2021/08/15 (日) 15:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回はいわき平競輪場で開催されているオールスター競輪の決勝レース展望です。
決勝のメンバーにはS級S班が5人。その中には新田選手、脇本選手とオリンピック組も勝ち進んできました。
中0日での参戦となったオリンピック組は、徐々に状態を上げてきた印象を受けます。初日のドリームレースでは9着となった脇本選手も、準決勝では離された7番手から一気に突き抜けていったように、競技用のカーボン制のフレームから、競輪用のスチール製のフレームの感覚を取り戻してきています。
雨走路で予想も難しいレースとなっていますが、それでもタイムは出ているようにバンク状態は軽く、上がりタイムのいい選手が上位に来ています。しかも、いわき平バンクは400バンクの中でも3番目に直線が長いので、スピード能力の高い選手が直線で突っ込んできた結果、ラインではなく、筋違いで決まることもよく見られます。
決勝の並びですが、北日本が4車で並びました。先頭が新田選手で、その後が佐藤選手-守澤選手-成田選手。脇本選手の後には近畿ラインで古性選手。そして平原選手、中川選手、深谷選手は単騎となっています。
車番的にもスタートを取りに行くのは新田選手でしょう。先行するのも4車の北日本ラインのように見受けられますが、今大会で一度も先行をしていない脇本選手が、古性選手を引きつれて、一気に発進していくのではないかと思います。
脇本選手の後ろを回る古性選手ですが、今大会は調子の良さが目立っており、準決勝でも見事な捌きで、先行した北日本ラインの3番手を取っていました。脚力もあるだけに、脇本選手に付いて行ければ初のビックタイトルも見えてきそうです。
いったん下げてからの発進となりそうな北日本ラインですが、その際、勝負の鍵を握っているのは単騎の選手たちとなります。その仕掛け次第では、新田選手が早めに動き出すことも考えられます。
単騎の選手はいずれもスピードがありますし、新田選手や脇本選手にとっても侮れない存在かと思いますが、その中でも注目しているのが中川選手です。
中川選手は深谷選手の後ろを回るという選択肢もあったようですが、人の後ろを回るよりも、新田選手や脇本選手、そして深谷選手とも戦いたいとコメントしていました。この辺は元ナショナルチームとしての意地もあったのでしょうが、今大会の中川選手はタイムも出ているので、長い直線を生かした走りができれば、上位に食い込むことも可能だと思います。
この決勝は現在の日本競輪界における、トップ9名が揃ったレースとなりました。その中でもオリンピックに出場していた新田選手と脇本選手の走りには頭が下がります。展開次第では二人の先行争いも見られるかもしれませんし、ハイレベルなレースが期待できそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。