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山田裕仁のスゴいレース回顧

【立川GIII・決勝レース回顧】ピーク直後の“調子”が明暗を分けた

2021/01/08 (金) 18:00 9

アクシデントにも落ち着いて対応した平原康多(7番車)。調子の良さだけではなくレース中の判断も光った

2021年1月7日(木) 立川12R 鳳凰賞典レース(GIII・最終日)S級決勝

左から車番、選手名、期別、府県、年齢

①鈴木竜士(107期=東京・26歳)
②郡司浩平(99期=神奈川・30歳)
③清水裕友(105期=山口・26歳)
④桑原大志(80期=山口・44歳)
⑤鈴木庸之(92期=新潟・35歳)

⑥近藤保(95期=千葉・38歳)
⑦平原康多(87期=埼玉・38歳)
⑧坂本健太郎(86期=福岡・40歳)
⑨内藤秀久(89期=神奈川・38歳)

【並び】
←⑤⑦①(関東)②⑨⑥(南関東)⑧(単騎)③④(中国)

【結果】
1着 ⑦平原康多
2着 ④桑原大志
3着 ①鈴木竜士

 年始の“名物”でもある、立川競輪の開設69周年記念「鳳凰賞典レース(GIII)」。昨年のグランプリで戦ったばかりのS級S班3選手が登場と、なかなかの豪華メンバーでしたね。ここは、人気の中心となった平原康多(87期=埼玉・38歳)選手が見事に優勝。2着に、展開をついてインから伸びた桑原大志(80期=山口・44歳)選手。3着に、平原選手マークの鈴木竜士(107期=東京・26歳)選手という結果でした。

 とにかく目立っていたのが、平原選手の調子のよさ。初日の特選でも、打鐘から主導権を握って自力で先行し、他のラインを完全に封殺するという強いレースを見せていました。番手の鈴木竜士(107期=東京・26歳)選手に差されはしたものの、文句なしの内容。同じS級S班である郡司浩平(99期=神奈川・30歳)選手や清水裕友(105期=山口・26歳)よりも、かなりデキがいいという印象でした。

 結果的にS級S班の3選手は揃って決勝へと駒を進めたわけですが、初日からずっと好調モードの平原選手に対して、郡司選手は4日間を戦うなかで、少しずつ調子を上げていったイメージ。そして清水選手は、なんとか決勝まで進出したものの、初日からなかなかコンディションが上がらず苦心しているように感じましたね。実際に決勝のレース内容にも、調子のよさ・悪さがハッキリ出ていたと思います。

 決勝戦では、打鐘の手前でアクシデントが発生しました。関東ラインの先頭を走る鈴木庸之(92期=新潟・35歳)選手が、郡司選手との接触によって車体故障。残念ながら、早々と戦線を離脱してしまいます。この接触後、打鐘過ぎから仕掛けて主導権を握ったのは郡司選手。その3番手を回っていた近藤保(95期=千葉・38歳)選手を捌いて、清水選手がそのポジションを奪取します。

 そして、その後ろの5番手に平原選手。先導役をアクシデントで失いましたが、まったく慌てることなく気持ちを切り替えて、最終バックから清水選手に先んじて一気の捲りに出ます。平原選手マークの鈴木竜士(107期=東京・26歳)選手が踏み遅れるほどの素晴らしいスピードで前に迫ると、内藤秀久(89期=神奈川・38歳)選手のブロックも何のその。まさに“完勝”といえる内容で、今年の好スタートを決めてみせました。

 郡司選手の先行については、あくまで推測ですが、鈴木庸之選手との接触で腹をくくった可能性は高いでしょうね。審議になるのは確実で、自分はレース後に失格となる可能性もある。ならば、多少は無理をしてでも、後ろについてくれているラインの仲間が勝てるようなレースをーーと考えるのが、競輪選手というものです。

 とはいえ、みなし直線の長い立川バンクで先行して押し切るのは、そう簡単な話ではありません。基本的には捲る選手に有利で、郡司選手もこの強豪が相手となると、本当は捲る競輪がしたかったでしょう。とはいえ、レースは“生き物”なので、想定外のアクシデントも起きる。そこでは、瞬時にどう判断してどう動くかが問われてきます。

 そういう意味でも、勝った平原選手の判断や立ち回りは素晴らしかった。前を走る清水選手が先捲りに出る前に一気の捲りを打って、清水選手のやりたいレースをさせなかったというのは大きいですよ。清水選手も外に切り替えて追いすがりましたが、まったく差を詰められず7着に敗退。三連覇が期待されたレースでしたが、「調子」という面で平原選手とは最後まで大きな差があったといえます。

 今年の立川記念は「グランプリから中3日で前検」という、非常にタイトな日程で開催されています。それだけに、心身ともにあまり緩まないままでレースを迎えているーーとは思うのですが、それがいい方向に出る選手もいれば、そうではない選手もいる。グランプリに出る選手というのは、当然ながら自分の調子が、グランプリでピークを迎えるように調整していますからね。

 ピークの直後というのは、ガクッと調子が落ちることがある。この時期だと、精神的に張り詰めていたものが、年末年始のアレコレで一気に緩むというのもあります。そういった、ピークの直後における「調子」の差が如実に出たのが、このシリーズだったように感じました。そして、ピークに近い状態をいちばん維持できていた平原選手が、その実力どおりの結果を出したーーというのが、総括となるでしょう。

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山田裕仁のスゴいレース回顧

山田裕仁

Yamada Yuji

岐阜県大垣市出身。日本競輪学校第61期卒。KEIRINグランプリ97年、2002年、2003年を制覇するなど、競輪界を代表する選手として圧倒的な存在感を示す。2002年には年間獲得賞金額2憶4434万8500円を記録し、最高記録を達成。2018年に三谷竜生選手に破られるまで、長らく最高記録を保持した。年間賞金王2回、通算成績2110戦612勝。馬主としても有名で、元騎手の安藤勝己氏とは中学校の先輩・後輩の間柄。

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