アプリ限定 2025/11/03 (月) 18:00 29
前橋競輪場で開催された「第34回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」の3日目(25日)に、脇本雄太(36歳・福井=94期)がアップ中のローラーで転倒して左ひじ脱臼骨折、準決を急きょ欠場することになってしまった。
レース自体は行われたものの、やはり大きな影響があったことは否めない。プロが乗っているとはいえ、世の中すべてにしてもそうだが、どうしても事故は起こってしまうものだ。だからこそ、リスクを小さくすること、改善していくことが重要になる。
今回、脇本が乗っていたローラーは手すりのないところだったようで、手すりがあれば…、という話が上がった。浅井康太(41歳・三重=90期)が「どうしても事故は起こるんです。どんなにすごいFIドライバーでもコースアウトとかあるでしょう」と眉間にしわを寄せる。
浅井は過去、京王閣競輪場の開催で同じようにアップ中にローラーで転倒したことがあり、その時は「鼻の下を切って出血したんですが、手すりがあって軽減されたのでレースは走れました」と1着でゴールしたもの。また「レース直後に治療してもらえるなど、対応してもらってありがたかったです」と振り返る。こんな経験もあり、自身のコラムで改善を訴えていた。
ローラーはアップやクールダウンで非常に重要なものとなっている。場所を取るので、なかなか参加選手すべてにいきわたるわけにはいかないが、今こそ準備を…と思う。売り上げが好調で、施設整備も進んでいる中、選手たちがよりよいパフォーマンスを発揮できるように台数の確保も求められる。
現在でもローラーの確保に気を使うケースが多い。同地区の選手などに、「このレースの後に乗れるように」と予約しておかないとローラーに乗れないこともある。選手も千差万別、ちょっとだけ乗ればいい選手もいれば、2時間、3時間と乗って感触を確かめたい選手もいる。
理想を言えば、参加選手の人数分が確保されること、になるが、現状はできる限り…になる。しっかりとした準備やケアをできる環境にしていくことが、競輪選手を守り、また熱いレースにつながっていく。
浅井は不安げに話した。「脇本君のケガは本当に心配だし、こうしたことがこれから絶対に起こらないとは言い切れないんですよ。ボクなんかはもう終わっていくだけだけど、これからの若い選手たちのためにも、自分らが言っていかないと」。責任のある立場だからこそ、声を上げているのだ。
もちろん開催運営側としても、諸問題が起きた時にはすぐに対処法を検討する態勢になっている。特に近年の競輪界は動きも早い。一丸となって、全体が前に進めるようにというムードもある。
なんとか脇本がまた元気に、バンクで躍動してくれる時を願い、これからの選手たちがいい環境でレースに臨めるようになっていけば。競輪は現在、バブル的な盛り上がりと言われることもあるが、確かな盛り上がりの下支えになると思う。“これから”のためにだ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。