有名だ。例えば、雪山をマウンテンバイクで爆走したりと、起伏の激しいコースで脚力とバランスを鍛えている。
降雪地帯という土地柄、レーサーに乗っての練習が制限されると言う事情もあるが、それを逆手に取った練習法を編み出している。時には野生のクマに出会い、命からがらに逃げ出したこともあるそうだ。SNSではユニークな練習の様子もあげておりプロ選手の鏡だ。そろそろ公式プロフィールの練習場所を「地球」と変えていいだろう。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
今年の注目は新田祐大選手だ。例年ならグランプリ出走のため、この時期に競輪を走る事は無かったが、今年は惜しくも決勝戦入りを逃した。
直前の競輪祭でも爆発的な強さを発揮していており、間違いなく4日間大本命を背負っての出走となる。メンバーが弱化されるここは絶対に負けられないだろう。
新田選手に対抗出来るラインは、展望の段階では見当たらない。強いて言えば、山田庸平選手の先捲くりに期待したい。新田選手を後方に置いて、先捲くりが打てれば、一矢報いる可能性も広がる。地元勢からは門田凌選手を挙げておく。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。