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【KEIRINグランプリ2024】“南関の絆”を胸に北井佑季が頂上決戦へ「一年の最後に悔しい思いをぶつけられたら」/独占インタビュー

アプリ限定 2024/12/26 (木) 18:00 34

元Jリーガーの自転車未経験の男は、デビューから3年でGI優勝を成し遂げた。その名は北井佑季。養成所時代から先行のスタイルで売り出し、名実ともに「先行日本一」との呼び声が高いトップレーサーだ。初出場のグランプリを前に今年をふり返り、何を思うのか。また、思うように勝てなくなった後半戦の要因を分析し、来年への意気込みを語った。時折、垣間見えるユニークさ、誠実さ溢れるインタビューをお届けする。(取材・文=アオケイ・八角あすか)

自転車未経験の元Jリーガー・北井佑季、デビューから3年でGI優勝を成し遂げた(撮影:北山宏一)

ーー今年をふり返って、どんな1年でしたか?

北井 競輪人生が長くない中でも1年という単位で見れば、すごく良い思いができた部分と今までにない悔しかった部分が大きかった1年。嬉しさ、悔しさを数字で表すと? うーん、100ー100。いや、おかしい表現だな(笑)。

ーー具体的に言うと?

北井 高松宮記念杯を優勝して競輪選手になって1つの目標を達成できたという嬉しさと、思い通りにいかないことが多々あったという悔しさですかね。

ーーGI優勝後の戦いぶりは、ご自身どう見ていますか?

北井 脚力が落ちたとかはないと思うし、戦いぶりも変わっていない。変わってないからこそ、勝てていないんじゃないかなと。周りは色々と考えたり成長していく中で、自分の脚力は上がっていないのかもしれない。今の自分の先行という戦い方を変えていかないのであれば、常に脚力をどんどん上げていかないと押し切れない。もっと底力がないと勝てないと思っているので、そういうのが足りないから勝ちが少なくなったと思います。

ーーヨコも結構できますよね。

北井 カマされないのがベストだけど、カマされちゃうのであれば単騎はカマシにこないだろうし、ラインがある選手がカマシに来て出られたとしても、踏みながら番手のところにいく練習はしています。だけど、それありきの走りをしてしまうと、出させてもいい前提の走りになってしまう。それは好きじゃないし、出られてしまったときの最終手段ですね。

ーーデビュー3年でのタイトル獲得は早いと感じますか?

北井 早いとは思っていないし、遅いとも思っていない。獲れるべきタイミングで獲れたのかなと思っていて。「『デビュー後の3年間で自分が競輪界のどの位置にいられるか』というのが、長い目で見たら決まってくるから頑張れ」と師匠(高木隆弘)には言われていました。

ーー高松宮記念杯の表彰式では“涙”。どんな思いがあったのでしょう?

北井 GIを獲ることを目標にしてやってきたし、自分でこういう風になりたいとか、こういう走りをしたいとか、高いモチベーションや達成したい目標があるから日々頑張れるわけで。競輪って練習は厳しいし、キツいものだけど、誰よりも苦しい思いをしてきた。そう自分でも思えたし、そこまでの道のりを思い返してみたら、すごく苦しい思いをして良かったなと。

初めてのタイトル獲得に男泣き「苦しい思いをしてきて良かった」(写真提供:チャリ・ロト)

ーー優勝してから変化ってありましたか?

北井 自分は変わらないけど、周りからの見られ方ですね。自分が思っている以上に上に見られるというか。分かりやすく数字で表すと、脚力が100だとしたら、周りからは120とか150ぐらいだと思われている感じがします。

ーーご自身で変わったことは?

北井 大垣記念(12月)の2次予選、小畑勝広さんに捲り追い込みで先着を許し、自分の番手の不破将登さんにも差されて5着に沈んで。翌日のスポーツ新聞に、その2人がジョークで「グランプリレーサーを抜けたのだから、(グランプリ優勝賞金の)1億3,000万を獲得したのと同じだ」とレース後に談笑していたっていう記事を見て。気にしなければ良いけど、そういう風に見られるってことは、やっぱり負けちゃいけないんだなと思う感情がでてきた。なんか複雑でしたね。

ーーお世話になっている滝澤正光所長から金言は授かりました?

北井 「負けられない立場だとか言われるかもしれないけど、そもそも負けられない立場って誰が決めたの?」って。「タイトルを獲ろうがS班になろうが、グランプリに出ようが、所詮、俺から言わせたら『3年しかやっていないヒヨコみたいなもの』。自分が迎え撃つ立場っていう風に思い始めると、上手くいかなくなる。常に自分が挑戦していくという思いがないと精神的に嫌になるし、先行選手なら尚更、自在と捲りにと戦法も変わっていってしまう。自分がそういう走り(先行)でやりたいと決めているのなら、そういう風に思い続けないと、やっていけないよ」と。全くその通りだなって。

ーー北井選手に「ヒヨコみたいなもの」と言えるのは滝澤さんぐらいですね。

北井 「俺から言わせたら、そんな先行して行かれちゃったからって、お前に失うものなんてない。誰に行かれようと、行かれたお前が弱いだけ。練習すれば良いだけ」みたいに言われましたね。確かに、そう思わないと練習も何のためにしているか分からないですから。

ーーオールスターではファン投票9位、ドリームレースに選出されました。

北井 ファン投票は、その人の走りを見たいっていう気持ちの表れだと思うんです。自分の走りを見ていてくれた人が、それだけ多かったからこそ投票してもらえたと思うし、ありがたいことだなと。SSだからとかはファン投票に関係ないにしても、自分以外の8人はSSだった中で1人だけドリームレースを走れたのは嬉しかったです。

オールスターではファン投票9位!唯一“黒地に赤ライン”でドリームレースに参戦(写真提供:チャリ・ロト)

ーー南関勢の勢いが目立った1年でした。仲間たちとの信頼関係に変化は感じますか?

北井 信頼関係が厚くなってきたとは思います。

 自分、郡司浩平さん、松井宏佑さん、和田真久留さんという並びだとしたら、脚力はみんなほとんど変わらない中で、バチコーンと古性優作さんみたいな選手に捌かれない限りは、明らかに番手と3番手は風を受けないから楽なわけです。

 だから、番手の選手は先行選手が自分と同じ脚力なら、番手捲りに行こうと思えば簡単に行けるし、切り替えることもできる。だけど、「この人が前なら、それはできないな」という思いが後ろの選手には出てくる。今まで自分は郡司さんにはいつでも行ってもらっても良いと思っていたし、今でも自分がダメならと踏んでくれと思っています。

 でも、そういう思いで自分も松井さんも前を走ることが基本的に多いから、やっぱり後ろの選手は「何とかしてでも」という思いがあって簡単には行けない。前の選手が番手の選手の思いを感じ取り、逆に俺らも「何としてでも」って思いで前を走る。まさにそれを感じられたのが宮杯の決勝で、郡司さんの「何としてでも」という思いを感じたし、準決勝の松井さんの走りもそう。お互い、みんなが同じ熱量を持って走れていると感じるし、特に今年は信頼関係が厚みを増したと思います。

ーーそれが今の南関勢の大きな強みですね。ちなみに、年下の選手に「さん」付けは変わらず?(笑)

北井 今が一番ダメなタイミングでしょ!(笑)。「郡司〜、松井〜」とか言っちゃ。S班になるからって調子乗ってるだろ!って。

ーー当分、変わる予定は?

北井 「いいよ。やめてください」ってみんなに言われるけど、急にはできないので。まぁ、自分らしくて良いと思います(笑)。

ーーさて、今年のベストレースを挙げるとすれば?

北井 宮杯の決勝は目標達成という意味ではベストレースだとは思うけど、自分の求める走りができたベストレースは松山記念(3月)の初日特選(2着)。番手が深谷知広さん、3番手に和田健太郎さんがいて。まず、ジャンで斬りにきた嘉永泰斗さんを突っ張って、新山響平さんのカマシに併せて、古性さんの捲りを併せて。深谷さんも仕事をしてくれてワンツーできて、先行選手としてはベストな走りができたかなと。

北井佑季的ベストレースは、松山記念(3月)の初日特選12R(撮影:北山宏一)

ーー2024年の「喜怒哀楽」を教えてください。

北井 「喜び」はタイトルを獲れたこと。「怒り」は…。怒ることもないし怒りっていう感情がないですね。「哀しい」もないかな。「楽しい」は毎日競輪ができて楽しい。モチベーションを持って目標に向かって、キツくて苦しい練習が楽しいです(笑)

ーー来年からはS級S班となりますが、SSってどんなイメージですか?

北井 競輪界を代表する9人。みんな競輪に対しての情熱がある9人だなと話していても思いますね。

ーー身近なSSとして影響を受けたのは?

北井 師匠の高木さんはもちろん、滝澤さん、あとは村上義弘さんですかね。

ーー来年、どんな1年にしたいですか?

北井 見て分かるようにレーパンの色も変わるし、レースを見てもS班が走っていると注目される中で「自分に対しての挑戦の年」ですね。誰かに勝つとかではなく、先行というスタイルは自分に打ち勝たなきゃ成し遂げられない走り方なので。

ーー強さの定義ってありますか?

北井 まさに自分に打ち勝てる選手。スポーツに限らず、どんな世界においても、それができる人間は強いと思っています。

ーーここからは○・×でお答えください。サッカー選手時代はFWということで、競輪と通ずるものってありますか?

北井 ○。その競技の花形というか。自分の走りに華があるとかではなくて、サッカーで言えば得点を取る選手がいないと試合は動かないし、競輪も先行選手がいないとレースは作られない。そういう点では通ずるものがありますね。

ーーこの選手、やばいなって思ったことはありますか?

北井 ○、○、○! やばい人しかいないでしょう、普通の人を探す方が難しい(笑)。自分は結構普通だと思っていたんですけど…。

ーーけど? いや、それは勘違いだと思います(笑)。

北井 そうやって、みんなにも思われているのかなぁと(苦笑)。

ーー他の公営競技は見ますか?

北井 ×。スポーツも見ないし、競輪だけですね。

ーータイトル獲得のご褒美は買いましたか?

北井 ×。買う予定もないです。

ーー食事で気をつけていることはありますか?

北井 ○。限界まで食べられるか。

ーーん?それはカロリー的なものですか?

北井 カロリーは気にしていない。限界まで食べられるか、量ですね、食べないと減ってしまうので。それなりにお腹いっぱいで終わらせちゃうと、体重が減っていってしまう。「本当にもう食べられないのか?」と自分に問いかけている(笑)。まだ食べられる、まだ食べられると思って食べないと減っちゃうんです。

ーー力士か何かでしょうか?

北井 あっはははは(爆笑)

食べないと体重が減ってしまう北井佑季「本当にもう食べられないのか?と自問してる(笑)」(撮影:北山宏一)

ーー最近、限界まで食べ過ぎてやばいと感じたことは?

北井 いや〜、ないかな。ってことは限界じゃないってこと…?

ーーあー、それは答えが出ましたね(笑)

北井 甘かったってことか(笑)。だから後半戦、ああいう風に勝てなかったんだ。そういうところですね。

ーーもし、師匠の高木さんと同じ時代に走るとしたら、勝てそうですか?

北井 ×! 勝てないでしょう!

ーー相変わらず高木さんの指導は厳しいですか?

北井 ○。タイトルを獲ったあとの方が厳しいですね。

ーーそれでは、最後に初出場のグランプリへ意気込みで締めましょうか。

北井 前半戦は高松宮記念杯を獲って、今年の目標の1つを達成することができたけど、後半戦はすごく悔しいレースが続いて。その悔しい思いを、一年の最後にグランプリにぶつけられたら良いなと思います。応援してください。

2024年後半戦は本調子と行かず…悔しさバネに初出場のグランプリへ臨む!(撮影:北山宏一)

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