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前田睦生の感情移入

【選手の判断】命を懸けた一瞬…競輪というスポーツの難易度と危険性

2025/06/20 (金) 12:00 6

いつも平然と振り返る小倉竜二

小倉竜二のすさまじさ

 競輪はもちろん自転車競技であり、スポーツのひとつの種目だ。その奥深さ、コク、ストーリー性などが公営競技として成立し、また愛されている。

 岸和田競輪場で開催されている「第76回高松宮記念杯競輪(GI)」の3日目、8Rの小倉竜二(49歳・徳島=77期)の走りもまたすごかった。清水裕友(30歳・山口=105期)に離れていた、という点はあっても最終バック最後方から、戦場の真ん中を突き抜けての1着はすさまじかった。

 今や、競輪のレースについて、また選手に対し、競輪場だけでモノを言う時代ではなくなった。特にネットを通して、ある意味で何でも言える環境がある。

 こうやって走れよ、なんでああしないんだ、これしかないだろ…。岡目八目(傍目八目)という言葉あるように、外から客観的に見ていると「なんでこうしないのか」と見えることがある。しかし、“実際”をある程度認識しておくことは必要なことだ。競輪という競技は、簡単なものではない。

スピードの極致での判断

競輪という種目は難易度が高い

 レースでは70kmを超えるところまでスピードが上がり、その時選手たちは肉体を全力で稼働させ、時には周りの状況などまるで把握できないくらいになっている。番手を回った選手が仕事をできなかった時に、罵詈雑言を浴びるケースがある。

 確かに、番手を回った以上、仕事をするのが役目。叩かれて仕方ない面もある。だが、先行した選手が強過ぎて、付いているだけで苦しいケースもある。酸素欠乏が進み「先行選手のお尻の穴くらいしか視界がなかった」という振り返りコメントは何度も聞いた。

 何を言いたいかというと、「こうしろよ!」と書くことも感情的には仕方ないが、なぜそうなってしまっているのか…を考えることもファンにとって必要だということだ。繰り返し書く。

 競輪という競技は、恐ろしく難しいものである。エクストラハード。

ファンの在り方も多種多様

熱いファンは大事

 新しいファンが増えている今、ファンの在り方も多様であっていい。誹謗中傷ははっきりりとダメだが、一時の感情をぶつけるのは仕方ないと思う。「その上で」が多くのファンに広まってほしいと思っている。

 こうこう、こういう状況だから、ああなってしまったんだよね。いい走り、に関しては率直に多くの人が受け入れられると思うが、ダメな走りについても、一度怒った上で「こうだった」まで受け入れてほしい。それが次の時の車券戦術につながると思うし。

 例えば原付に乗っていて60km近いスピードで、目の前に8人密集していた時…。常に最善で安全な選択をできるかは恐ろしいところがある。オグリュウがすごすぎるのだ。一瞬、前がばらけたといっても、入っていけるかどうかは、また別の話だ。オグリュウの勇気と経験がなければ、あのレースは成立しない。

しかし、選手にも求められる

競輪は、もう一歩先へ

 ネットでは匿名性が助長して、もあるだろう。行き過ぎた言葉や表現で選手を罵ってよい、という風潮を認めるつもりはない。節度は絶対に必要だ。ただ、そうしたい気持ちは分かる。『野次を飛ばす』という行為について、もう一つファンが奥深く競輪を知ってから…にこれからの時代は行き着いてほしい。

 高松宮記念杯は前半を終え、ガールズケイリンのパールカップは3日間の開催を終えた。落車や事故が多かった。選手はみな、落車でいいことは何一つないことは周知の事実。そして、車券を買っているファンへの影響も知っている。

 落車や事故が多かったことを、選手たちが「こういう状況で、そうだったから、起こりやすかった」を把握して、次につなげてほしいと思う。避けられないものはあるわけだが、起こらないようにする、そのためにこうしている、をファンに伝えて、「競輪は楽しむもの」という原点に立ち返られればと願う。


X(旧 Twitter)でも競輪のこぼれ話をツイート中
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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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