2021/08/24 (火) 12:00 2
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は松戸競輪場で開催されている燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯の決勝レース展望です。
決勝進出をかけた準決勝戦でしたが、どのレースも好勝負が繰り広げられていました。特に11レースは突っ張り先行をした中川選手と、4番手から上がっていった新田選手がもがき合い、そこに後方から根田選手が捲り上げていくという、非常に見ごたえのあるレースとなりました。
それでも他の自力型に抜かせなかったどころか、番手の選手にも交わされることなく、1着でゴールしてみせたのが中川選手です。初日は2周半ほど先行を見せていますし、2日目は野口選手の先行を、ホームからかまして勝利。そしてこの準決勝の強い勝ち方。3日間を通して非常に状態がいいと思いますが、そこに新田選手との新旧ナショナルチーム対決となったことで、更にアドレナリンが出たのではないのでしょうか。
決勝の並びですが、中川選手の後ろには、準決勝と同様に荒井選手で九州ラインを形成。準決勝でラインでの上位独占を決めた中四国ラインは、その時と同じく松浦選手-岩津選手-藤岡選手の並びとなります。吉田選手の後ろは佐々木選手、渡邉選手の後ろに山口選手が付ける細切れ戦となりました。
スタートを取りに行くのは車番的に吉田選手か松浦選手だと思いますが、準決勝でも前受けをしていた吉田選手になるのではと見ています。そうなると、3番手には松浦選手、6番手が中川選手となり、後方にいる渡邉選手が抑えに行く形となりそうです。
今大会で中川選手と同じように調子が良く見えるのが渡邉選手です。ただ、後方からポジションを上げていくにしても、先行は無いと思いますし、そうなると準決勝と同じように中川選手が自分のタイミングで仕掛けていくのかもしれません。
中川選手が先行体制に入った時に、松浦選手が叩いていくのか、もしくは他の選択をするのかも含めて、どう対処していくかも注目です。この決勝は唯一のS級S班となっただけに、勝利という結果を出さなければという思いも強いと思いますが、中川選手の調子が良すぎるだけに、そのまま駆けてしまったのなら、いくら松浦選手でも捲りきるのは大変かもしれません。
ただ、中川選手は縦の動きは抜群なのですが、横の動きはそうでもないだけに、そこに他の先行選手が追い上げていく作戦もあります。そうなると、渡邉選手もポジション次第ではチャンスが出てきますし、勿論、松浦選手も、ごちゃついたのを見て一気に仕掛けていけたのならば、岩津選手とのワンツーフィニッシュも考えられます。
車券的に面白いのは、松浦選手-中川選手-渡邉選手の自力型3車のボックスです。買い目的には絞り辛いなという気持ちもあるのですが、どんな展開でも力を発揮してくれるだけでなく、松戸バンクは走りやすいと話していた松浦選手を本命にしながらも、レースは中川選手の走りに注目したいと思います。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。