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前田睦生の感情移入

【高松宮記念杯・パールカップ】熱中症に気をつけてーーそれでも熱は上がる“しょうこうねつ”

2025/06/16 (月) 12:00 17

扇風機に当たる郡司浩平もカッコいい

しょうこうねつ

 「しょうこうねつ」という言葉がある。中国に蕭紅(しょう こう)という女性作家がいて、31年の人生だったわけだが、1930年代に作品を書いていた。代表作や内容は忘れてしまった。日本の中国文学ファンの中には、この蕭紅の作品に熱を上げる人たちがいて「蕭紅熱」と呼ばれていた。

 “猩紅熱”にかけたものだが、人間は様々な折に熱を上げる。「競輪熱」は盛り上がっているといっていい今だ。岸和田競輪場で6月17〜22日に「第76回高松宮記念杯(GI)」が、17〜19日にガールズケイリンの「第3回パールカップ(GI)」が開催される。

 2月豊橋の全日本選抜競輪、5月名古屋の日本選手権競輪を取材する中で、GIシリーズの盛り上がりを強く感じている。ファンは熱狂的に選手たちのドラマにのめり込み、それぞれの応援する選手を追いかけ、車券投票も通じて自己を投影している。自分を確かめている。

 小説の登場人物に自己投影するように、というのが競輪のいいところであり、日本人性だと感じてきたわけで、それが確かなものとして目の前にある。うれしいことだ。

日本は変わってきた

主役はもちろん古性優作

 しかし、日本は変わってきた。特に気候。大雨もしばらく前のものとは変わり、災害レベルのものが増えた。また、暑さにしても。熱中症は花粉症と同じく国民病となった。今回のシリーズ中は気温が上がる予報なので、とにかく体調管理にはすべての方に気をつけていただきたい。

 国が熱中症対策を行っての仕事を…と提起するほどになった時代だ。競輪に熱中しながらも、気をつけてほしい。なんといっても選手たちの走り、戦いはすさまじい。地元の古性優作(34歳・大阪=100期)の昨年の決勝レースを見返してほしい。落車という結果なのだが、すべてをかけて突っ込む姿は、心が震えたものだ。

 今年も高松宮記念杯競輪の主役は古性。昨年の分を取り返す走りを、目に焼き付けてほしい。そうだ!思い出すものがある。2023年大会では、一次予選の1走目に落車したが、2走目でのポイントでの復活があると信じ、再乗して8着。痛む体を押して、2走目からは4連勝で優勝をもぎ取った。

 う〜ん、熱中せずにはいられない…。

復活をかけて

石井貴子の昨年の優勝は感動しかなかった

 昨年のパールカップは石井貴子(35歳・千葉=106期)が復活の優勝を果たした。大ケガで選手生命どころか…と言われた時期もあったほど。それを乗り越えて優勝には、感動しかなかった。

 静かにその時間の中にいたおたかさんは荘厳だった。優勝した選手は大きく見えるものだが、おたかさんは小さかった。小さく咲いていた。苦しみを耐え抜いた、折れない一輪の花だった。その優勝のすぐあと、「次はユウカさんですよ!」と声をかけた。

 小林優香(31歳・福岡=106期)。何度も何度もケガをして、手術も繰り返して、ガールズケイリンの初期を牽引したが、今は苦しんでいる。近況もまだまだあの破壊力は戻っていないが、GIの舞台でその血は湧きあがることだろう。蜂に刺されたのかと思うような張り上がった巨大な太ももは永遠の武器。「自転車に乗ると魔法のほうきに乗っているよう」と話していたあのころの姿を、もう一度見たい。

「次は」と声をかけたら笑って握りこぶしを作った


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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